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旅人ラルプ  作者: 風結
8/9

3、5話  冒険者

 休憩中。


 ーー蛙の魔物。


 ーーフウ姉様が可哀想。


 ルオとメナに、酷評された。フラウズナの似顔絵だ。「酒蔵の番人」も目で訴えていたが、どうやら俺に絵心はないらしい。


 地面や薪に絵を描いていたという少女に、手持ちのすべての紙を渡して、管理を委ねた。


 フラウズナの可愛さを半分も表現できたのだから、自由に好きなだけ絵を描く権利を与えるのは当然のことだ。


 荷物の運搬の依頼。


 冒険者の主要な仕事だ。冒険者がいなければ、十村はそれぞれに孤立しちまう。今より、相当貧しくなるだろう。


 だからといって、優遇されているわけでもない。


 規則(ルール)というのは、大抵それを作った側に有利になるようにできている。商人組合は、冒険者が商売をするのを認めていない。とはいえ、これにも抜け道はある。


 組合と交渉するか、その類の依頼を受ければ良いのである。残念ながら、そこまで思い至る冒険者は稀である。彼らの多くは、依頼の報酬を生活と交遊に充てている。


「交遊」と聞いて、ルオは首を傾げていたが、メナのほうは。確実に、良からぬことまで理解していたようだ。


 師弟ならぬ師妹は似るというか、猫を被っていたメナ。ルオと打ち解けるなり、ドワーフの性質を、無骨さを隠さなくなった。それでいて愛嬌があるのは、エルフの性質なのかもしれない。


 大口の依頼は、まだ早いだろう。他の冒険者と行動を共にすることで学べることはあるが、ーー半周期は様子見が必要と判断した。


 共に行動をする上で、隠し事はいけない。報告、連絡、相談ーー色々あるのだが、羞恥心から無断で花を摘みにいってしまったメナと、心配になって捜しにいったルオ。


 ーー大変だった。


 襲ってきた魔物を倒すより、ルオに常識を教え込むほうが困難だった。どうもルオは、男と女の違いについて、まったく理解していないようだった。バゥラと命の受け渡しをしていた所為なのか、根本的なことを中々わかってもらえなかった。


 バゥラとそうしていたように、メナを抱き締めながら寝るのはまだ増しで。ーーそれ以外のことはメナの名誉のために、秘することにしよう。


 不思議な関係だ。


 メナは、それでもルオを頼りにし、彼の後ろを定位置に。ルオは、メナのことを「半身」として、近すぎる距離感を当然のものとして受け容れている。


 「水竜」から「風竜」へと向かっている。


 荷は薬草で軽く、安全な経路(ルート)。報酬は安いが、初めての依頼としては順当だ。まずは達成感を与えてやらないとな。


 この依頼を選んだ理由は他にもある。いいや、そちらのほうがメインとも言える。「風竜」の近くにある洞窟が目的地だ。


 「風竜」まであと三日。会話を中心に、ルオを矯正しつつ、間にルオを挟まずメナと直接話せるところまで持っていかないと。


 気苦労ーーではあるのだが、心は軽い。自分のことは自分が一番わからない、などと言うが。相方が二人になって知った、俺の変化も意外なものだった。これまで好んで独りでいたのが、馬鹿らしく思えてくるほどに。


 ルオと同等の魔力量のメナ。


 魔力を魔法の鍛錬に使えるようになって、おかしなことが起こった。なぜか、俺の魔法がメキメキと上達してしまったのだ。


 どうもこれは、俺の才能が開花したとかではなく、二人の多量の魔力を浴びることで、俺の内のどん詰まっていた魔力が正常に流れ出したようなのだ。


 歯車と、リュリケイルは危惧していたが、それは変化とも言える。大きな変化は要らない。せめて、フラウズナと手をつなぐまでは、そこそこに愉快な人生を歩ませてくれ。


 信徒ではないが、幸運の女神エルシュテルに祈ってから、休憩を終えたのだった。

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