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第4話 衝突


校庭に集められた神月、響、千世霞の3人。

3人の手にはそれぞれ拳銃とナイフが握られている。


不流「咲夜、暗殺の時によく使うのは拳銃とナイフどっちだ。」

咲夜「…拳銃。」

不流「郁哉」

郁哉「拳銃です、。」

不流「千世霞」

千世霞「え、いや、僕は…」


一時の迷いもなく言い切る2人とは違い、戸惑いが顔に浮かぶ千世霞。そんな千世霞を響は横目でチラと見た後、すぐに目線を不流に戻した。


不流「…、多数決で拳銃な。千世霞、拳銃を使う時の注意点はなんだと思う。」

千世霞「え、えーと…」


ナイフで手遊びを始める咲夜。

制服を整え始める郁哉。


不流「暴発と、狙撃時の反動だ。」

千世霞「え、あ、はい…」


まるで正しい答えなど求めていたかのように、サラリと答える不流。


不流「百聞は一見にしかず。とりあえず、あの的の中心目掛けて、2回連続で打ってみろ。」


拳銃を構え、的を狙う3人。1発、的に向かって撃つ。そして、そのまま続けて2発目を放った。


咲夜、郁哉、千世霞の順に並んだ的。

千世霞は1射目と2射目に大きく差がある。

郁哉は1射目と2射目にズレはあるが誤差の範囲。

咲夜は1射目と2射目に郁哉よりもズレがあるが、千世霞程の大きなズレは無い。


初めての拳銃におっかなびっくりで、酷い有様の千世霞と拳銃に慣れ親しんでいる咲夜、郁哉とでは比べるまでもない。


千世霞「凄い…」

不流「見ての通り、弾を放つと反動が生まれる。」

不流「千世霞のが普通だ。咲夜は使い慣れてるからその誤差で済んでるな。郁哉は使い慣れていることに加えて、筋肉量の問題もある。」


不流は話を続けながら、スーツの中に手を入れる。そして、拳銃を取り出した。


不流「実際、男女の差はある。男の方が、1射目と2射目のズレは小さい傾向にある。」


そして、千世霞の隣にある的に拳銃を構えた。

《パンパーンッ!!》と大きな発砲音。


不流「暗殺者を初めて10年以上経ってる俺からすれば、これぐらいの誤差に収めるのが普通だ。」


煙の登る拳銃を顔の高さで掲げる不流。不流の的は1射目と2射目でほぼ差がない。むしろ撃ち抜いた場所が重なり、ふたつの円ではなく、楕円形のようにすら見える。


不流「ここまで仕上げろとは言わない。ただ、こうなるということを狙撃時は念頭に置いて置くこと。それと、お前らが今持っているのは元々拳銃だったものを改造したものだ。威力は変わらないが暴発はしない仕組みになっている。」


不流は腰にかけていた3つの拳銃を3人にそれぞれ手渡した。


不流「実践で使うのはこっちだ。気をつけろよ。弾入ってるからな。」

千世霞「ヒュッ、」


千世霞「(重さが違う。これを人に向けてしまえば、引き金を引いてしまえば、簡単に人の命を奪えてしまう。こんなに恐ろしいものを、意図も簡単に渡してくるなんて。こんなに恐ろしいものを、これから持ち続けなくてはいけないなんて…)」


