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  作者: 影司るは涼の名
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第一話 旅する者

  旅。それは道を造りしもの。旅。それは果て無きもの。旅。それは思い(つら)なるもの。旅。それは・・・。



 古木で作られた屋根の下、一人休む人がいた。髪は黒く、天然のせいかいろいろな方向に飛んでいる。目はタレ目で細く、死んだような目とも言われていた。周りで遊ぶ子供たちをよそに、休む人は深くため息をついた。壁に背をもたれていると、屋根のついた家の主人なのか休む人に話しかけてきた。戸も開けずに。

「そこの旅のお方。そこで休まれていると迷惑になりますので・・・」

「周りで遊ぶ子供は迷惑ではないのか」

「えぇ」

「ふっ・・・」

 「その人」は屋根の下でもう一度かすかに笑うと、その背を壁から離すと(そば)に置いていたおかしな形の荷物を持ち上げる。その後、子供が遊ぶ中を横切ってその場所を後にした。

 空は灰色と青色の生み出す不思議な色となっていた。風が吹かない町の中を屋根で休んでいた人が歩く。周りの人が目に止めるのは、「その人」の右手に持ったおかしな形の荷物。人々は「その人」を薬屋、密売人、泥棒などと噂した。もちろん、彼はそのどれでもなかった。

 しだいに、周りの噂話が耳に入るほどの静けさになってきたのかもしれない。

「・・・先代の人の(たた)りかも・・・」

「・・・急病か流行り(びょう)じゃないかしら、でも・・・」

 空が完全に灰色と化した今、噂話は「その人」の話ではなかった。「その人」が歩いていくほど、噂話に共通点が見え始め全てにおいて「先代」と「病」の言葉が出てくる。目に映る道に注意すると、だんだんと道が細くなる。ふと、「その人」は周りに目をやった。一本道を挟むように並ぶ店は、初めに休んでいた古木で作られた屋根とは比べ物にならない屋根だった。

 家の全てが銀でできているような家、派手(はで)な看板。どれもこれも目に留まらなければ視力のおかしさを注意できるほどのものだった。それでも「その人」は歩き続けた。

 馬と家臣ぐらいしか通れないほどの道になったとき、目の前に城が見えた。大きな城でもう少し遠くから見えてもいいくらいだった。彼だけがそう思ったのかもしれない。


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