0話 森に到着
エエェェルゥゥゥウっ、エルフっっ!!
ハイエルフだっ! 精霊魔法だっ! 長命種族だっ!
五周期だ! 五周期も掛かっちまった!
ととっ、不味い不味い、興奮しすぎだ。落ち着け、俺。
だが、念願のエルフの里があるという森に辿り着いたんだ。多少羽目を外すくらいは大目に見てくれ。
旅を始めたとき、最初の目的地に決めた。
村を出たのが十七で、もう二十二になっちまった。半周期で着くだろう、とか馬鹿なことを考えていた俺は、村の外のことを、この「大地」の複雑さをまったく理解しちゃいなかった。
「大陸」と言う奴もいるが、そこまで大きくないので、「大地」や「ラープの地」と呼ぶのが一般的だ。
本当の大陸は、南に二つある。
なんでも、西の大陸には「幻想種」の竜が、東の大陸には「魔獣種」の竜がいるらしい。じゃあ、俺たちのいる「大地」に竜はいないのかといえば、そうじゃない。
「ラープセンナ」と「ラープカイナ」。
二竜の雷竜が御座す大地ーーではあるんだが、別に「双雷竜」が「大地」を統治しているわけじゃない。だが、二竜が特別な存在なのは確かだ。
それは、「双雷竜」に肖ってつけられた「大地」という名称からもわかる。
竜にも角にも、今はエルフの里のことだ。
地図には「迷いの森」としか書かれていないが、それには理由がある。この千周期、ハイエルフと接触した者はいないようなのだ。
いつしか森の名も忘れ去られ、迷い込んだ者を死に誘うとされた「魔酔いの森」。
俺は今、その森の前に立っている。「迷いの森」に隣接した鉱山にはドワーフの集落があるらしいが、浮気はいけない。彼らは後回しである。
これまで幾度も死を覚悟したことはあったが、今回は飛びっ切りだ。ある意味、「千周期の謎」に挑むようなものだからな。
自分が特別な存在だなんて、もう思っちゃいない。というか、この五周期で散々に思い知らされたからな、勇気と蛮勇を取り違えることはしない。
ここまで五周期掛かったんだ。一星巡り掛かろうと、じっくり腰を据えて攻略してやる。
それで、あとは、あれだな。
礼儀正しく、というか、振る舞いに気をつけろ、というか、エルフは野蛮なる者を嫌うと聞くから、紳士的な態度を心掛けないと。
これはちょっと自信がないから、誰かの真似をするのが良いのかもしれない。
ーー背に腹は代えられない。外面だけなら一級品の、友人を真似るとしよう。
ーー、……ふう。
なので、もう我慢も限界だ。
なんか噂では、ハイエルフは小柄で、美男美女っぽいからな!
今っ、このラルプがっ、逢いに行ってやるぞ!
くっくっくっ、待っていろよっ、エェェルフゥゥ~~っっ!
「ひゃっほうっ!」
そうして、辛抱堪らん俺は「迷いの森」に突撃したのだった。