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ハッピーエンドはゼロにある  作者: 赤城 朝耶
ハッピーエンドはゼロにある
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異世界へのお招き

自分は特別じゃない。そんなのわかってる。

不思議な夢をみた。

目を覚ますとそこは中世ヨーロッパ思わせるような町並みが広がっていた。


無論こんな場所身に覚えはない。しかし、完全に無関係かと聞かれれば返答に困るような不思議な感覚。

俺はここに来たことがある。不思議とそう思えた。

この時俺はまだここが夢だとは気づいていなかった。


このままこの街を見て回ろうかとも思った。

しかし、麻痺してしまっていたのか今までうっすらとしか聞こえていなかった耳が次第に回復していく。

少し前から何かが聞こえていた。それが悲鳴だと気づいた時には既に俺の体は悲鳴のする方へと進もうとしていた。


少し先の場所から聞こえる、たくさんの人の悲鳴。

俺はその悲鳴のする場所へと走って向かう。

しばらくすると微かな刺激臭が鼻に入ってくる。何かが燃えるような臭い。それは進むにつれ強くなっていく。

そして見えてきたのは燃え盛る炎と今にも崩れてしまいそうな屋敷だった。


火事の現場には既に多くの人が集まっていた。皆、やはり町並みや時代にあったような質素な服を着ていた。顔つきも日本人とは違う。


火の方はと言うと既に大きな屋敷を飲み込み凄まじい音と共に大きくなりつつあった。このままではほかの家に燃え移るかもしれない。


しかし、今の俺にはどうすることもできない。ただただ見つめることしかできないのだ。すると、


「グルルル…」


と、いかにも獣らしい唸り声が聞こえてきた。

急いで振り向くとそこには角のようなものが生えた狼が3匹こちらを睨んでいた。


1匹ほかよりも体格が1回り大きなやつがいる、やつがリーダー格のような存在だろう。


「グルルル…」


不気味な声を上げながらこちらへと近づいてくる。

俺は自然と後ずさった。

しかし標的は俺ではなく近くで火事の様子を見ていた人たちに向いているようだ。


すると、狼たちの存在に気づいた人々が連鎖するように悲鳴をあげながら全速力で逃げていった。


狼たちは俺をスルーし逃げ惑う人々の群れに突っ込んでいった。何故か俺の体は動かない。力を入れようとしても体がいうことをきかないのだ。そして3匹の狼が大きく飛躍し人々の群れに飛びかかる。もう、止めることは出来ない…。



悪夢から目が覚めると俺は真冬だというのにベッドの上で横になった状態で大量の汗をかいていた。


「はあ、はあ、はあ…」


冬休みに入ってからというもの家から滅多にでなくなってしまったため久しぶりに感じる疲労感と息切れは不快なものこの上なかった。


「はあ…」


ひとつ大きなため息をついたアキトは手元にあったケータイを手に取る。電源ボタンを押し時間を確認する。

12月31日 午後7時31分

今日は大晦日だ。



アキトは自分の名前が嫌いだった。

アキトは漢字で諒人と書く。

諒という字には思いやりや嘘をつかないという意味がある。俺は名前とは何もかも正反対な人間だった。


自分のことだけを考え、他人がどうなろうと構わない。自分に降りかかる火の粉を避けるためなら簡単に嘘をつき人のせいにもした。そうやって俺は自分で作り出した平和な世界で酔いしれていた。


