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第十話


 

 俺達はその後、それなりに仲良く会話をしながら港町へと向かっていった。もちろん所々でバサシがうるさかったので、何度も説教をしたがその度に高速土下座を繰り返すので途中から面倒になり頭をしばくだけにしている。



 トウマ君は最初の印象の通り本当に好青年だった。流石に主人公なだけあり、困っている人がいれば助けその後のアフターフォローも完璧にこなし見ていて清々しい気分になったものだ。


 ただ、少し優しいすぎるきらいがあるのでそこだけちょっと心配。



 そして、道中にトウマ君の加護の多さも教えてもらった。もちろん事前の調査で知っていたが大袈裟に驚いておいた。ちなみに、イーフは魔法神の加護が一つある設定にしている。 



 そんな感じにバサシを除くメンバーは徐々に仲良くなりつつ港町へと着いた。



「あーやっと着いたねー」



「トウマがあれほど人助けをしなかったら、あと三日は早くついていたはずですけどね」



「あはは」



「でもそれがトウマのいい所でしょ?」



「もちろんわかっていますよ」



 トウマ君たちはいつものやりとりを終え、さっそく船へ向かった。


 トウマ君は王様直々の依頼で魔王討伐へ向かっている為、その船も用意されているらしい。だが、船に着くと船長らしき人物は渡航を拒否した。



「どういうことですか? 私達は王自らの依頼で魔王討伐へ行くのですよ? その為の船を出さないと言うならば斬首されても文句は言えませんよ?」


 

 ガーボ君は若干キレ気味で問い詰めるが、船長は毅然とした態度で拒否し事情を説明した。



「こちらとしても、魔王討伐の一助になるという名誉ある仕事を授かって大変うれしく思っていますが、今の悪天候ではとてもじゃないですが船は出せません! 原因はわかりませんがこの未曾有の悪天候はもう一月も続いているのです」


「私は乗組員の命を預かっていますので、王命といえどこの悪天候が続く限り出航は無理です! 王様へは既にこの状況をお伝えする手紙を出していたのですが入れ違いになってしまったのですね」



「それは分かるが、トウマの力があれば風が吹こうが、大雨になろうが沈まずに行けるから大丈夫です!」



「もちろんトウマ様のお力は物凄いものだとお噂で聞いていますし、王様から直接依頼が出ていますので実力を疑う気は一切ございません。しかし、いくらトウマ様と言えども天候ばかりはどうしようもないでしょう?」



「それはそうかもしれませんが、どんな強風だろうとトウマの力があれば沈むことはなく航海はできます! 万が一海に落ちるような事があっても私達の力があれば間違いなく助けられます! いつ収まるかわからない天候を待つのは無理です!」 



 と、さっきからこの調子だ。トウマ君の力があれば絶対に安全だとわかっているガーボ君と、トウマ君の力が凄いのは噂で知っているが流石に海の上では無理だろうと思っている船長の話し合いは平行線のまま三十分は経っている。


 お互い言っていることはわかるが、このままだと面倒だなと感じ始めた頃トウマ君の力が強まったのを感じた。



「はい……はい……お願いします……次はもう少し……」



 と呟くと、辺りが強い光に包まれそれまで荒れ狂っていた海は穏やかになり。遠くの海で鳴っていた雷は止み風は魔大陸の方へと吹き始めていた。


 

 これには、ガーボ君も驚いていたがそれ以上に船長は魂が抜けかけているのではないか? と思えるほど驚愕していた。



「……トウマ、なんとく理解できたが今何をした?」



「えっと、海が荒れて船が出せないなら静まってもらおうと海神様とか天空神様とかに話したんです。なんか俺と話す為にわざと悪天候にしてたみたいで俺と話したら満足して晴天にしてくれました。加護をくれてるのは嬉しいんだけど好かれ過ぎるのも考え物ですね。あの人たち度が過ぎるから」



