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エンドラン  作者: きと
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第五話 試練とエンドラン

*この話は、作者が中学時代の頃に小説というモノを知らぬまま書き上げた小説を大幅に加筆修正した小説です。

*この話を元にした(リメイク小説)『結末は分岐しだい』と読み比べてほしいためだけに、公開しています。

*話の本筋はラスト以外変えていませんので、不思議なことも多々発生します。


*このお話の彼らがいてのリメイク版があるので、広い心で読んでいただけると嬉しいです。

*誤字脱字等ありましたら、お知らせください。





   第五話 試練とエンドラン



 翌朝。しっかりと休息できた訑灸は、朝食を取るため席に座っている。メニューは、サンドイッチにスープ、コーヒー。その横では、再びリアル人生ゲームをしている三人の姿があった。

訑灸兄たくにぃ、しないの?」

 そうすばるに訊ねられるが、

「めんどくせーし、いいや。そもそもそれ、人生ゲームじゃねぇよ」

 と迷わず断りを入れる。その直後、友人がまたも叫び出す。

「なにっ、また殺人鬼に殺されゲーム終了? これイカサマ疑惑! 異議有り!」

 隣で傍観を決めていた訑灸は、表情一つ変えることなくさらに追い打ちをかける。

「それがお前の人生なんじゃない? 二日連続で殺されて終わる奴はそういねぇよ」

 そして、食べ終えた食器を重ねると席を立ち、流しへ運んでいく。

 味方もおらず、落ち込んだしゅうはその場に項垂れていた。

「ねぇ、木更。それってあんまりだよねぇ、ねぇえ!」

 その様子にすばるが心配そうにしゅうの顔を覗き込んでいる。そして、急に笑みを浮かべると親指を立て口を開いた。

「しゅう兄ぃ。人生って、楽もあれば苦もあるんだよ。サバイバルゲームだと思って生きないと痛い目みるんだから」

(タイラさん、どーゆー教育してるんですか? まだ十歳の子供ですよ!)

 十も離れた少年から発せられた謎の言葉に、思わず心でつっこんだ。

 食器を片付けた訑灸は、衝撃を受けている友人のもとへと戻る。そして、隣の椅子に腰かけると口を開いた。

「おいしゅう。楽しんでるとこ悪いけど、これからどーするんだ? そのまま行く? それともどっかよる?」

 しゅうは少し考えると、

「めんどくさいし、そのまま行こうよ。今日の午後三時出発ね。準備するものあったら今のうちにしといて」

 とだけ返答して席を立つ。それから、ふらついた足取りで部屋を出て行った。

 訑灸は残されたすばるを見ると、声を掛ける。

「すばる、今ひま? 俺と買い物行くか?」

 その言葉を聞いた少年は、得意の笑みを浮かべるとうんと呟いた。

 その顔に訑灸も笑い返すと、タイラに視線を送る。

「タイラ、この辺で銃を売ってるところ知らね? 銃弾が欲しいんだよね」

 話題を振られたタイラは目を丸くして聞き返した。

「なにに使うんだ? 別に能力があるからいらねぇだろ」

 訑灸は間を開けることなく答える。

「いや、能力っつっても体力は結構使うだろ? だから、体力をあまり使わないでいーように銃を装備しているんだ」

「ん? ってことは銃を持ってきてたのか?」

「あぁ、左足にあるだろ」

 訑灸は左足に装備しているホルダーを指した。そこには、約十五センチの銃がある。

 その存在を確認し、タイラは心で呟いた。

(今まで気付かなかった)

 その雰囲気にどう思ったのか、少年は横でクスリと笑う。

 タイラは軽くため息を吐くと質問に答えるため口を開き、

「売ってるぞ。場所は、Sの57。地図で調べろ」

 そう伝えると、どこかへと消えていった。

 早速、すばると訑灸は地図を広げ、Sの57を調べる。

「Sの57、Sの57あったか?」

 訑灸は地図から視線を外し、すばるを見る。その時、目線の先で嬉しそうな声が発せられた。

「あったよ。みてみて訑灸兄ぃ~」

 少年は、地図上にあるSの57を指した。そこはここからさほど遠くなく約一キロの距離である。それを見た訑灸とすばるは同時に口を開いた。

「今から、行くぞ」「今から行こう」

 彼らは顔を見合わせ笑うと店を出て行った。


「はぁ~人生ゲームするんじゃなかったぁ。そういえば、今何時?」

 しゅうは、自分の借りた部屋に戻っていた。

 人生ゲームの結果が相当ショックだったらしく、あれからずっとこの状態である。

 部屋にあるデジタル時計に目をやると、十時の表示。

(あと五時間、なにするよ。すばると遊んどくか?)

