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異世界ヒッピーは異種族バンドで世界を救う  作者: 不破久太郎


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3/5

〚2〛Let's Spend The Night Together

楽屋で少し頭を冷やした後、ケンジは帰路についた。


夜の街は雨でも降っていたのだろうか、ネオンが滲み、濡れたアスファルトを照らしている。


雨上がりのアスファルトの匂いは嫌いじゃない。


けれども、今はその匂いがなんだかすごく寂しくて嫌だった。


「クソっ!」


意味もなくそんな言葉が口をつく。


交差点で信号が青に変わるのを待っている間に、タバコタバコとポケットをまさぐっていると、反対側の歩道から小学生低学年くらいの男の子が横断歩道に向かって走ってくるのが見えた。


「塾帰りか?こんな時間に1人で...」


左側からは黄色に点滅した信号に焦って加速をしたトラックがやって来る。


男の子はまるで止まる気配はなく横断歩道に走っていく。


トラックは小さな男の子に気付いている様子はない。


「おいばか!赤だぞ!」


気がつくとケンジはギターを投げ捨て、男の子に向かって無我夢中で走っていた。


トラックが迫っている事に気づいた男の子はただ呆然と立ち尽くしている。


「間に合え!」


野球で言うところのヘッドスライディングのようにケンジは跳び男の子に手を延ばす。


ようやくケンジを認識したトラックが急ブレーキを踏む。


周囲の悲鳴と激しいブレーキ音が混じり合って耳を抜けていく。


トラックとの距離およそ数十cm、ケンジの延ばした指先は男の子に触れ、なんとか歩道の方へと突き飛ばすことができた。


「よし!」


思ったのもつかの間、ドンッという鈍い衝撃音と共にケンジの身体は宙に浮き、それから地面に叩きつけられた。


回りの雑音がボリュームをゆっくり絞るように段々と小さくなっていき、目の前も霞んでくる。


霞んだ視界の隅から男の子の声が聞こえる。


「おじさん!どうして僕を助けたの!?僕は死なないのに!」


薄れ行く意識の中でケンジは考える。


おいおい少年、まずはありがとうごめんなさいだろ?ノエルだって多分言えるぞ?挙句に死なないとか、あれはどう考えても俺がいなけりゃ死んでただろ?まったく。


...どうして助けたの、か。

...どうしてってそりゃお前...


ケンジは大きく右手を挙げて空に向かってピースマークを作る。


「ラブ&ピースだろ」


雑音は完全に消え、目の前が真っ白になった。

ノエル:ノエル・ギャラガー。90年代イギリスで結成されたオアシスというバンドのギタリスト(曲によってはボーカル)。メインボーカルのリアム・ギャラガーとは兄弟で、2人の仲の悪さは世界的に有名。僕はいつかほんとに殺し合いが起こるんじゃないかと心配している。自由奔放な性格で、誰彼かまわず噛みつきまくる。ちなみに、バンドよりも家族よりもサッカークラブのマンチェスター・シティの方が大事。たぶん。

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