しかし、嘘はいずれバレてしまうものだ。


きっかけはほんの些細なものだった。

俺はその日学校で学期末テストが返されていた。いつもテストの結果はあまり良くなかったが今回はいつもよりうまくいき少し上機嫌だった。

席に戻った時隣のヤツがこう言った。


「あれ?アキト結構いい点じゃん。お前そんなに成績よかったっけ?」


失礼なやつだと思った。言い返してやろうかと思ったが、

「へぇ…お前まさかカンニングでもしたんじゃねえか?」


と言われた。そいつはクラスの中でも素行が悪いことでで知られているやつだった。

クラス中がざわめき出した。

おいおいおい待ってくれよ…。


「俺知ってるぜ。お前、中学ん時カンニング見つかったってことをな!」


俺の祈りはどうやら通じなかったらしい。

クラスの人たちの目が声の主の方の方へ向いた。

そいつは中学の時一緒な学校に通っていたやつだった。


それをきっかけに物事は大きく動いた。先生に職員室に呼ばれもした。単なる噂話があっという間に真実へと変わった。


なんとか先生からの疑いの目は免れることが出来たが次は生徒達からの辛辣な目との戦いだった。最近の高校生はどれだけ噂話が好きなのか知らなぬ間に噂は全校中に広まっていた。

とはいっても最初っから友人と言える人がいなかったからどれだけ無視されようとも傷つきは全くしなかった。

そんな状態が数ヶ月続き今に至る。



7時30分をすぎて未だに晩飯を食べていないことに気づいた。微かな頭痛を感じたが気にせずベッドから起き上がり、眼鏡をかけハンガーにかけてあったウインドブレーカーを掴みそのまま羽織る。目指すは行きつけのコンビニだ。

部屋を出て1階に降りると妹がリビングで年末番組をみながらみかんをたべていた。


「あれ、こんな時間にどっか行くん?」


少し方言の混じった口調で話しかけてくる。どうやら夜ご飯はもう食べたようだ。


「あぁ、晩飯食べとらんけんちょっとコンビニ行って


買ってくる。なんか欲しいもんある?」

と、問いかける。


「んーええかな。いってらっしゃーい」


妹の返答を聞きながら履きなれた靴を履き俺は思い足取りで家を出た。


外は年末らしい寒さだった。息を吐く度にその息は白く染まった。天気予報によるとこっちの地方では珍しく雪が降るらしい。そうなる前にちゃちゃっと済ませやきゃな…。そう思いながら俺は少し早足でコンビニへと足を進める。


目的地への道のりはとっても単純だ。なんてったって少し歩いてから右に曲がりあとは一直線に歩き信号を左に曲がりしばらく歩くとつく。移動には15分ほどしかかからない。


これを長いと感じるか、短いと考えるかは人それぞれだと思うが俺はこれを短く感じる。

無論、迷うはずがない。迷えるはずがないのだ。


歩き始めてから体感的には7分ほどの時、ある違和感を覚えた。


「・・・あれ?」


その時改めてまじまじと辺りを見回す。どうしてまじまじと見回したかと言うと、俺の目の前には信じられない光景が広がっていたからだ。


「ここは・・・どこだ?」


情けない声が口から漏れた。

最初は自分の目がおかしくなったのかと最初は思った。だってそこは両端を暗闇が包んでいる見慣れないあぜ道だったからだ。


俺の住んでる場所は確かに田舎だ。ド田舎だ。しかし、近くにこんなあぜ道はなかったはずだ。


「何がどうなってるんだ…」


とにかく来た道を戻ろう。そう思うやいなや俺は全速力で来た道を戻って行った。


最初の不気味に思う気持ちはいつの間にか焦りと恐怖に変わっていた。


「はあ、はあ、はあ」


運動不足のせいかすぐに息切れを起こす。


「はあ、はあ、はあ」


だんだんと視界に暗い靄がかかってくる。

酸欠状態なのだろうか。頭の片隅で無意識にボーッと考える。しかしそんな余裕はない。とにかく走らなければ。


ガッ!


「あっ…」


なにか小さなものにけつまづいてしまった。そう気づいた時には既に体は前に倒れようとしていた。

ドサッ

かわいた音を立てながら俺は道に倒れ込んだ。もう視界はほとんど見えない。

「どうして…」

俺がこんなことに。そんな嘆きも虚しく俺は完全に意識を失ってしまった。




~異世界,王都グランリグス~



「・-・-・-」


何か聞こえる…。


「・-・-・--・-」


それは人の声にも耳障りなノイズにも聞こえた。


「・・・-って-・-ろ?」


少しずつ聞こえるようになってきた。


「だか・-・-を・-・-・って!」


これは誰かの会話か?


