rain1-5 毛布
このキャンプ場はこの辺りだと有名らしい。
なにが有名かというと、星の綺麗さ。
この辺りは空気が乾燥しているため、夜の空はとても澄んでいて星の輝きがとても綺麗だそうだ。この辺りで一番の夜景ポイントといっても過言ではない。
幸い今日の天気は晴れ。
そのおかげで、この暗い天体には満天の星が映し出されてした。
都会では見ることが出来ない星の数。
遥か遠くから届いているこの光りは、まるでダイヤを散りばめたかのように輝いていた。
みんなはアルコールも入っていて、盛り上がっている。
宴のようなノリだ。騒いで騒いで、歌って踊って、酔いつぶれて次第にみんな寝ていく。
気が付くと、僕と恵美の2人だけが起きていた。
恵美はみんなに毛布を掛けて回っていた。相変わらず気が利く子だなと思いながら僕はその光景を見ていた。毛布を掛け終わると、恵美が一枚の毛布を持って僕に近づいて来た。
「はい」
恵美はそう言って僕に毛布を差し出す。
季節はまだ三月、キャンプをするにはまだまだ肌寒い時期。
朝晩の冷え込みはまだ寒さを体に植えつけている。
毛布なしでは身震いしてしまう。
僕は、恵美から毛布を受け取るとあることに気がついた。
「あれ?恵美の分は?」
恵美が持ってきたのは一枚だけ、僕がこの毛布を受け取ると恵美の分がなくなってしまう。
「あ〜、あたしの分はね・・・」
恵美はそう言うと、僕の持ってる毛布を指差した。
僕はそのときに感づいた。恵美がどうしようと言っているのか。
「あ、じゃあ・・・、は、入る?」
僕は聞いたが、答えは分かっていた。
恵美は何も言わずにうなづき僕のすぐ隣に座った。
恵美も僕も体育座りをしていて、恵美の二の腕が僕の二の腕に当たる。
その部分に神経が集中して、すこし体が硬くなっていた。
僕は恵美と一枚の毛布を共有していた。
一つの毛布の中に僕と恵美。
後ろを振り返ればみんながいる。けど・・・。
前を向けば、横には恵美がいて。2人きりの世界だ。
しばらく沈黙が続いた。僕も恵美もなにも話さなかったが恵美の体温は、
二の腕から感じ取ることが出来る。
気が付くと恵美の視線は空に向いていた。
そして、恵美の口が開いた。




