rain2-1:お父さん
あたしには、母親がいない。
あたしがまだ物心つく前に病気で亡くなったらしい。
だから、あたしは母親をまったく知らない。
写真では見たことがあるけれど、母親のぬくもりはまったく知らずに育った。
その代わりといってはなんだが、父親の愛を受けて育った。
お父さんは、あたしを育てるために、昼も夜も仕事に行き、帰ってきたら疲れて寝るだけ、次の日も朝早くから仕事にいく。
そのお父さんの頑張りのおかげであたしは大学にも行くことができた。
だから、あたしはその分家事を頑張った。
お父さんが仕事を終えて帰ってきたときに気持ちよく寝れるように、布団も綺麗にしておく、毎日部屋の掃除も欠かせない。
中学の時から、あたしがお父さんの分も食べ物を作ってきた。
たまの休みの時にも作ってあげるとおいしいと言ってくれる。
あたしは、お父さんはすごい人だと思う。
あたしのためにこんなに頑張ってくれて、あたしはそれを理解していた。
だから・・・。
あたしは、お父さんに甘えたことなんか一度もなかった。弱音を吐いたことも、文句をいったり、怒ったりしたこともなく、ただただ笑顔で接してきた。
でも本当は・・・。
あたしは、その気持ちを知られないように、必死に笑顔でいた。
自分で自分に言い聞かせて、甘えたり、怒ったり、文句を言わないように、いつも笑顔でいることを自分に望んだ。
だから・・・。
あたしがほんとうは寂しがっているなんてお父さんは気がついていなかったんじゃないかな?
学校でなにかあって泣きたいとき、うれしいことがあったとき、自慢したいことがあったとき、見てほしいものがあったとき、あたしは全部1人で・・・。
運動会や、授業参観にもお父さんは来たことがなかった。
遊園地や動物園にもお父さんといったことなんかなかった。
それでも、必死にあたしのために働いているお父さんがかっこよく見えた。
だから、あたしは強くなろうって決めた。
どんなことがあっても、どんなに寂しくても必ず笑顔でいるって。
それがお父さんにあたしの出来る最高の恩返しだと思うから・・・。
そして、あたしは聡に出会った。
かなり長くあいてしまいすいません。