「あ、人じゃないか」



「直接神々に頼むとは……あなたという人は本当に常識知らずですね」



「今更それを言う? 私はとっくに諦めてるよ」



 今だに戻ってこない船長を尻目に俺たちは船に乗り込んでいった。



 正気に戻った船長に魔王討伐なんてすぐに終わるでしょうからその後はここに戻ってきて下さいと懇願されていた。まああの力を見ればいくら魔王が恐ろしい存在であっても楽勝だと思えてしまうよな。



 やがて船は魔大陸を目指し出航した。



 航海は四日を予定しているが、二日程進むとそこは魔王が支配する海域になりいつ魔物が襲ってくるかわからないと船長は説明した。



 もちろんこの船もかなりの装備をしているが、いつどこで襲ってくるかわからない為急な戦闘は避けられないと真剣な表情で話している。



 トウマ君は何かあれば戦闘は任せてください! と自信満々に言うが、船長は海上の戦闘は別物ですから気をつけてください! と心配気味だった。



 何事もなく一日は過ぎたがそのままで終わるわけもなく、魔王の支配する海域の目前で巨大な魔物が遠くで発見され。船員や船長は慌てだした。



 あの気丈な船長がここまで慌てるのには訳があるようで。体の震えを抑えながら説明してくれた。



「あそこに現れた魔物なんですが……魔王の海域を任されているクラーケという魔物がいるのはご存じですよね? そのクラーケと同等以上の力を持つと言われているのがあの魔物ダーゴです! 一説には魔王ですら配下に置くことを諦め野放しにされていると言われています」



「この距離ならなんとか逃げられると思います。遠回りになってしまいますがそれで良いですね!」



「確かに、あの巨体と海の上で戦うのは無理があるな。船長! なるべく早く迂回しましょう!トウマもそれで良いな?」



 船長がパーティーの司令塔でもあるガーボ君にそう尋ね、ガーボ君もダーゴとやらのやばさを理解しすぐさまトウマ君に尋ねるが当のトウマ君は何かばつの悪そうな顔をするだけで何も言わなかった。



「トウマ、確かにお前の力なら問題なく勝てるだろうがここは海の上だ、船上ではまともな戦いは無理だ。ここは迂回するぞ」



「いや、戦うって言うか……」



「何を迷っている! あんなやつとまともに戦えば船長達を巻き込むことになるぞ! 決断するのはリーダーのトウマだ! 迂回でいいな!」



「船長! ダーゴがきます!」



 中々決断がされないままでいると船員が怒鳴り声を上げた。ダーゴがその巨体からは考えられない程のスピードで船に迫ってくる、あわや激突の直前でダーゴが急停止。



 近距離で見るダーゴはマジで馬鹿でかかった。あるかわからないが、二十階建ての学校のようなデカさで見るものを圧倒させる。横にも縦にもでかい。



 これは普通の冒険者や船ではどうしようもないな。実は二人目のSSS級であるガーボ君でも海の上では勝つのは大変だろうという強さを感じる。



 そんな出会ってはいけない海の魔物と会ってしまい、目前に迫られた船長達は最早死を覚悟し、ただ唖然と立ち尽くすのみだった。




「くそ! こうなったら戦うしかないか! ズーは船と船員達に防御魔法をかけてくれ! トウマはなるべく被害が出ないように注意しながら戦うんだぞ!」



「まっかせて! 久々に張り切っちゃうよ!」



「イーフさん達は周りを守りながら援護お願いします!」



「うむ!」




 やっぱりガーボ君はしっかりしていてパーティーの連携も素晴らしい。俺が満足気に心の中でうなずいていると、遂にトウマ君が口を開いた。



「あのーあちらの魔物さん、実は以前倒したことがあって……えへ」


 誤字脱字ありましたらお願いします。


 感想ブックマーク頂ける嬉しいです。


また明日十二時くらいに投稿したいと思います。


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