第一話
楽しい旅にしたいな。
「ここが、異世界なのか?」
慶吾は周りを見渡して独り言を呟く。周りに何もなく、ほとんど地球と何ら変わらない大地にいたら、そんな風にも思ってしまうさ。
“YES、マスター”
頭の中にいきなり女性の機械音の様な声が聞こえた。
「な、なんだ!? この声は!」
“Q&A”
「Q&A?」
まさか、こんな機械音だとは思わなかった。
「その声、どうにかならない?」
“なります。マスター”
「どうすればいい?」
“只今の私は、自己が確立できていません。名前をお付けください”
「成る程、名前を付ければいいのか」
そこで慶吾は気づいた。自分にネーミングセンスが全くないことに。
「じゃ、じゃあ、Q&Aだから。キュアでどう?」
“キュア。いい名前ですね。可愛い声の私にぴったりです”
Q&A通称キュアに名前が決まり、キュアの言う通り、二十歳ぐらいのすごく可愛い声に変わった。その声に、ドキッとしてしまった慶吾だった。
「あ、ありがとう。でさ、キュア、戦える奴隷が買える町って近くにある?」
“あるよ。マスター。エルダー王国にぴったりの奴隷がいるよ”
「なら、先ずはそこに向かうか。と、その前に、この袋って、あれだよね」
慶吾はすぐそばに落ちている袋を手に取り開けてみる。そこにはなんかよく分からない空間になっていた。説明のしようが無いんだよ。なんか、ウニャウニャしてる空間なんだよ。中身は見えないし。
慶吾は覚悟を決めて手を突っ込んでみた。
「? 何も無いぞ?」
そこに、キュアが教えてくれた。
“ぷっ、マスター何やってるんですか? ぷぷっ、それは、欲しいものを念じれば出てきますよ。持ってれば中身も分かりますし。ぷっあはははは”
「そんな、笑わなくていいだろう。異世界なんて初めてなんだからさ」
そう言って、袋を少し意識すると、中に入ってるものが頭の中に表になって出てきた。
「成る程、金貨にサバイバルキットがこの中に入ってるのか。それに、食料も少しか、女神様に感謝だな」
そこから食料を少し齧りながら、キュアの道案内でエルダー王国に向かった。
“マスター。あと少しですよ”
「道案内ありがとうな、キュア」
“いえ、感謝されることじゃありませんよ。これが私の存在意義ですから”
「そうか」
それから少し歩くと、小さな村を見つけた。
“ここからが、エルダー王国が治めてる領地になります”
「え? てことは、王都はまだまだ先?」
“そうですよ。歩いて行ったら二年はかかると思います”
「まじか、どうしよう」
慶吾は転移した先に王都があると思っていたらしく、現実はそう簡単に運ばないと、心底感じていた。
「まずは、王都に行くのが目標だな」
“でも、マスター、そこの村にいますよ。目的の奴隷が”
「え? そうなの?」
“はい”
そうと決まれば、即行動!! 慶吾は目の前の村に向かって歩き出した。
「おう、兄ちゃん。この村に何の用だ?」
「旅の途中でした、この村を見つけたので、少し立ち寄ろうかと思いまして」
「おう、そうか! 俺たちはお前を歓迎するぞ!!」
男はそう言って、俺を無理矢理中に入れた。
「ここは良いところだぞ、自然に囲まれてて、何しろ温泉があるからな」
「温泉ですか!?」
「すぐそこだ、旅の疲れもそこで癒すと良い」
俺は、その温泉で今までの疲れを癒して、村を見て回ることにした。しかし、それをすることは叶わなかった。
ゴン! と、鈍器で殴られ、意識を失った。
その間キュアは、寝てた。仕事しないなこいつは。
一体誰がそんなことを!!??




