純白な幼魚達
これまで書いた話の内容の設定の一部をまた変更しました。
変更点)王国→帝国 竜→王国にのみ存在、帝国にはいない
初めのプロットからずいぶん離れていくだろうとおもったためです、申し訳ありません。
ステファン自治伯の館へと向かうため、馬車に両親とフーキエと共に乗り込むと、護衛の騎士を先頭に警護されながら出発を迎えた。
窓を見やると、館の外も青々とした森と畑が連なり、自分が熱帯魚になったかのように錯覚させる。この世界の葉緑素とは異なるなんらかの青い要素が成長に関わっているのだろうか、野菜もはやく大きく育つため、食料も資金も豊富になる。
フーキエはこの世界では、魔法とエルフがこの世界に存在し、ほとんどの人間が使えない魔法をエルフは容易く扱うのだという。ただ、長年の対立故にほとんど森に引きこもり、その居場所を魔法でわからないようにしている、と。
この話だけなら、単なるお伽話としか思わなかっただろうが、青い景色を見惚れていると自然とそれが真実であると受け入れてしまう。
ふと、前方の景色に目が向いた。自分と同い年かそれより低い男の子と女の子が、無邪気な笑顔で畑を泳いでいるかのように駆け回る。その後、少し紅く頬を染めながら大きな声で
「大きくなったら結婚しようねー!!」「絶対だよ、約束だよー!」
と言い合う。その後駆けっこしようとすると、男の子がつまずいて転んでしまった。女の子は優しく慰め、世話を焼き、頭を撫でながら歩いていく。
その光景はアレクにとって羨ましい関係であり、そして焦りを募らせる。
幼馴染は、文字通り小さいころからの勝手知ったる仲である。アレクは前世で一切経験がなかった幼馴染の女の子という存在を欲した、が...。館には使用人が少なく、近隣に家や学校があるわけでもなく、先の両親の過保護気味な教育方針による外出不足といった要因が、幼馴染の女の子という鉄板のキャラクターに遭遇する機会すらを与えずにいた。
時間が刻々と過ぎ去っていき、やがて大人の年齢となってしまうことを、子供の精神で無い故か、余計に早く感じてしまう。また前と同じような人生を繰り返すのかーー。
眩しいほどの彼らの姿に焦燥感に掻き立てられるアレクが乗る馬車は、歓喜と希望に満ちた彼らの前からあっという間に駆け去っていった。