第7話 実行
《期限まで残り1日__ 》
死刑者の働く交番近くのパーキングに止まっている黒い車。車内には咲夜・千世霞・郁哉ともう1人。
後部座席でタブレットを眺める3人。
咲夜「昨日の午前10時から勤務してて、今日の午前10時上がり。」
郁哉「みたいだな。それで、午前2時30分から午前6時30分までは1人か。」
千世霞「あれ?でもさ、交番って2人なんじゃないの、?」
「「…」」
呆れた顔で千世霞をみる咲夜と郁哉。
《クスッ》と微笑ましく笑う渡瀬。
《渡瀬 隆介 暗殺者補佐 兼 教師》
渡瀬「そうだね。交番はペアで動くのが基本だよ。でも、24時間寝ないって言うのはやっぱり難しいからね。それぞれ交代で仮眠をとるんだよ。」
千世霞「そうなんですね…。何も知らなくてすみません…」
郁哉「ほんとにな、」
郁哉に言われ、いたたまれない表情をする千世霞。
咲夜「交番って面倒くさ…」
吐き捨てるように言う咲夜。
咲夜「よっぽど警視庁とかの方が楽だね、」
郁哉「それは同感。」
千世霞「え、えぇ…」
千世霞「(やっぱり話の次元が違う…)」
咲夜「それに、千世霞。」
千世霞「…?」
タブレットを見下ろしながら千世霞を呼ぶ。
そんな咲夜の横顔を覗き見る千世霞。
咲夜「千世霞には、交番勤務の不法人を殺す方が辛いかもね。」
郁哉「だな、」
千世霞「…、?」
《午前3時42分__ 》
郁哉「交代まであと3時間ぐらいだな、」
千世霞「う、うん…」
郁哉「正直、この作戦は気に入らねぇ…」
咲夜の手元に目線を落とす郁哉。咲夜の手にはナイフが握られていた。
郁哉「でも、確実性をとった結果だからな」
咲夜「ん、」
交番前に立っている死刑者。
《くぁ~》と眠そうに欠伸をした。
交番裏の茂みが《ザワザワ》と揺れるが、それに気がついた死刑者は不思議そうな表情をする。
そして《ザワザワ》《ザワザワ》と2度3度立て続けに茂みが動く。
いよいよ明確に不信感を抱いた死刑者。左腕に付けられた時計に目を落とした。時計は午前3時54分を指している。
天衣「(こんな時間に人がいるのはおかしい…。しかもこんな茂みにいるなんて。)」
拳銃や懐中電灯・警棒などが着けられた腰周りに手を伸ばす。懐中電灯で茂みを照らし、《ザッザッ》と足を運ぶ。そして、茂みの奥に足を踏み入れた。
天衣「(と考えると、やはり動物だろうか?にしては音の鳴り方が不自然だ…。)」
周りを見渡しながら茂みを進むが何も無い。
天衣「(風もないのに、あんな音がした。)」
四方八方に懐中電灯の先を向ける。
天衣「(でも、何も…)」
天衣「ツッ、!!」
さっきは何も無かった方向に懐中電灯を向ける。
そこにはフードを被った何者かが背を向けて立っている。
天衣「ま、待って、!」
フードを被った何者かは、交番を背に、どんどん足を進めていく。
天衣「(その先にあるのは…池だ、)」
交番の裏には大きな公園がある。しかし、公園と言っても緑が多く、真ん中に大きな池があり、少しの散歩コースがあるだけで、子供が遊べる遊具などはない。
天衣「止まりなさい、!」
ポケットに手を入れて歩くその人物は、背は高めだが、猫背だ。
《チャプッ》《ジャプッ》と男の足は徐々に池に入って行く。
天衣「(それ以上は、!)」
《ザッザッササッ》草を手で分けながら進み、死刑者は走って後を追う。
光るナイフとそれを握る小さな手。《ザッ!!》という音が死刑者の後ろから聞こえ、死刑者の後ろに人影が揺らぐ。しかし、死刑者はそれに気が付く術もない。
《トスッ…》と意図も簡単に、優しく死刑者の背中に差し込まれたナイフ。そして、それを離してはくれない手。
天衣「ぅ"ッ、!!」
死刑者は、急に自身を襲う激痛でバランスを崩し、足を絡まして、池に落ちていく。その途中、体を捻り、自身を刺した犯人を捕まえようと手を伸ばした。
天衣「(お前も、捕まえて…)」
死刑者を刺した張本人は、ナイフを引き抜き、《ススッ》と身を引く。死刑者の伸ばした手は、既のところで掴めない。
そのまま後ろ向きで池に落ちていく死刑者は、フードの隙間から覗く咲夜の顔を見てしまった。そして、死刑者は驚きの表情を浮かべた。
天衣「(何で君が、!!!)」
そしてその顔のまま、《ザッパーンッ》と池の水に吸い込まれていく。
池から上がった郁哉はその様子を見て、ストップウォッチを《グイッ》と手首を返し手に収める。そして、そのボタンを《ポチッ》と押し、そのままストップウォッチごと、手をポケットに突っ込んだ。
人影が映る池を見下ろす咲夜は、ナイフをケースに仕舞い、パーカーの中へ。
そして、天を仰いだ。
咲夜「っはぁ…。」




