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入院

私の怪我の具合はと申しますと、

骨盤と大腿骨に軽くひびが入っておりまして、

全治3カ月近くかかるらしいのです。

退院はもっと早くできるかもしれませんが。

しかしベットで終日安静にしているとは、

なんて退屈なのでしょう。

お家での生活と大差はないかもしれませんが、

半強制なのが気に入りません。

テレビに向かっての愚痴も多くなるに決まっております。


しばらくしてお隣の病室のお方から

「うるさい」とのお言葉を頂きましたので、

声量を抑えめにしましたところ、

どうやらお隣様のしゃくにお触れしたらしく、

婦長さんが出動なさる騒ぎになりました。

病院のテレビはカード式になっておりまして、

専用のカードが無ければ見れないのですけど、

婦長さんはテレビをお持ちになっていかれました。

どうやら婦長さんのしゃくにもお触れしたみたいです。


私は昔からというもの、

人様のしゃくというものにお触れする才能がございます。


中学時代の時、

仏の三沢先生のそれにもお触れした経験がございます。

ご想像の通り何をしてもお怒りにならない先生でございます。

一部の生徒さんから絶大なる人気をほこってらっしゃいました。

中学3年生の時に、

英語の担当が仏の三沢先生になり、

私はそれまで全く接点がございませんでしたので、

胸を高鳴らせておりました。

そして初回の授業の時、

仏様が私をお指しになられました。

ちょうどタイミングが悪く、

私は昨晩のテレビの内容で思い出し笑いを

しそうになっていたところにきてしまったのです。

私は頬の内側を噛みながら

英文を読んだのですが、

突然仏様がおキレになられました。

私は泣きながら怒る人様というものを

初めて拝見したので、

思い出し笑いの相乗効果もあり、

初めて笑い泣きというものを体験致しました。

過呼吸になるほどでしたから、

仏様が何をおっしゃっていたかは記憶にございません。


謎の腹痛で3日学校を休んでから

登校した時には、仏様は退職なさっておりました。

私は何故辞めてしまったのかわからずにいましたら、

一人の男子が私に声をかけてきました。

「屋上で話がある」とのことでした。

私は胸を高鳴らせながら向かいますと、

気合いの入った方々が大勢いらっしゃいました。

「財布がいなくなったから金を出せ」と言いましたので、

少々日本語がおかしいなと思いながら、

惜しげもなくお出ししました。

私のお実家は少々お金に関しては困らない家系でございますので、

困ってる人がいるならば差し上げるのが最善でございます。

気合いの入った方々は「サンキュー、ウォレット」

というと去っていってしまいました。

あだ名を頂いたのは喜ばしいことですが、

乙女心は満足しなかったのは今でも記憶にございます。


その当時はあだ名の意味はわからずにいたのですが、

今となっては点と点が線になりました。

気合いの入った方々からは財布。

それを目撃していた生徒からは仏。

私はウォレット。

憶測ですけれども、仏様は何か弱みでも握られていらっしゃって、

たまたま私が頬の内側を読んだ英文が、

弱み自体を示す英語へと変換して聞こえてしまったんではないのでしょうか。

もうどうでもいいのだけれど、

あの時の仏様のお顔は何度思い出してもツボにはまってしまいます。




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