第16話 帰宅
「す、すみません……もう大丈夫…です……」
抱きついて恥ずかしかったからか茹でダコのように顔を真っ赤にして望月は俺から離れる。
「それなら良かった……いつもあんな感じに絡まれてるのか?お前くらいのやつならおかしくないが」
「いえ……声を掛けられることは日常茶飯事みたいなものなんですがあそこまでしつこいのは初めてで……」
か弱い女子高生がチャラい大人数人にしつこく絡まれたら怯えるのも無理ないだろう。
あいつらを平らげること自体はなんの問題も無かったんだがふと目をやると先程までDQNにナンパにあった女子高生。そして日も暗い。即ちここから彼女を家まで送って行かなければならないという義務が発生するわけだ。
はぁ……ほんとはすぐ帰ってラノベでもみるはずだったのに。今日はほんとに予定がいろいろ狂った。そんな事考えてると彼女が……
「ま、また借りができましたね?」
……またデジャヴの面倒事の予感……。
これ以上俺の時間を他人に奪われる訳にはいかない……。
だからここはーー
「……気にすんな」
「えっ?」
「これ以上別に恩を返そうと思わなくて良い。さっきのも、今朝のも困っていたから助けただけ。相互扶助だ。日本は困った時はお互い様と良く言うしお前もいちいち俺みたいなやつに構うのも嫌気が指してるだろう」
「そ、そんなっ!!私がほんとに感謝してるからで──
気がすまないと言うのだったらさっきの男達を滅多打ちにした事を見なかったことにしてくれたらそれでいい。それでもう終わりだ」
彼女の言葉を遮る様に言葉を重ねる
「な、なんで……」
「ほら、今日はもう遅い。家まで送っててやるから。それでこの話は終わりだ」
「……はい」
少々荒技だが俺に言い包められ覇気がなくなってしまった。仕方ない。俺と彼女のためだ。
♢ ♢ ♢
暫く歩き彼女の家に着いた。ここまでくるまで何一つ会話の無い気まずい雰囲気だった。
「送ってくれてありがとうございます……」
愁いを帯びた声で感謝する。覇気が無いのは少々腑に落ちないが俺にできることはもうないし用は済んだから帰宅しようと足を帰宅路を足を向ける。
「じゃあ俺はこれで」