第12話 再会
とある昔、俺は母さんと大型ショッピングモールに来ていた時だ。母さんとは別行動していて1人でいたときだ。
俺より少し下の年齢か、女の子が隅っこで座り込み泣いていた。おそらく迷子だろう。
周りのやつらは気づいていないか、面倒事に巻き込まれたくなくて気づいてないフリをしていたか……まぁそんなもんだろ大人なんてって思いながらもあの子をそのまま放置する訳にはいかないから俺は声をかけた。
「どうしたの、迷子?」
俺の声に気づくと涙目になりながらも彼女は顔上げる。
彼女のを顔見て驚いた。凄く可愛いかったからだ。目がクリっとしといてスベスベな肌。ストレートな長い茶色髪。大人になったら必ずアイドルにでもなれるような容姿になるだろうという程。
当時の紗穂、雪菜となんら遜色なく可愛いかった。だからよく覚えている。
「……ぐすっ……うん……迷子」
「取り敢えず泣きやめるか?」
「……」
泣き止まない。泣いたままだと困る。
どうしたものかと思っていたか1ついいことを思いつく。
「これやるから泣き止め」
「……クマ……?」
俺が出したのはさっき暇つぶしがてらにクレーンゲームで取ったクマのキーホルダー。
これで泣き止んでくれたら、と渡した。
「……ありがとう……お兄ちゃん……」
彼女は泣き止んでくれた。
ここから俺は彼女の母親と会うために迷子センターへと向かった。そしたら既に母親らしき人がいた。
「知花っ!」
「お母さんっ!」
この人が彼女の母親のようだ。思った通り子供に似て凄く綺麗だ。
まぁ何はともあれ無事に再会できて良かった。
「本当にありがとうございます」
「いえいえ、困った人を助けるのは当然のことですから」
「よくできた子ね。凄くカッコいいし……
将来うちの子を嫁に貰って欲しいくらいだわ」
「……あはは」
世辞に俺は苦笑いをする。
「私、お兄ちゃんのお嫁さんになりたい!」
「あらあら、千佳も女の子なのね」
「お兄ちゃん、わ、私を将来お嫁さんにしてくれる?」
何故そうなるかはよく分からないが、とりあえず小さい子の一時期の恋に近いものだろう。少ししたら俺のことも忘れるだろうから
軽く流す。
「うん、じゃあ君が大きくなって覚えていてくれたらね」
「やったー!じゃあ約束だよ?指切りして!」
「はいはい」
まぁ、忘れるよな。
と、ここまでが回想。もう会わないと思っていたがまさかほんとに再会するとは……
約10年振りの再会。
しかも俺その後引越してきたんだぞ?
まさか、彼女もこの街に引越してきたとは……偶然にも程がある。
しかし、通りで出会った時、クマのキーホルダーも彼女自身も見覚えがあったわけだ。
彼女はそのことを覚えていて、さらに何故か俺を好きになっている。
さて、どうしたものか……。すぐに忘れると思っていたがまさかまだ覚えているとは。
顔が整っていると彼女は言っていたのが、いささか気になったが恐らく助けてもらったのがカッコよく見えただけだろう。
彼女はまだ、当時のガキが俺だと気づいていない。もしそれが俺だとバレたら幻滅するだろう。
だから彼女には少し悪いが俺は黙って、
あの過去は無かったことにしよう……うん。
報告なんですが作品を投稿している本体の機械が故障してしまって筆記が難しい状態になったので今のうちに投稿して修理に出そうと思います。
ストックがあるので多分大丈夫です