「じゃあ・-・に・-・たらいいの?」


「俺に聞かれ・-・-・-・-らいいか…」


「じゃあ、どうする?」


はっきりと言葉が聞こえるとほぼ同時に俺は完全に目が覚めた。

ガバッ!と勢いよく起き上がり、周りを見渡す。


「・・・あれ?」


間抜けな声が口から漏れた。だって目の前に広がる光景をどうしても理解出来なかったからだ。


まず目に入ったのは辺り一面の緑だった。どうやらここは川の土手らしい。近くにはこれまた綺麗に澄んだ水がさらさらと流れていた。

一見のどかなどこか癒されるような景色かもしれない。

しかし、今の俺にとってはこれは緊急事態だ。なぜならこんな場所俺は1ミリたりとも知らないからだ。しかも川の向こう岸にいる人達はアニメでしか見たことのないような中世のヨーロッパを思わせる服をきている。何がどうなって…。


「…ん?」


近くに誰かいるようなきがして改めて周りを見ると今まで気づかなかったが俺の周りには4人の子供がいた。皆、驚いた表情のまま視線をこちらに向け硬直している。


「え〜っと…君たちは?」


小さいことのコミュニケーションのとり方なんてわからない。あまり警戒されないように優しく問いかける途端今まで錆び付いていた記憶が鮮明に蘇ってきた。


そうだ、俺はついさっき知らない場所で…。


「…ッ!」


記憶を掘り起こそうとすると突然激しい頭痛に襲われ思わず頭を抱えうずくまる。


「お、お兄さん大丈夫!?」


さっきまで硬直状態だった周りの子達が名前も知らない俺のことを心配してきた。


頭痛はすぐに治まった。しかし次は得体の知れない感情が体中を覆った。


「ここはどこだ…?」


自然と口から今更過ぎる素朴な疑問が発せられた。

子供たちが顔を見合わる。


「王都グランリグス!」


元気よく言ったのは一番身長の大きないかにもワンパクそうな男の子だった。


「グランリグス?」


聞き覚えのない地名だ。外国か?そうも考えたがどう考えても日本語が通じる時点でそれはおかしい…。

ってことはまさか…


「異世界転移…させられたのか…?」


そうつぶやく。周りの子達は俺の言葉を理解出来なかったのだろう。また顔を見合わせて首を傾げた。そして、



「どこから来たの?」


小さな女の子が不思議そうな目を向けながら質問してきた。


「日本って国の雪田町…知ってる?」


子供たちは首を横に振った。



「どうしてここで寝てたの?」


次はさっき質問してきた女の子と同い年くらいのもうひとりの女の子からだ。


えーっと…話せば長くなるような…ってか、こっちが聞きたいよ…」


その返答があまりにも意外だったのか子供たちはますます不思議そうな目で見てきた。


「じゃあ、なんて名前なの?」


「名前?俺は…」



名乗ろうとした時突然、大地を揺るがすかとほどの轟音が国中に響き渡った。これは…大きな鐘の音?

地を這うような低く聞くものに恐怖心を植え付けるような重くのしかかってくる音だった。

まるで緊急速報みたいだ。


すると川の土手にいた老人が血相を変えて立ち上がった。


「た、大変だ…」


周りにいた人たちは不安そうな顔をしている。

この表情から察するに恐らくここにいる人達もこの鐘の音を聞いたことがないのだろう。


「今すぐ逃げるのだ…」


絞り出すような声で言った後老人は続けて言った。


鬼が来る━━と。









ド素人が書くこんな小説を読んでいただき本当にありがとうございます。この話にはこれから先変になったりどこかに穴が空いていたりするかもしれません。もしそうなると指摘、アドバイス等頂けると幸いです。

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