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魔王の娘  作者: 瑞希
家族
10/16

[白銀と黒藍の交差]

ビリビリビリビリ!!!!!!!!


全身に、何とも言えぬ衝撃が走った。


「ま…やさ…………?」

「ごめん。ごめん綱紀。

 やっぱムリだ…!!!」

私は綱紀の手を意図も容易く振りほどいて、窓から飛び降りた。


「まーやさ?!!?!」

部屋の中から綱紀の声が聞こえたが、私はそれも無視して足から闇を放出しながら遙華の元へ向かった。


やっぱりムリだ。無理なんだ。

私にとって遙華は唯一無二の存在。

何を置いても一番大切な存在だ。

遙華を失うくらいなら、私は下にいる市民も綱紀も絢斗だって見棄てられる。

この手で殺すことだってできる…!!!!

例えこの身、この心、この魂。

私のすべてが引き千切られようと…!


私は…遙華のことを……!!!!!!!



それは執着以外の何ものでもない。

狂っていると思う奴すら居るだろう


だが私にとっては、それほど思える相手の居ない奴の方が、良く生きていられるな。と思う。

少なくとも私は遙華なしでは生きられない。

どこまでも優しく

純粋で

愛らしい


だからこそ

「ブチ殺す」

遙華に傷をつけた、その汚物をこの世に残しておくなど出来はしない。


遙華は肩を押さえて、絢斗を庇うように前に立っている。

その庇われている絢斗は、コンクリートに打ち付けられ、生きているのかすら解らない。


それは絢斗が守れないほどの脅威と言うことだ。


「輝夜様からの招待状です。

 我らが魔王がご令嬢…真綾」

汚物は喋った。


ドォォォォォォオオオン!!!!!!!!


闇が私の全身から溢れ、地面を響かせた。

「―闇よ、壊せ―」

闇は私の意のままに地面から溢れだし、龍のようにその汚物へ襲い掛かった。


「闇……なんだ…」

闇の向こうから汚物の声が聞こえ、私は足を強く踏んだ。

その足元から更に闇が溢れだし、汚物を飲み込んだ。


その行為を何度も何度も繰り返した。

死ね…死ね……死ね…死ね!!!死ねシネ死ね死ねシネシネシネ死ね!!!!

死ねぇぇえええええ!!!!!!!!!!!!


「真綾!!!!」

後ろから初撃が加わった。


ガッと後ろを睨みつけると、そこに居たのは遙華だった。

私が睨んだことで遙華は怯えた顔をして震えた。震えながらも、私を離すことはなかった。


「…はるか………?」

「もう、もういいよ。

 帰ろ?ね?」

怯えながら、震えながら、涙目になりながらも、そう言う遙華に、私は攻撃するのをやめた。


「……すまなかった…。」

そう言いながら、私は怖くないようにとかしずいた。


「痛くないか…?」

「う―」


………………緋い?


遙華の全身から血が流れ出した。

遙華はふっと意識を無くし、私の方へ倒れた。


「遙…華………?」

遙華はピクリとも動かない。

ただただ緋い血を流して………


「遙華。遙華、遙華…?遙華はるか。ハルカハルカ、遙華!!!!はるか……?ハル―」


その背後では銀色の存在が、ただそれらを見つめていた。

それ以上何も手を加えず

何を発せず

何の感情も含まぬ顔で

その場から去った。












………………目の前には、世界で一番愛しい二人が傷ついて居た。


気を失っているのだろうか。

全身傷だらけの遙華を真綾が何度も必死に呼んでいた。

だがその真綾自身の体も傷だらけで遙華以上におびただしい量の血が流れている。 

それなのに、真綾は自分がそうなっているのに気付いてすらいないのか、絶え間なく遙華を呼び続ける。


あの悪魔は消えていた。

助かったのだ。

……いや、生殺しか。悪魔らしい。

俺たちを意図も容易く殺しかけた…。

あれは、間違いなく上級。

それもおそらく最上の熾悪魔。


「ハルー」

真綾の意識が遂に途切れた。

時間がない。

一刻も早く二人を病院へ…、いや、大事おおごとになってしまう。

他に治療が出来る場所…。

ひいらぎ家だ。

だが、携帯は粉々になっている。

誰も呼ぶ事は出来ない。


…根性見せろよ、俺。


「ッ…」

息も出来ぬほど痛む体を、無理矢理 動かし、俺は立ち上がり、二人の元へ歩いた。


こんな満身創痍の状況で…、人を。

それも、二人も持ち上げる事なんか出来るのか?

