夢と妹。
2018年6月12日
俺はいつものように起きた。
「夢、か」
内容は覚えていなかったが、とてつもなく恐ろしくて生々しい夢を見たことだけはわかる。
それを証拠に俺は泣いていた。
体に残る違和感を少しでも落ち着かせようと再び横になった。
しばらくするとトントントンと階段を上る足音が聞こえた。
「お兄ちゃん?お兄ちゃん起きて!」
こいつは俺の妹の柚葉(16)だ。
何のためらいもなく俺の部屋に入ってくる辺り、まだまだ子供らしくて可愛らしいところがある。
起きる気はしなかったが無理やり起こされてしまった。
リビングに向かうと朝ごはんの用意が出来ていた。
「あったかいうちに食べて!」
両親は、いない。
あの二人がいなくなってから家事は全て柚葉がやってくれている。
柚葉の作る料理は美味い。
こんなおいしい料理を毎日食べられるなんて俺は幸せ者だ。
一通り食事を済ませると柚葉は食器を洗い、学校へ行く準備をしていた。
「それじゃあ行ってくるね」
「気を付けてな」
「うん!じゃあ、行ってきます」
いつものように柚葉は家を出て行った。
今まで両親が残した金で生活してきたが、その金も底が見え始めていた。
しかし、金のことで柚葉には心配させたくなかった。
「バイトでも探すか」
俺は働くことを決意した。