白き巫女の一生
──これはもう今となってはどれ程前か分からなくなってしまったが、昔のお話。
とある集落に突然、おぎゃあ、おぎゃあと子供の泣き声を鳴り響かせた。
一人の女の子が産まれたようだ。
周りにいた大人達は皆「おぉ!」と驚いたような顔をしている。
その女の子は周りとくらべて、全体的に白く、目は赤かった。
今となってはアルビノという病気だとはすぐに分かっただろう。
でも、その時代はまだアルビノという病気どころか、命に関わる病気のことすら分かっていなかったのだ。
だからその神秘的な白さを見て 神の子 と思ってしまうのも仕方がないと思う。
勿論この集落の人々もその少女に神を見いだしそれはもう大切に、大切に育てられた。
そしてその少女がある程度喋れるようになった頃から、神事に関することを神主達から教えられるようになる。
人々は彼女を使って神に豊作をお願いし、飢饉に陥らないようにと考えたのだ。
少女は嫌な顔ひとつせず、舞いや、祝詞などを、どんどんと覚えていった。
そして徐々に仕事を任されるようになっていく。
時期が良かったのか、少女が神事を行った後は豊作が続きその集落の暮らしは裕福になっていった。
──しかし豊作が続くと、不作も続くのがこの世の理。
その集落もその理に沿って不作が続き飢饉に陥いる。
豊作が続いた後に不作が続くと裕福だった頃のことが忘れられず、人々は体力的にも精神的にも追い詰められていく。
そのストレスを何処に向かわせるかといったら勿論、白き巫女と呼ばれるようになっていたあの少女である。
少女にお供え物し、プレッシャーをかけながら神事を増やしていく。
そのお供え物のお陰で少女は飢えることは無かった。
──しかし、アルビノという病気は日光に弱いのだ。
朝夜なぞ関係なく行う神事により少女は、みるみるうちに衰退していった。
それでも不作は続き集落は今までの活気は無くなり、ただただ毎日を少女の儀式に託すだけの生活になっていく。
毎日、体力を削られながら儀式を行う少女だが、それでも少女は笑うことをやめず一人周りに無理矢理でも笑顔を振り撒いた。
──しかし、それによく思わない人たちもいるわけで。
ある日。
この集落にとって命よりも大切な食料が盗まれたのが分かった。
──勿論、盗んだのは空腹に耐えられなかった村人なのだが。
村人達が疑心暗鬼に誰がとったと疑いあっているなか、突然その食料を盗んだ村人が言った。
「あの食料を盗んだのは白き巫女だ! ──それだけじゃない! 不作が続いているのも、病気が流行っているのも全部、白き巫女のせいだ! そう! あいつは悪魔だ……悪鬼なんだッ!」
ふつうだったらこんなこと信じる人なぞ居ないだろう。
──しかしその時は皆ふつうの精神状態じゃ無かった。
当然だろう。
何年も飢饉が続きふつうでいられる人なんていない。
だから──
「ほ、本当なのか?」
「確かにおかしいと思っていた……」
「そうだ。こんな状況なのに一人だけにこにこしていたもんな……」
こうなってしまったら後は誰も止められない。
トントン拍子に白き巫女は森の奥に監禁されてしまった。
苦しい。
なんで?
みんなの為に私、ここまで……
みんなの事信じてたのに……
嫌だ!
憎い。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
絶対に許さない──。
そうして少女は集落を憎みながら餓死したのだった。
少女は強い恨みを抱きながらそこになっていた。
自分が何者だったのか全く分からない。
ただ今いる集落の恨みだけが溢れんばかりにある。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い────ッッ!
少女は気持ちの赴くまま食糧庫を睨み付ける。
──ゴウッと酸素を巻き込む音が聞こえたかと思うと、青い火柱が天にも届くのではないかというほどに舞い上がった。
しかし、まだ足りない。
復讐の欲望は少女の、内からどんどん溢れ出てくる。
少女はその欲望に従い、手当たり次第に物を補やしていく。
まだ足りない。まだ足りない──。
そのようすを見た村人達は白き巫女の祟りだと喚き、隣の集落へ全員にげてしまった。
──少女の怒りは鎮まらない。
そうして誰もいなくなってしまった集落の中をさ迷い続けるのだ。
またここに人々が愚かに戻ってくることを願いながら────