 出発までの時間を考えているとノックの音が聞こえた。

 ーーコンコン

「しゅういるだろ? 入るぞ」

 ドアが開き、タイラが入ってきた。

「お前、どーせ暇だろ? ちょっと付き合えよ」

 その言われ方に不機嫌な彼は、どーせ暇ですよと小声で呟く。

 その声が本人に届いたようで、相手は溜息を一つ吐くと、

「ほら行くぞ、付いてこい」

 沈んでる男を強制的に付き合わせるため、さらに声をかける。断れない彼は、しぶしぶ部屋から出て行った。


 五時間後。

 訑灸とすばるは買い物を終え戻ってきていた。そして、しゅうとタイラも戻ってきている。

 各々の買い物を済ませ、エンドランへ向かう準備を進めていた。

「すばる、パスポート持った?」

 そう訑灸が訊ねれば、少年は鞄を開いて笑顔で頷く。

 それぞれ準備を終え、いよいよ出発だ。

「すばる、行くぞ」

 訑灸がすばるを呼べば、走って近寄り隣へ並ぶ。そして、後ろを振り向き、

「タイラさん、今までありがとう。これからもがんばってね」

 世話になったことへの感謝を伝え、笑顔を見せる。

「もういいな?」

 訑灸が訊ねれば、少年は満足そうに首を縦に振る。二人もタイラへ頭を下げると、空港までの道のりを歩き始めた。

「訑灸! しゅう! これからいろんなことがあると思うが頑張れよ!」

 見送るタイラは旅立つ彼らへ言葉を投げ掛け、店へ戻っていくのだった。


 数十分後。彼らは空港へ到着し、人数分の搭乗券を購入すると、離陸までの時間を待っていた。

 訑灸はすばるとトランプで遊んでいる。しゅうはぼーっとしながら、そんな二人を眺めていた。

(すばるの実力ってどのくらいなんだ? それに、いつこいつらはここまで仲良くなったんだ? 僕が入れないじゃん)

 疎外感を感じ、一人溜息を吐くとアナウンスが流れた。

「間もなく飛行機が出発します。ご利用のお客様は、Aホームへとお越しください。もう一度繰り返します……」

 それを聞いた訑灸はトランプを止め、立ち上がった。

「行くか」

 荷物をまとめ、彼らはAホームへと向かう。

 予定の飛行機に乗り込み、シートベルトを着用する。そして、離陸と同時にそれぞれが心の中で、タイラへのお礼を再度呟いた。

 最初の国ではすばるが新たな仲間となり、次の目的地へ旅立つのだった。

 


 約十二時間の飛行を終えた三人は、二つ目の国へ無事到着した。

 訑灸とすばるは長時間の飛行で仮眠を取り、背伸びをしながら身体を解している。

 逆にしゅうは、寝ることなく機内音楽を視聴していたので、普段と変わった様子はない。

 その男は二人を見て、声をかける。

「勘だけどさ、ここにエンドランがある。着くまでになにもなければ三、四時間くらいだから張り切っていこう!」

「お前が言うと修学旅行へ行く学生みたいだな」

 と緊張感のなさを指摘した友人に、しゅうは笑う。

 三人は、所在地不明のエンドランへ歩き出した。


 一時間ほど歩くと、新たに草原へ出ていた。草原だけあって、周りはなにもない。

「ここであってんの?」

 訑灸が口を開けば、しゅうは笑顔で頷く。

「もち。あと三十分くらい歩くと森が見えてくるから、そっからが勝負どころかな」

「そういやいってたなぁ、罠があるって」

 そんな会話をしながら進んでいると、あっという間にエンドランへの入口の森へと着いた。

 森というよりは見た目は山。三人は迷わず中へ進んでいく。

 入って一キロほど歩いただろうか。周囲のいたるところに人骨が転がってる。

 急にしゅうが止まった。そして、一言。

「そろそ~ろ、罠が来るところだしがんばろー!!」

 その声と同時にオオカミが現れる。それを見た訑灸は、

「なんでオオカミ?」

 思わず疑問が口に出る。そんなことをしていると、周りに数十匹のオオカミが集まった。

「これじゃあ、キリないね。どーする?」

 しゅうが訊ねれば、すばるが前に出てきた。

「ボクにね、いい考えがあるよ! 聞いて聞いて」

 少年は二人に考えを説明する。

「そんなこともできんのか?」

 訑灸の感想。しゅうは、

「僕は似たようなことができるから手伝うよ」

 といって、すばると逆方向にいるオオカミに視線を合わせる。

 そして、二人は同時に言葉を発した。

「ストップ」「スロウ」

 すばるの【ストップ】は、かけたものの時間を最大十五分止めておくことができる。

 しゅうの【スロウ】は、かけたものの動きを最大三十分遅くすることができる。

 この最大時間は、能力を磨くにつれて増えていくのだ。

 それを見ていた訑灸は、思わず感心の声が漏れる。

「では、今のうちに進みますか」

 彼らは全速力で駆け出し、オオカミの巣から抜けたのだった。

 次の罠ーー試練は、約八百メートル走ったところにあった。

 大きな扉があり、その上に紐で吊るされたカギがある。扉は開くにはそのカギが必要となるが、地上から三百メートル上空にあるので、簡単には取れない。

 それを見た訑灸は、二人に声をかける。

「ここは俺にやらしてよ」

 左足のホルダーから銃を抜き、上へ向かって一発撃つ。人間の目では、その姿は認識できない距離だが、なんの躊躇いもなかった。

 その直後、上からカギの付いた紐が落ちてくる。

 それを受け取り、彼は笑顔で振り向いた。

「二人ばっか、いい格好させねぇよ」

 その時しゅうは、敵に回さず良かったと心から思うのだった。

 扉を開けた三人は中へ足を踏み入れる。

 この後も順調に進み、数個の罠をすべてクリアした。

 そして、ついにエンドランの入口と思わせる場所へたどり着く。

 そこには不思議な扉があり、彼らは顔を見合わせ頷くと扉へ手をかけた。

 エンドランは目の前。これから本当の物語が始まろうとしていた。


第五話。エンドランへ行くまで編の終わりです。


そして、あっという間にエンドランへ到着です。ネタバレすると、能力者の見た目の話はこれから先、回収されることはありません。なぜ、その設定を作ったのか思い出せなし、触れてもいないということは当時からなにも考えてなかったのでしょう(笑)。たぶん、特に考えずに書いてた気がするんだよな。


*それでは、次回。エンドラン編。よろしくお願いします。



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