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イタチの短編小説

怪談 指

作者: 板近 代

 部屋に指が落ちていた日の話をしましょう。


 あれは、長さと肌艶からして三十二歳ごろの男性の人差し指かと思います。すぐ近くに長い髪の毛が一本落ちていたので、私はそれの先に指を結び付けてクルクルクルとまわして遊んでみることにしたのです。


 すると、不思議なことがおきました。

 何度回しても、必ず指が同じほうを指して止まるのです。


 まるで方位磁石。

 ですが、指の向いた先には箪笥(たんす)があるだけ。

 抽斗(ひきだし)は小さく、深さは横向きに寝かせた人の頭が一つ入る程度。横幅奥行きは、大人の腕を折り曲げて入れるのがやっとなくらい。そんな、小さな抽斗が十八個ある箪笥です。


 しかし、我ながら変な喩えをしたものですね。こんな、滅多に開けない抽斗に生ものを仕舞っては、腐って堆肥のようになってしまうでしょう。


 まさに、箪笥の肥やし。

 くだらない冗談に、思わず一人で笑ってしまいます。


 この箪笥は、祖母のそのまた祖母の代に購入した品らしく。一つ一つの抽斗が重たくて、そうそう開ける気にならないのですよ。


 ああそうだ、バケツか桶を買いに行かねばなりません。

 天井からぽたりぽたりと垂れてくる酷いにおいのする液体を、いつまでも鍋やフライパンで受けていてはいけませんから。

 一応、調理器具ですからね。

 においがうつるとお客さんを呼んだ時に困るでしょう。


 しかし、なんなのでしょうかこの液体は。上の階で生き物でも解体しているのでしょうか。においからして三十六歳ごろの女性と二歳ごろの女の子が混ざったものだと思うけれど、決めつけてはいけませんよね。


 ほら、百聞は一見に如かずと言いますでしょう。

 だから私は、百嗅は一見に如かずとも思うのです。


 それにしても、困りましたね。

 昨日よりも、垂れてくる量が多くなっている。天井の染みもずいぶんと広がってしまったし。

 まったく……私はこの家に住みはじめたばかりですよ?

 やっぱり、一軒家ではなくマンションにしたほうが良かったかしら。地面が近いせいか、虫もとても多いし。



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