第9話 決闘①
冒険者ギルドが所有している訓練場。
この場所では、有料でベテラン冒険者による新人冒険者の戦闘訓練や、武器の試し切り等が出来る。
その訓練場で、俺とリーナは対峙していた。
「…………なぁリーナ。本当に戦わないといけないか?」
「当たり前よッ! 変態! こうでもしないとやっていられないわ!」
「俺は別に悪くは無いと思うんだが、どう考えても君が…………」
「ッ! うるさぁぁぁい‼」
顔を赤くさせて叫ぶリーナ。
「兎に角決闘よ! 負けた方が全て悪い。分かった!」
「はぁ、もう分かったよ。決闘の勝敗で、朝の事どちらが悪いか決めよう」
なぜか決闘することになった俺。
(どう考えても、深夜、俺の部屋に入ってきたリーナが悪いと思うんだけど…………)
リーナ自信、こうでもしないと、と言っていたし、自分が悪いと自覚はあるんだろうけど、言いたい放題言ってしまって引くに引けないというといったところか。
「さあ、始めるわよ!」
「はい、はい」
なんでこんな事になったかは、早朝まで遡る。
ーーーー宿屋での早朝。
「…………ん。片腕が重い」
ベットの上で眠りから目を覚ました俺は隣を見る。
そこには、腕に抱きついたままの女の子が眠っていた。
「…………やっぱり夢じゃないよな」
気持ち良さそうに寝ている女の子。
これが彼女なら素晴らしい朝だが、実際は違う。
ベロンベロンに酔って部屋に入ってきた、迷惑女だ。
そう俺が思っていると。
「ふあぁ…………ん? …………ここは?」
俺の腕から手を離し、女の子が目を覚ました。
辺りを見回し俺と目が合う。
「「…………」」
女の子が肩を震わす。
「キッ! キャァァァァ‼」
ーーーー女の子が叫んだ後、直ぐに宿の主人がやって来てた。
女の子は俺が部屋に侵入した変質者だと思い叫んだそうだ。
しかし、ここが俺の部屋だと主人が説明してくれた。
「なら貴方は私を自分の部屋に連れ込んだんですか!? 変態! クズ! 最低!」
「ちげーよ‼ お前が酔っぱらって、深夜勝手に入ってきたんだ‼」
「嘘です! 私は昨日友達と飲んで…………それから…………?」
「…………それからどうした。あんだけ酔っぱらっていたんだ、友達と飲んでいた後の記憶はあるのか?」
女の子は昨日の記憶を思い出そうとしていき、だんだんと顔が俯いていく。
やっぱり記憶が無いのだろう。
それでも反論しようと女の子は顔を上げるが、俺の隣に立っている主人が気まずそうに喋る。。
「あ~、その……なんだ。昨日の深夜、お嬢ちゃんがこの宿に帰って来たとき見たんだが、酷く酔っぱらっていてな。お嬢ちゃんの部屋がある一階じゃなく、坊主の部屋がある二階に上がっていくとこを俺は見たんだが…………。まぁ、お嬢ちゃんの部屋は坊主の部屋の真下だ。酔って勘違いしたんだろう」
主人の話を聞き、女の子は肩をガクッと下げる。
自分に非があると認めたのだろう。
「これで俺は悪くないと分かっただろ。大人しく自分の部屋に帰「名前は」はい?」
俺の言葉を遮る女の子。
急に意味がわからないが、女の子から無言の圧力を食らい、渋々名前を言う。
「…………リクだ」
「私はリーナ・クロイツ」
なぜか始まる自己紹介。
お互いに一切愛想はないが。
「ーーーー決闘よリク」
「いや、急になんで?」
どういうつもりだろう、この女の子は。
「決闘して負けた方が今回の事で悪い。そういう風にしましょう」
「…………意味が分からないんだけど。どうして俺が君と決闘をするんだ。それに君が悪いのに、負けた方が今回の事で悪いなんて、俺にデメリットしかないんだが」
「なら、もし貴方が私に勝ったら、なんでも言う事一つ聞くわ。これで貴方にもメリットはあるわね」
「いやいや、さらに意味がわからなくなってるよ」
俺がそう言うと、女の子は全身を震わせ大声を上げた。
「うるさいうるさいうるさぁぁぁぁい‼ こうなったらやけくそよ‼ こんな恥をかいて大人しく自分の部屋に帰れるわけないでしょうが‼」
もはや逆ギレである。
顔を真っ赤にさせて本人が言うといりやけくそになっている。
「いい‼ 冒険者ギルドが所有している訓練場で決闘をするわよ‼ もし来なかったら、貴方が私を部屋に無理矢理連れ込んだと町中に言うわ‼ それが嫌だったら、昼に訓練場へ来なさい‼」
女の子はそう言うと俺の部屋を出ていく。
あまりにもこちらに有無を言わせない態度に、俺は主人と顔を見合わせる。
「まぁなんだ坊主。運がなかったと思え」
俺の肩に手を置き、部屋を出る主人。
呆然として俺は部屋で固まる。
「…………何がどうしてこうなった…………」
ーーーー時間が戻り訓練場。
これが俺とリーナが決闘する事になった理由だ。
全くもってやってられない。
そして俺とリーナの決闘が始まる。
面白い続きが気になる! と思ったら、評価・ブックマークをお願いします。m(_ _)m
作者のやる気に繋がりますので!
評価は↓の〔☆☆☆☆☆〕を押したら出来ます!