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不協和音  作者: 冷蔵庫
2/5

ゆきの編

この物語はフィクションです

ようやく駅前に着いた。


「お待たせ」


僕の声で、一人の女性が振り返る。

彼女の名前はゆきの。


「遅れてんじゃねーよ、殺すぞ」


相変わらず彼女は僕に対して当たりが強い。

昔から、僕に対して殺害予告をするのが当たり前になっていた。



そう、この日までは…。



「なあ、これからどうするよ」


僕は問いかける。

なんとなくで会ってみたものの、特にやることは決めていなかったのだ。


「あたしね、ちょっとしたいことがあるの。付いてきて」


言われるがままに付いていくと、人気のない路地裏に出た。

駅前とは打って変わって、暗い雰囲気だ。

その冷たい空気に飲み込まれそうになり、僕は慌てて彼女の方を見る。


「・・・え?」


一瞬の出来事だった。

彼女の手に握られていたのは、銃。



そして、銃声が聞こえた。



空が見える…。

僕は…死んだのか?


体を起こすと、僕は先程の路地裏にいた。

ゆきのが、僕に銃を向けている。

その銃口からは、煙が立ち上っていた。


「なん・・・で・・・」


訳が分からない。

何故撃たれた?何故僕は生きている?

僕の心が見えているかのように、彼女は微笑み、僕に真実を告げる。


「撃ったのは、あたし!殺すって言わなかった?」


殺す…?

あれは冗談じゃなかったのか?

理不尽だ。理不尽すぎる。

とにかく、逃げなきゃ。


僕は慌てて立ち上がり、走り出そうとする。



そして、銃声が聞こえた。



目を開くと、そこは見慣れた路地裏だった。

変わっている点を挙げるとするなら、それは血痕の量だろう。


「どうして死なないんだろうって顔してるね」


背後から彼女の声がする。


「だって、死んじゃったら、殺せないでしょ?」


とても残酷で、とても冷たい言葉だった。

恐怖で足が動かない。コイツは…ヤバい。

分からない事だらけだったが、僕が死なないのはコイツのせいという事だけは分かる。


「・・・ごめん」


僕が必死に絞り出して出た言葉は、たったそれだけだった。

だが、彼女は表情を一切変えなかった。



そして、銃声が聞こえた。



これは…何回目だ?

気付けば辺り一面が赤く染まっている。

目からこぼれた涙が、血に溶けていく。


「ごめんよ・・・ごめん・・・」


もしかしたら彼女はこの言葉を聞き飽きたのだろう。

そう言いたげな、つまらなさそうな顔をしている。


「教えてあげようか?あたしが何故、あなたを殺すのか」


彼女の雰囲気が変わった。

その声には怒りが込められているようだった。


「あたし知ってるんだ。あなたがまりなにした事を」


何故知っている?

あの事は必死に忘れようとしていたのに。

あれは僕であって僕ではない。僕は悪くないんだ。


後悔と焦りが込み上げて来る。

銃弾よりも鋭い何かが、僕の心を撃ち抜いたようだった。


「いいんだよ?殺すのやめて警察に突き出しても」


その言葉で、同時に怒りが込み上げて来る。

お前が僕の何を知っているというのだ。

そしてそれは殺意へと姿を変え、僕の拳に力を込める。


逆に考えれば、僕はこの状況で死ぬことはない。

すぐさま体勢を整えると、彼女に飛び掛かる。


銃声が聞こえた。


銃声が聞こえた。


銃声が聞こえた。


僕は何度も殺された。

そして気が付けば、目の前に彼女の足が見える。

決してこの機会を逃す訳にはいかない。


僕は必死に手を伸ばす。


「うおおおおおおおおお!」


掴んだ!

すかさず僕の方へと引っ張る。

すると彼女は体勢を崩し、尻餅をついた。


力では僕の方が上だ。

彼女の手から力尽くで銃を奪い取り、それを彼女に突き付けた。


「待って、あたしは・・・」


彼女は何か言いたそうにしていたが、構わず指に力を入れる。


銃声が聞こえた。

そして、人の倒れる音がした。

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