[結果論]
「…」
ふと俺は明後日の方向を向いた。
「どうしたの?絢斗」
敦史隊リーダーの大学生の彩瀬 敦史が俺を振り替えって、聞いた。
「…いや、真綾に何かあったかと」
何となく引っ掛かった。
傷付いた…?気を使った…?
泣きはしないだろうが…、大丈夫か…?
「何それテレパシー?」
中学生の和泉 奈美が、同じく中学生の清水 優の腕に絡まりながら言った。
テレパシー………なのか?
気配と言うか、………能力の一種か?
まあ、正直それはどっちでも良いんだが。
「愛のなせる技ですね。」
優はこうして恥ずかしげもなく大真面目にそう言う。
愛とか………小っ恥ずかしいだろうよ。
違うのか?と聞かれたら、否定するが………。
「じゃあ心配だろうし、そろそろ集まろうか。」
敦史さんの言葉に俺は軽く頷いた。
悪魔も倒し終わって目的は達したのだから、この場で解散しても良いのだが最年長の大学生があのメンバーでは、ないだろう。
あの人達はチームワーク、協調性を好む。
といっても3人の中の一人は勉強が忙しすぎて出てきていないが。
それは仕方がないだろう。
何と言っても、あともう一人は柊家の長女なのだ。
…志の名は持っていないがな。
一般人から見た長女であることに変わりはない。
少し歩くと、俺たち以外の全員が集まっていた。
「真綾、遙華。
………?」
やっぱり何かあったのか?
心平さんの様子が変だ。
「何があった?」
俺は何かあった前提で真綾に聞いた。
真綾はこっちから聞かないと話さない。
嘘を吐いたことはないんだが…、こっちから聞かないと何も話さないからな…。
ああ。いや、遙華に関する話は例外だな。
「大したことは何もない。」
…例外は結構あったんだったな。
大方、心平さんが間違えて攻撃しかけた~とか、そんな所だろう。
それで真綾は庇ったわけだ。
本人にそのつもりはないんだろうが。
「俺が…、真綾に攻撃したんだ…!
本当にすまない…!」
心平さんは平謝りした。
誰よりも協調性を好んでるのは、この人だからな。
敦史さんは正直、どっちでも良い人だと思う。
俺もどっちでもいい。
「まあ、そういうこともあるでしょう。
真綾が責めてないなら、それまでです。」
俺に心平さんを責めるつもりはない。
無論、それで真綾が怪我をしているのなら、俺だって殴ってやりたくなるが。
それも俺がすることではないだろう。
…ケースバイケース、だ。
殴ってしまうこともあるかもしれない。
「…だが……」
「何度も言っているが、気にするほどの事じゃない。」
「………」
正直、こういうのは面倒くさい。
心平さんが真綾を傷つけたんなら、目には目を歯には歯をで傷つけ返せば終わる話だが、結果心平さんは何もしていない。
「なら、その分、遙華を助けてくれれば良い。」
真綾の世界は遙華を中心に廻っている。
常に視界の先には遙華。
考えの先には遙華。
行動の先には遙華。
愛の先には遙華。
といっても。
世界のすべてが遙華って訳でもない。
自分と遙華の両親も惑星に入ってるし
俺も多分その辺の衛星の中に入ってる。他の能力者の奴も。一般人も。その辺の犬っころも。猫もな。
ただ、太陽である遙華が若干でか過ぎるだけで真綾は案外普通だ。
普通に傷つくし戸惑うし困る。
だから、心平さんみたいに自分のせいで、心平さん自身を責める人には、相当戸惑うだろう。
自分が傷つくより、相手に傷つかれる方がずっと困る。
真綾はそういう奴だ。
「…ああ。」
心平さんも何となく納得してくれたらしい。
どうせこの場限りの自己満足なんだから、そのくらいが丁度良いだろう。
…何か、口悪かったか?
事実だしなぁ。
「っていうか、心平先輩は気にしすぎだよね~
真綾先輩が良いって言ってるんだから、それで終りじゃん。」
呆気からんと奈美が言った。
正直俺もそう思う。
許すっていってるのに、いや!俺の気がすまない!とか言ってるやつ、迷惑でしかない。
ただのドMだろ。
もっと楽に考えろよ。
ゆるしてくれんの?え?マジで?ラッキー。で良いだろうが。
「そう言うわけにはいかないでしょう」
「ああ。キチンとケジメはつけるべきだと思います。」
真面目二人はまた話をややこしくする…。
人生、柔軟性が大事っつぅだろ?
がんじ絡みに考えすぎなんだよ、お前ら二人はさぁ。
「正直どうでも良いから帰りません?」
海翔。全面的に同意だ。激しく同意のハゲドーだ。
家に帰って寝たい。
何もしたくない。
帰りたい。
眠い。
それに煩く反抗したのは柊家の末娘、志の名を持つ志保だ。
「どうでも良い?!?!!
怪我したらどうするのよ!!!」
すんごい怒ってる。
あれか?ツンデレか?
いつも真綾に突っ掛かって来る割に、何その心配の仕様は。
若干、真綾に似てきてね?
「いや、だから、してないっしょ?」
「そうだけど!心配じゃないの?!!」
志保の言葉に、海翔が珍しく不機嫌になったようだ。
「騒ぎ立てることで何が変わるんすか?
すべては結果論ってアンタが言ってる事っすよ?」
確かにそう思うが。
いつも何だかんだ言っても、海翔は志保をフォローしてやるのにな。
それだけ、海翔にとっても真綾が大切ってことか。
「…!!」
ぐうの音も出なくなった志保は歯を食い縛った。
そんな志保に海翔はしまった。という感じになった。
「すみません。言い過ぎました。
帰りましょう?」
申し訳なさそうにそう言った海翔に、志保は黙って頷き、俺たちに向かって頭を下げて帰っていった。
「まあ、そういうことで。」
あやふやなままに俺たちも解散することにした。