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オニになる  作者: 明神啓太
9/9

最後の真実

 気づけば、窓の外には夕闇が広がっていた。


  「そろそろ、時間か」


 そう言葉に出したのは、太一と僕、どちらだったか。


「長々と悪かったな」


 太一が頭を下げる。


「気にしなくていいよ」


「もう分かっているかもしれないが……」


「ああ、いいよ。頭を上げてくれ」


 そう言っても太一の頭はどんどん下がり続け、ついには土下座の姿勢になってしまう。


「すまない。本当にすまない。俺は、俺はお前を……」


 泣きながら畳に頭をこすりつける太一をそのままにして、僕は帰途についた。許す、と言ってやればよかったのか。それとも、恨み言を言えばよかったのか。それが分からなかったからだ。


 でも、分かったことがひとつだけある。太一は、とてつもなくいい奴だということだ。


 なあ太一、時には割り切りも必要なんだぜ。お前だって最初からそのつもりだったんだろう?



 帰り着いた僕は、すぐに荷物をまとめ始めた。


 そうそう、今朝、僕の机の中に入っていた手紙、いや、怪文書といったほうがいいのかな? こんな文章が書かれていたよ。


『俺がオニだ 次はお前だ』


 そして、校門前で太一が僕の背中を叩いて言った言葉。よく聞き取れなかったけれど、僕は完全に再生することが出来る。


「つ か ま え た」





 大事なものだけ入れたバッグを抱え、家を出る。この家とこの家族、けっこう気に入っていたのにな。ちょっと残念だ。


 そろそろ、時間だ。


 僕はもうすぐ、太一(オニ)になる。


 この先、どうしたらいいのだろう?



 ーーーそんなもの、決まっている。僕の身体を探しに行くのだ。半年前に奪われた、僕の身体。


「オニだった者を、オニにすることはできない。一度オニになった人間は、永遠に元の身体に戻ることは出来ないのさ」


 太一はそう言った。確かに、直前にオニだった者にタッチすることは出来ない。それが可能になれば、鬼ごっこが終わってしまうから。


 でも、本当に、永遠に元の身体に戻ることは不可能なのか?


 僕の身体を奪ったのは、さっきまで一緒にいた太一ではない。彼が奪ったのは、啓太。僕が第二の人生に選んだ器に過ぎない。


 見つけてやる、絶対に。

 僕の身体を奪ったアイツを。


 捕まるはずがないと思っていた相手に捕まったら、アイツはどんな顔をするだろうな。『僕』の顔が恐怖に歪むのを想像すると、おかしくなる。


 太一は、本当にいい奴だ。

 アイツは僕に、チャンスをくれた。


 頭をボリボリかきながら、僕はニヤニヤ笑った。






 ーーーこうして最後の七不思議、『終わらない鬼ごっこ』は続いていく。


 態度が急変した恋人に、突然別れを告げられたことはありませんか?


 信じていた友だちに、あり得ない裏切りをされたことはないですか?


 あなたの隣にいる人は、本当に昨日と同一人物なのでしょうか?


 ひょっとすると、もしかして……。

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 態度が急変した恋人に、突然別れを告げられたことはありませんか?  信じていた友だちに、あり得ない裏切りをされたことはないですか?  あなたの隣にいる人は、本当に昨日と同一人物なのでしょうか?  ひょっとすると、もしかして……。 夏のホラー2015参加作品です。暑過ぎる夏、少しでも涼しくなってもらえたら。
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