rain2-5:誕生日
あたしは、聡の後をなにも言わずについていく。
「どうした?元気ないな?」
「そんなことないよ、まだ少し調子が悪いだけ」
「大丈夫か?今日も休んだほうがいいんじゃないか?」
休みたい…。本気でそう思った。なんか聡が無神経に見えてきた。あたしのことをもっとちゃんと分かってくれていると思っていたのに。
あたしがそう思っていると、聡は大学への道とは違うほうへとあるいていく。
「え?どこにいくの?」
「いいから、ついてこいよ」
あたしは聡についていくべきか悩んだが、なにかを期待していたのか、聡についていった。
聡にしばらくついていくと、そこは海だった。
あたし達の大学の近くには海がある。何度も遊びに来たことがある海だ。
予想外の場所にきたことに驚いたあたしは聡に聞いてみた。
「聡?どうして海に?」
聡はこっちを見て笑いながら言った。
「いいから!」
そう言うと、あたしの後ろに回り両手であたしの目を覆い隠す。そのまま聡に促されまっすぐ歩いていく。しばらく歩くと停まった。
「恵美……。おめでとう!」
そう言った聡はあたしの目を覆い隠していた手をどけた。その瞬間あたしの目には大海原が見えた。でも、それよりも、遥かに感動するものが見えた。
そこには、砂浜の砂で形作られた”恵美☆誕生日おめでとう☆”の文字とケーキに見立てた大きなものがあった。
「ごめんな恵美、ずっとこれを作っていたから最近あまり一緒にいなかったよな。どうしても今日の恵美の誕生日こういう形で祝いたくて、ほんとうにおめでとう」
あたしは、嬉しくてそして聡を信頼できなかった自分が恥ずかしくて、ただ泣くしかなかった。
そして、あたしは決めた聡を絶対に信用することを。