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夜釣り

作者: みくた

 その日、私は傍らに置いたラジオの深夜放送を聞きながら夜釣りを楽しんでいた。

 釣りを始めて一時間ほど経つが当たりが全く来ない。

「ポイントを変えるか。」

 そう呟いて私は道具の片付けを始める。

 荷物をまとめ終え、手を伸ばしてラジオの電源を切ろうとすると突然、ノイズが走り放送が途切れた。

「こちら貨物船グリーンポラリス。船内に大量の浸水を確認。救助を要請したい。本船の位置は座標・・・」

 突然、緊迫した声がスピーカーから流れ出す。

「え・・・?」

 急な出来事に私は固まった。

「繰り返す。こちら貨物船グリーンポラリス。船内に浸水を確認。沈没の恐れあり・・・」

 沈没という単語を聞いて、これは一大事だと直感した私は慌てて荷物からメモ用紙、ペン、LEDランタンを取り出し、放送の最後に発せられる座標を書き取った。

 そして、そのまま海上保安庁に通報し救助を要請する。

 気がつくとラジオは先ほどの深夜放送に戻っていた。

 不思議に思いながらも私は釣りを続行する気分になれず、荷物を車に積み込むとそのまま帰宅した。


 後日、貨物船の事故はニュースになっており、夜間にも関わらず沈没寸前で全員無事救助されたとの事だった。

 そして、私は何故か海上保安庁から事情聴取を受ける事になった。

 この事故は私の通報によって人命が救われたのだが、不可解な点がいくつかあるらしい。

 まず私が使っていたラジオは船舶無線などからの通信を傍受する機能は付いていない。次に私が釣りをしていた場所は海から遠く離れた内地の川だ。そして、極めつけは私が通報した時間帯に救助要請をした乗組員はいないと言う。


 では、私が聞いたあの救助要請は何だったのだろうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 聞き流してもおかしくない突然の受信を聞き止めて、救助要請までできるってすごい事です。 全員助かって良かったです。 読ませていただきありがとうございました。
[良い点] 救助要請の発信者の正体が何とも興味深いですね。 もしかしたら例の救助要請は、長年に渡って航行した事で魂の宿った貨物船が、我が子も同然の船員達を救おうとして発した魂の叫びなのかも知れないです…
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