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エンドラン  作者: きと
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第六話 一人の女性

*この話は、作者が中学時代の頃に小説というモノを知らぬまま書き上げた小説を大幅に加筆修正した小説です。

*この話を元にした(リメイク小説)『結末は分岐しだい』と読み比べてほしいためだけに、公開しています。

*話の本筋はラスト以外変えていませんので、不思議なことも多々発生します。


*このお話の彼らがいてのリメイク版があるので、広い心で読んでいただけると嬉しいです。

*誤字脱字等ありましたら、お知らせください。





   第六話 一人の女性



「きゃー、すばるちゃんかわい~。 これも着てぇ~。それと訑灸くんはこれよろしくね」

「……」

 エンドランへ着いた三人は、一軒の家を訪れていた。というより、強制的に連れてこられたといった方が正しいだろう。そこには、一組の夫婦が住んでいる。

 そして、すばると訑灸はそこに住む女性により、着せ替え人形と化していたのだった。


 時は遡ること一時間前……。

「ここが、エンドラン。なんかあっという間だったな」

 エンドランへ無事到着し、罠の森から抜けた彼らは入口で立ち話をしていた。

「なんせ、五日で着いたんだよ。あったり前じゃん?」

 調子よく答える友人に、訑灸は一発殴るか悩んでいたところで、前方からすごいスピードで走ってくる人影が見えた。

「しゅ~う」

 ーービクッ

 その声に、しゅうはあからさまに驚き、嫌そうな顔をする。

「え?」

 その人は女性で、彼のことを知っているようだ。

 だいぶ顔がはっきりしてくるとますます不快感を露にする。そして、女性は前へまで来ると止まった。

「はじめまして! 君が訑灸くんかぁ。うん、かわいいし、かっこいいわね。いけるわ!」

 挨拶もそこそこに、訑灸の手を取りビュンビュンと上下に動かす。

 容赦なく振られている訑灸はその反動でグラグラ揺れながら、質問する。

「あのっ、どちら様ですか?」

「えっ、わたしぃ~?」

 彼女の楽しそうな笑みを確認したしゅうは小さく息を吐き、口を開いた。

「この人は、僕の母さんだよ……」

「は?(えっ?)」

 予想外の回答に二人は、同時に聞き返す。

「いやだから、母さん。正真正銘、僕の母ですよ」

 その言葉を聞き、女性は握っていたの手を離すと笑顔で続ける。

「ふふっ、しゅうの母でーす。よろしくね、お二人さん」

「しゅうって母親似だよね」

 この息子にしてこの母有りだと、真顔で告げる。

「どこが!! 木更っ!?」

「えっ? どこがって話し方とか。そっくりだよな、すばる」

「えっ? 訑灸兄ぃ~ボクにふんないでよ。わかんないよ……」

 突然話を振られた少年は、困った顔をする。

 なぜ、しゅうの母がここにいるのか。それは、息子の帰還を察知したからである。賑やかな出迎えというものだろう。

 余談ではあるが、彼の家は代々覚醒しており、親族のほとんどがここに住んでいる。さらに、彼女を含めて一族全員がスピードという能力(スペア)だ。

「ここで泊まるところは、まだないんでしょ? うちにいらっしゃい」

 と、親心によるご厚意に訑灸とすばるは元気よく返事をする。その隣では、しぶしぶ返事をする息子の姿。今晩の宿は、しゅうの実家になった。

 そして、今にいたる。

 自宅へと迎えられて早々に、二人は女性の手により着せ替え人形と化したのだ。泊めてもらう手前、強く断ることもできず、なされるがままの二人。

「母さん。いい加減止めなよ。木更引いてるよ」

「えっ、そんなことないわよね?」

 ーーブンブン

 真偽を問われた着せ替え中の青年は、取れそうな勢いで首を縦に振る。彼には見えたのだ、女性の背後に有無を言わせない鬼武者が。

「そうね、今日はこの辺にしときましょ。エンドランを見てきたらどう?」

(今日は?)