自分の体すら…。


いや、俺の悪い癖だ。

考えたってこの状況は変わらない。


俺は歯を食いしばって二人を担いだ。

両肩にずっしりと体重が掛かる。

もう痛いのかすら、わからない。


…ダイエットしとけよ。俺が潰れちまうだろーが。


心の中で悪態を吐きながら俺は足を踏み出した。




………………どれくらい歩いたか、意識も朦朧もうろうとしていたが、それでも、とにかく前へ前へ足を動かし続けた。


「絢斗くん!?」


誰かに名を呼ばれ、意識が少しだけハッキリした。

誰…誰だ………?

いや……誰だって良い…

二人が危ないんだ。

早く、治療してやらないと。

俺が情けないばっかりに、二人を守れなくて……。

俺に、俺にもっと力があったら。

俺が悪いんだ、真綾は…真綾は何も悪くない。

真綾は悪やつなんかじゃないんだ。

悪魔なんかじゃない…!

解ってくれ…………………。


………


……



「ん…」

「絢斗さん…!

 良かったぁ………。」

あれ…。

志保?


ひいらぎ 志保しほ

柊家の孫娘で、俺達の後輩だ。


…なんで志保がここに?

つか、なんで俺、寝てんだ?

二人が怪我して…。


「そうだ!志保、二人は!

 っ…く……」

起き上った途端全身に痛みが走った。

あまりの痛みに、息が詰まった。

体中…とくに思いっきり壁に投げつけられた背中が痛む。

だが、そこまでではない。

たぶん志保が治療してくれたんだろう…


「絢斗さん!眠ってください。

 二人は平気ですから。」

志保の言葉に俺はとりあえず、安堵した。


「隆霸…………さ……んが、絢斗さん達をここまで運んだんです。」

志保の言葉に俺は苦笑しながらも納得して、少し冷静になった。

あの時会ったのは、隆覇さん。

柊家と肩を並べるからさお家の当主である、枷 隆霸さんだったんだろう。

会ったのが隆霸さんで良かった。

他の能力者であっても、混乱させるだけだろうし、隆霸さんで、本当に良かったと思う。


「それで……一体何が…?」

俺の体はそうとう酷いらしい。

いつもはおちゃらけの志保の顔には、恐怖が浮かんでいる。

その恐怖はまだ見ぬ敵に贈られたものではなく、俺の体に贈られたものだった。

本当に、情けないな。


こんな子供にまで不安を与えちまうなんて。


「…上級悪魔だ。

 多分、綱紀を襲った奴と同じ」

「上級…!」

志保は信じられない。

信じたくないという風に手で口を覆った。

能力者レジティーマのトップに立つ柊家にしてみれば、上級悪魔が出たのは忌々しき事態だろう。

…いや、違うな。

志保はこれから起こるかもしれない…、争いに、人が傷つく姿に。

恐怖を抱いているんだろう。


「悪魔は、倒したんですか…?」

「…いや、俺が気がついた時には居なくなってた。」

実際は少し違う。

俺は悪魔が居なくなた理由は解っていた。


「そうでしたか…。

 悪魔は一体なぜ…」

「解らん」

これも、嘘だ。

目的も解っている。

だが、それを能力者レジティーマに教える事は出来ない。

例えそれが、後輩である志保でもだ。


「それより、二人はどこに」

話を逸らしたかった、というのもあるが。

俺は一刻も早く、二人の無事を確かめたい。

二人が生きている事をこの目で確認したかった。


「今は、治療中で」

「入っちゃいかんのか」

体中がズキズキする。

その痛みが、これは現実なのだと思い知らすと同時に、夢へ誘おうとする。

子供じゃないんだ。

寝てる場合じゃない。


「こちらへ」

志保は俺に手を差し伸べたが、俺は緩く首を振って自分で立ち上がった。

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