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新たな選択肢


"魂の消滅を願うか? また日本で生まれたいか? それとも異世界へ転生したいか...?"


液体に身体が包まれている感覚だけがある中で、中性的な声が脳に響く。


(またあの自殺大国・過労大国の日本だって? 冗談じゃない! 悪魔のささやきか....)


と声に出さずに思うと、"聞こえているぞ" と頭の中で囁かれた。


「勝手に他人の思考を読み取るな、悪魔野郎が」ととっさに驚き叫んでみると、


"当方は悪魔ではない。どれを選択するか?" と事務的な返事が頭の中で響き渡る。


(悪魔でないなら、神か仏か、または天使か、もしくはいずれに近い存在か。声が中性で、当方ということは、大まかなイメージや、一体なのか複数なのかすらを判断させずにしているのだろう。

...読み取るのを控えたみたいだ。....ん? ちょっと待て)


「何故、天国が選択肢に含まれていないんですか?」 と口調を変えて尋ねてみると、


"貴方は具体的な天国のイメージができるか"との返事に、返す言葉がでなかった。


"昨今特に日本の若年層に多いのは、自分の属する宗教での天国とはどういう場所か、死んだ魂がどうなるかがわからず、そもそも自分が宗教に属しているかどうかすらわからない。" 


(そういえば、海外に行った知人が似たようなことを聞かれたといっていたな...。)


"だが、一方、死後に異世界へ転生するという事象のほうが、それらよりも、若年層の間で浸透し、イメージが具現化され続けている。よってそれらの代替としての異世界転生が新たに選択肢加えられた。"


非現実的すぐるが何故か妙に腑に落ちた感覚に捉われたためか、さほど混乱せずに済んでいる。


"だが、異世界転生は天国に行くことではない。自身の人格と記憶を受継ぎ、別の世界で育つことだ。"


(新たな煉獄か...後悔と苦行まみれから解放されるなら、もういっそのこと消滅で...

あ、童貞のまま死んだんだったな...)

と気づいてしまい、わずかにやり直しへの気持ちが芽生え始める。

(このやり残したことを転生先で済ませてから、死後に消滅を望んでもいいのではないか...。)


「死因は過労死ですか」との問いに、"そうだ"と短かく返され、


「前より裕福な生活を送れるなら異世界転生を望みます」と話してみると、"異世界へ転生する、だな"と前半の希望をスルーされた。


意識が混濁していく中で、(以前のような生活でないなら...)と思いを馳せると、"生活と人生は異なるぞ"と返された。しまった、単に思考に対して反応していなかっただけか...。


微睡みゆく意識の中で、この選択が後悔に満ちたものにならない事を願わずにはいられなかった。







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