1話目
昨日は飲み過ぎた。
まだ入社して僅かな会社帰りに、コンビニに立ち寄ってビールを4本買い。夜空に星々が散々と煌く道中、街灯の方がよっぽど明るく思えると、科学の力を頼っているとアパートに着いた。
一階だというのによっぽど疲弊していたのか、ドアノブを回す行為をもド忘れ、押すことにイライラを募らせる。
意識が朦朧としながら家へと帰宅すると、モコモコパジャマ姿の彼女がカップラーメンを片手に、一人テレビゲームをしていた。電気が付いていない事を認識したのは彼女の姿を認識してからだ。
目下、靴が揃っていないことに気づくが、二足しかないせいか安堵する。そしてかた足づつ足首を振り回して脱ぎだす。玄関から廊下、廊下から直線上にある部屋。自分以外の人が入ってきたらと考えると、面倒極まる。
「おかえり」
目線はテレビのままだ。カーテンも無く隠すことの出来ないこの状況、だが、問題ない。
何故なら人が来ないからだ。来たとしても回覧板や配達物程度で中に上げることはない。
「ねぇ」
表情変わらず、また、目線も。
「どうした?」
「おかえりって言ったんだけど」
今度は少し感情帯びた表情だった。声のトーンは一定としていたが、僅かだが険しい顔になっていた。
それが面白かったのか、僕はクススと笑いながらただいまを二回言った。