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rain1-2 笑顔

僕達は学校の帰り道を歩いていた。

この時は恵美と2人きりになれる貴重な時間。

とはいっても駅から降りて途中の別れ道までのほんのわずかな時間だが。

僕にとってはこれほどうれしいことはない。

なにしろ好きな子と2人で一緒に歩いているんだ。

まるでプチデートみたいだと思う。

僕と恵美は途中の十字路で別れを告げる。また明日もこの十字路で出会う。

毎日それの繰り返しだ。

「じゃあね、おつかれ」

恵美はいつもの素敵な笑顔で別れを告げた。

「うん、おつかれ」

僕も負けずと笑顔で返すが、恵美の笑顔にはとてもかなわない。

恵美の笑顔には汚れがない。純粋でやさしい笑顔を持っている。近所でも評判なくらい人なつっこく子供も好きだから、近所の子供と遊んでるところをたまに見る。

だからなのか、恵美の笑顔に無邪気さが残っているのは。


恵美には母親はいない。まだ恵美が小さい頃に病気で亡くなったらしい。

いまは、父親と2人暮らしだ。

恵美の父親も恵美を養うために、大学に行かせるために必死に仕事をしてきて今は体調があまりよくなく、仕事も休みがちらしい。

だから父親の面倒は恵美が見ている。


だから恵美は母親のような役割を得ているのだろう。

だから、面倒見がよく、人の気持ちもよく分かり、聞き上手なのだろう。


僕はときどき思う。普通の人よりすごく苦労しているはずなのに、どうしてこんな笑顔でいられるんだろうと。



でも僕は、たぶん分かってる。

明るく振舞う君の奥には寂しさがいることを。


それを必死に隠すために笑顔でいるんだということを。


僕は、寝床に就くときはいつも恵美のことを考える。

今日話したこと、明日話したいこと。

今日笑ったこと、明日笑いたいこと。

恵美ことを思い出すと自然に笑みがこぼれる。


でも1人で笑ってると変な人に見られるかもしれないな。だれもいないけど。

そんなことを思っていると、いつの間にか眠っているのだ。


幸せを感じながら。



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