不流「重さも変わる。できるだけ慣れておけ。ここは抑えるなよ。暴発するぞ。」


拳銃を《トントンッ》と叩く不流。


咲夜「千世霞、ビビりすぎ」

千世霞「だ、だって!本物の拳銃なんて…」

郁哉「…チッ、」

千世霞「す、すいません…」


《カチャッ》と本物の拳銃を千世霞の額に当てる郁哉。


千世霞「ツッ!!!!!」

郁哉「いい加減にしろ。ここに何しに来てる。俺は、人を殺すためにここにいる。お前がそうじゃないなら帰れ。」


大きくため息をついている不流と、相も変わらず、我関せずといった姿勢を貫く咲夜。


郁哉「覚悟もまともにできてない奴と、同じ任務なんてごめんだ。」

千世霞「ツッ〜〜!!で、でも僕は!僕は…人なんか、殺せない…」


《パーンッ!!》と大きな発砲音がなる。

郁哉の拳銃だけが吹き飛ばされ、その反動で腕を持っていかれる郁哉。

あまりに唐突な発砲音と、その出来事にその場の時間が止まったような感覚さえしてしまう。


闇の籠ったような瞳で、向き合う郁哉の千世霞の間から拳銃を構えている咲夜。


不流「おいっ、!お前それは流石に危ねぇ__ 」

咲夜「死ねばいいのに。」


あまりの冷たい声に、声も出せずに驚く千世霞と郁哉。そして、千世霞の頬には汗が伝った。


咲夜「人を殺せない?殺したことあるからここにいるんでしょ。意味わかんないこと言わないでくんない?」


鋭い咲夜の視線が千世霞を突き刺す。


《ザッザッズザッ》と不穏な音を鳴らしながら、拳銃を構えたまま、ゆっくり近付いてくる咲夜と相対する千世霞。足に力が入らず、後退りをすることすら出来ない。


咲夜「3人での任務ってことは、千世霞は私と郁哉に命を預けるってこと。逆も然り。私と郁哉は千世霞に命を預けるってこと。」


その言葉に、目を見開く千世霞。


咲夜「私はあんたなんかに命預ける気、サラサラないから。人は殺せない?それで死ぬのは自分だよ。ここはそういう世界だよ。」


千世霞の瞳の奥すらも見透かすようなその瞳。感情を読むことの出来ない、何も籠っていないような、むしろ全てを呑み込んでしまいそうな、咲夜の瞳。


咲夜「死ぬなら独りで死ね。私と郁哉を、あんたの意味のわからない恐怖に巻き込まないで。あんたのせいで死ぬなんて、私は嫌だ。」


《ピトッ》と咲夜の拳銃の銃口が、千世霞の額にくっつく。そして、ゴクリと唾を飲み込む千世霞。


咲夜「あんたのせいで巻き添え喰らうぐらいなら、私は迷わずあんたを見捨てて(殺して)任務遂行するから。死ぬ気も殺す気もない、決断もできない人間はここにいるな。私があんたのせいで死ぬ前に消えて。」


揺らがない、闇に染った咲夜の瞳。

冷たい目で千世霞を見つめる郁哉。


千世霞「(嫌でも気付かされる。この2人にとって、僕は荷物で、弱みになりかねない。僕はここで逃げるのか?いや、消えるべきなのか…?何が正解かなんて分からない。寧ろ、正解なんてないのかもしれない。)」


千世霞は自分が手に握っていた拳銃を咲夜に向けた。

咲夜の顔からは動揺も見てとれない。


千世霞「(僕は、怯んで、足も動かなかった。いや、今も動かない。それなのに、咲夜さんは拳銃を向けられて、顔色一つ変えない。それも、拳銃初心者の僕が謝って発砲する可能性すらあるのに。つまり、それだけの差があるってことだ。)」


《咲夜と郁哉は既に知っている》

《恐怖は飼い慣らせばいいということを》


咲夜「撃つなら撃てば?」


だらんと脱力したように拳銃を下ろした千世霞。


千世霞「撃たない。確かめたかっただけ…。」

咲夜「…なにを。」

千世霞「僕と咲夜さんは何が違うのか、僕と郁哉くんは何が違うのかを。」


手元にある拳銃に目を落とす千世霞。そして、引き金から手を離し、拳銃の柄を強く握りしめる。


千世霞「2人の足でまといかもしれない。あんなこと言われても、人を殺した記憶は無い…。でも、もう引けない。」


顔を上げる千世霞。真っ直ぐと、咲夜と郁哉を見つめる。


千世霞「僕のせいで、2人が危ない時は遠慮なく見捨てて(殺して)ほしい。だから、それまでは…仲間でいて欲しい。」


咲夜は拳銃を下ろした。

かと思えば、《ジュザッ》と咲夜は千世霞の後ろに回り込み、背中の、心臓の辺りに銃口を当てた。


咲夜「いいよ。仲間でいても。でも、邪魔になったら痛めつけてから見捨てる(殺す)ね。」


《グリグリ》と銃を千世霞に押し付ける咲夜。


千世霞「う、うん…、」

郁哉「はぁ…」


大きくため息をついた後、地面に転がった拳銃を拾い上げる郁哉。

拳銃の弾倉で咲夜の頭を《コンッ》と軽く叩く。


咲夜「痛い、」

郁哉「俺もそれなりに痛かった。」

咲夜「それは、ごめん…?」

郁哉「悪いと思ってねぇだろ…」


郁哉は銃口を千世霞の首に当てた。


郁哉「俺は認めない。仲間だなんて思わない。お前がそれなりの働きをしたら、まぁ認める。」

千世霞「頑張る、ね…」

郁哉「出遅れてんだ。頑張るのが当たり前だろ」

千世霞「あ、はい…すいません…、」


シュンと少し縮こまる千世霞。


不流「(拳銃に慣れろってそういう意味じゃねぇんだけどな…)」


大きくため息を吐く不流。


不流「(まぁ、結果的にはいいか。)」


不流「おい、拳銃で終わりじゃねぇぞ。」

「「はい」」


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