*prologue
インターホンを鳴らす。
坂崎眞白には親友がいる。同じ高校に進学を決めた、幼馴染。
それが、
「ごめん眞白、待った?」
二十秒ほどで出てきたのに、待ったも何もない。髪の乱れも制服の皺もない、おおよそ完璧な身だしなみで現れた。
スカートからすらりと伸びた長い脚は彫刻のように艶やかで、一人の女として完全敗北を認めざるを得ない。それが私の大親友、青田英華だ。
「そうだねー。待ちすぎて日射病になるかと思ったよー」
わたしがそう言うと、英華は急に顔を近づけてきた。ものすごく距離が近くて、彼女の熱を感じる。
コツッ、とおでこが当たった。
「んー……熱は……」
いやいやいや。待って。ちょっと、待って。
そんなことされたら無かった熱も上がるって。
「ダメだ。よくわからないな……」
距離が遠くなって、いつもの平静心理距離が維持できるようになった。鼓動が普段より早い。
「冗談だって」
「なんだ、冗談だったのか」
くすっと笑う英華。……嵌められた。
この女は……わたしがドキドキするのをわかっていてやったのだ。
冗談を冗談で返されて、煩悶とした気持ちにさせられた。
「さ。ボサッとしてたら遅刻するよ」
一歩前にでた英華に、手を引かれた。
胸がドキドキする。
それは英華のせいだけじゃない。
今日は入学式なのだ。
私は祈る。
ああ神様。どうか彼女と一緒のクラスになれますように――