第二話
「っ!? ん、んん。ここ何処だ?」
慶吾が居たのは左右どちらを見ても、木しか見えない森の中だった。
“マスター!!”
「っ!? びっくりした〜」
「おい!! そこのお前! 何を喋っている!!」
目に二つの引っ掻き傷を負っている男が慶吾の胸ぐらを掴んで、持ち上げた。
「キュア。お前のせいじゃないか!」
「おい、キュアってのは誰のことだ? ほかに仲間でもいるのか? おい!!」
“マスター。言い忘れてました。言葉にしなくても、頭の中で会話することが可能です。私の声はマスター以外には聞こえませんので”
それを早く言え! と、内心絶叫した慶吾だった。
「え、仲間はいないですよ。ちょっと、叫びたくなっただけです。いまいち状況もわからないですし」
「そういえば、お前は後ろから一発だったって聞いてるしな。いいぜ、教えてやるよ。俺たちは、世界に名を轟かせる大盗賊。『ケンタウロス』に捕まったんだよ」
そう言って、その男は、慶吾をぶん投げて去っていった。
「『ケンタウロス』ね」
“『ケンタウロス』その盗賊は、あいつの言う通り、約百年前から存在している世界最悪の盗賊団です。数年前この国の騎士団が討伐を行いましたが、討伐は失敗し、撤退しました”
(まじかよ。てことは、俺奴隷行きか、死ぬの? 早すぎじゃありません?)
“まぁ、こんなこともありますよ”
盗賊に捕まった慶吾は、ここから逃げ出す為に、どうしようか悩んでいた。
(なぁ、キュア。ここから逃げるにはどうしたらいい?)
“忘れてるかもしれませんが、ここには戦える奴隷がいます。その人を仲間にできれば、逃げることは簡単です”
周りを見渡すと、そこに一人の女の子がいた。見た目では十五歳ぐらいだと思う。周りを見渡し、周りに盗賊がいないことを確認してから、女の子に話しかけた。
「ねぇ、そこの君。ちょっといい?」
「何ですか?」
女の子はぶっきら棒に答えた。
「ここから、一緒に逃げよう」
「え?」
女の子はこの人何言ってるの? って顔でこっちを見ていた。
「君のその力があれば、ここから逃げることが出来るはずだよ。お願い。一緒に逃げよう!」
これが、彼女とのはじめての出会いであり、会話であった。




