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旅人ラルプ  作者: 風結
1/9

0話  森に到着

 エエェェルゥゥゥウっ、エルフっっ!!


 ハイエルフだっ! 精霊魔法だっ! 長命種族だっ!


 五周期だ! 五周期も掛かっちまった!


 ととっ、不味(まず)い不味い、興奮しすぎだ。落ち着け、俺。


 だが、念願のエルフの里があるという森に辿り着いたんだ。多少羽目を外すくらいは大目に見てくれ。


 旅を始めたとき、最初の目的地に決めた。


 村を出たのが十七で、もう二十二になっちまった。半周期で着くだろう、とか馬鹿なことを考えていた俺は、村の外のことを、この「大地(ラープ)」の複雑さをまったく理解しちゃいなかった。


 「大陸」と言う奴もいるが、そこまで大きくないので、「大地」や「ラープの地」と呼ぶのが一般的だ。


 本当の大陸は、南に二つある。


 なんでも、西の大陸には「幻想種」の竜が、東の大陸には「魔獣種」の竜がいるらしい。じゃあ、俺たちのいる「大地(ラープ)」に竜はいないのかといえば、そうじゃない。


 「ラープセンナ」と「ラープカイナ」。


 二竜の雷竜が御座(おわ)す大地ーーではあるんだが、別に「双雷竜」が「大地(ラープ)」を統治しているわけじゃない。だが、二竜が特別な存在なのは確かだ。


 それは、「双雷竜」に(あやか)ってつけられた「大地(ラープ)」という名称からもわかる。


 竜にも角にも、今はエルフの里のことだ。


 地図には「迷いの森」としか書かれていないが、それには理由がある。この千周期、ハイエルフと接触した者はいないようなのだ。


 いつしか森の名も忘れ去られ、迷い込んだ者を死に(いざな)うとされた「魔酔(まよ)いの森」。


 俺は今、その森の前に立っている。「迷いの森」に隣接した鉱山にはドワーフの集落があるらしいが、浮気はいけない。彼らは後回しである。


 これまで幾度も死を覚悟したことはあったが、今回は()びっ()りだ。ある意味、「千周期の謎」に挑むようなものだからな。


 自分が特別な存在だなんて、もう思っちゃいない。というか、この五周期で散々に思い知らされたからな、勇気と蛮勇を取り違えることはしない。


 ここまで五周期掛かったんだ。一星巡り掛かろうと、じっくり腰を据えて攻略してやる。


 それで、あとは、あれだな。


 礼儀正しく、というか、振る舞いに気をつけろ、というか、エルフは野蛮なる者を嫌うと聞くから、紳士的な態度を心掛けないと。


 これはちょっと自信がないから、誰かの真似をするのが良いのかもしれない。


 ーー背に腹は代えられない。外面(そとづら)だけなら一級品の、友人(おとこおんな)を真似るとしよう。


 ーー、……ふう。


 なので、もう我慢も限界だ。


 なんか噂では、ハイエルフは小柄で、美男美女っぽいからな!


 今っ、このラルプがっ、()いに行ってやるぞ!


 くっくっくっ、待っていろよっ、エェェルフゥゥ~~っっ!


「ひゃっほうっ!」


 そうして、辛抱堪(しんぼうたま)らん俺は「迷いの森」に突撃したのだった。

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