第十二話
まだ薄暗い朝、俺は目の下にクマを作っていた。
「全然眠れなかった」
未だに俺に抱きついて寝息を立てているデルは幸せそうな顔をしていた。
それから数時間後、日が昇り外からは声が聞こえてきていた。
「ん、ん〜、あれ? もう起きてたんだ。早いね。おはよう」
そう言ってデルは体を起こした。
「俺は、寝てないよ。って事で、お昼まで寝てるから。お昼ご飯になったら起こしてね」
「え? だったら私も寝る」
「え? 待って、寝るなら抱きつかないでくれる?」
「私、抱きついてた?」
「うん。最初はそうでも無かったけど、途中から抱きついてきて、一睡も出来なかったんだぞ」
「それは、その、ごめん」
「良いよ、別に。じゃ、おやすみ」
起きたのは夕暮れだった。
「まじか。もう夕方か」
「本当だ。でも、お腹減ったね」
「たしかに。どこかに食べに行くか」
今日初めてのご飯を食べて宿に戻ってきた。
「ちょっと待って下さい」
声をかけてきたのは、この間の受付の女性だった。
「今日も泊まられるんですよね?」
「はい。そうですけど」
「では、追加料金をお願いします。この間は一日分の料金しか貰ってないので、追加分をお願いします」
「あ、なるほど。最大でどの位先までの料金を払えますか?」
「一週間先まででしたら大丈夫ですよ」
「そうですか。では、一週間分お願いします」
お金を渡して次の日に備えて二人は眠りについた。
「今日はクエストを受けに行こうと思う」
「うん、良いんじゃない?」
「早速、行こうか」
俺たちは昨日一日中寝ていた為、今日は日の出と共に起きることが出来た。
「うわ、人いないね」
「ほんとだ」
「えっと、クエストはどこで受けるんだ?」
“ご主人様、あそこにあるボードですよ”
(ありがとう、キュア)
キュアの言う通り、ボードに付いている紙を受付に持っていけば受けられるらしい。
「ケイゴ、何受ける?」
「そうだな。やっぱりこれだろ」
俺がボードから取ったのは、
「これをお願いします」
「はい。薬草採取ですね。かしこまりました」
無難なこれだろ!
「では、カードをお借りします」
カードを渡し、紙を何かの魔道具? の上に置いて数秒。
「はい、完了しました。こちら常駐クエストなので、罰金も発行料も発生しません」
「分かりました」
俺たちは、カードを返してもらい、ギルドを出た。
「あれなんだな」
「どうしたの?」
「見てくれよ」
俺がデルに見せたのはギルドカードだ。
「ほらここ、地図が書いてある。多分だけど、ここに行けば薬草が生えてるんじゃないか?」
「ほんとだ。もしそうだったら凄いわね。キュアはなんて言ってるの?」
“確かに、そこには薬草が群生してました。しかし、それは少し前までの話です”
(え、それはどう言う?)
“そこは、魔物によって食い散らかされています。なので、そこにはありません。私が案内するので付いてきて下さい”
(分かった)
「なんかね、ちょっと前まではあったみたいだけど、今は無いらしい。キュアが案内してくれるってさ」
「頼もしいわね」
俺たちの始めてのクエストが始まった。