 不吉な言葉に身震いした訑灸は顔を横に振り気を取り直すと、呆れた様子で見ていた友人へ声を掛けた。

「今七時だけど、行く? 俺は、眠いんだけど」

 しゅうは、少し考えると答えを返す。

「そうだね。遅いし、明日行こうか?」

 そこでしゅう母が、彼らへさらに声をかける。

「あら、部屋のことだけど、今空いてるの二部屋しかないのよ。だからぁ、くじで誰が一人で誰と誰がペアになるか、決めちゃいましょ!」

「いいけどさ、しゅう母。なんでそんなにテンション高いの?」

「えっ? いつもとかわらないわよ? それに、しゅう母はかわいくないわ。どーせなら、蘭ちゃんがいーな」

「蘭ちゃん?」

(いや木更。そこは否定するところだって)

 そんなしゅうの心は、届かない。

「じゃあ、蘭。くじで決めるんだろ、早くしようぜ」

 訑灸の言葉で、くじによる部屋割りが決定した。

 あみだくじで行われ、その結果はしゅうと訑灸が同室で、すばるが一人になる。

「う~ん、すばるが一人かぁ」

「ボク一人?」

 さすがにすばる一人は実家と言えどまずいよなぁと、結果を呟けば、

「すばる、俺とかわろうか」

「訑灸兄、いーの?」

「もちろん」

 訑灸も同じ考えで、交代を申し出る。

「ふふっ、部屋へ行くための地図は書いてるわ」

「書いたからなんだよ」

 しゅうが終始ご機嫌の母へ文句を言う。

「訑灸くん、すばるちゃん、これからよろしくね」

 しゅうは口を開け、訑灸は体を震わせ、すばるは笑っている。

 母の力、偉大なり。

 訑灸としゅうは、この空間から逃げるため荷物を手に取ると、すばるを連れて部屋を出て行った。

 逃げるといっても行く場所は借りた部屋である。

 案内された部屋へ着いた三人は、それぞれ荷物を置いて訑灸の(借りた)部屋に集まった。

「はぁ、なんだよ蘭の奴。人で遊ぶなっつうの」

「わりぃな。母さんがいろいろ迷惑かけたみたいで」

「えー、ボク楽しかったけどね。えへへ」

「すばる!?」

 たくとしゅうは、同時に名前を呼ぶ。

「えっ。タイラさんとは別の意味で楽しいよ」

「‥‥…」

 すばるはなんでもありで、なにをやっても楽しいらしい。

「これからどーする?」

 訑灸は今後の予定をどうするか、二人へ持ち掛けた。なにも考えていなかったしゅうは、眉を寄せ深く考え込んでいる。すばるはただそこで、微笑んでいるだけだ。

「あっ!」

「なんだよしゅう?」

「エンドランを周るんだよな?」

「それが?」

「ルート決めようぜ」

 しゅうの楽しそうな一声により、エンドラン観光のルートを決めることになった。地図は、部屋に置いてあったのですぐにとりかかる。

「商店街は行こう。あと、ここに滞在するなら部屋探し」

「僕も思う。不動産はチェックね」

 思い付くまま話しながらルートを決めていく。全てのルートが決まる頃には、十時を過ぎていた。

「ルートも決めた、俺はもう眠い」

「だな、すばる行くよ」

 二人は、すばるがいるはずの場所を見る。が、そこには彼の姿はない。

「あれ? どこ行った」

 しゅうは不思議そうに呟き、訑灸と部屋を見回した。その姿はすぐに見つかり、ベッドの上で気持ち良さそうに寝ている。

「木更、すばる寝てるし、ここに置いてくよ」

 わざわざ移動させるまでもないと、しゅうは一人戻っていく。訑灸はすばるがベッドで寝ているので、ソファーに寝転んだ。

 こうして、エンドランでの一日目が終了した。



第六話です。


このあたりから、全く記憶にない話の始まりです。読み返して、こんな展開が!? と驚きました。新鮮(笑)。


それでは、また次回よろしくお願いします。




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