形から入っていくタイプ
ごめんなさい!またもや遅刻…。
今日は、クラエスとの約束があるため、少し早めにログインした。
前回ログアウトした場所はアッシュウルフが入り始める辺りの草原だったはずだが、ログインしてみると、いつもの噴水広場にいた。
「セーフティエリアの確認は特にしていなかったが…ログアウトとすると、ここからスタートになるのか。」
そんなことを呟きながら辺りを見渡す。
クラエスとの約束があるため、クラエスから聞いていた容姿の人間を探しているのだ。
小麦色の髪、白銀の瞳、タレ目、髪の長さは足より少し上…等々。
聖女っぽい容姿はこれだろうというクラエスのこだわりが詰まったキャラデザである。
人を1人1人確認していると、少しあたふたしているクラエスから聞いた容姿そのものの少女がいた。
「わっ、どうしましょう…。容姿を聞いてないのでルキに会えるか分かりませんっ」
でも、会いにそちらから来るかしら…。と頭を悩ませながら焦る少女。もちろんクラエスである。
すぐにクラエスだということに気づいたルキは、近づいて話しかけた。
「初めまして、お嬢さん。名前を伺ってもいいかな?」
「ひゃあっ、び、びっくりした…。あ、クラエスです。よろしく、ね?もしかしなくても、ルキだったりするかしら?」
「クラエス様ですか。ええ、私はルキと申します。」
違和感を持たれたりしないように、プラスいつもの定型文のような、挨拶を済ませる。
残りは特に気にせずアイコンタクトでいいだろう。
まぁ、アイコンタクトで話したのは
『クラエス?』
『YES』
『フレ申どちらからしようか?』
『私からでいいよ〜』
的なことだったが。
現にルキの手は、メニューウィンドウを弄っており、周囲の人間を選択、クラエス、という順序でフレンド申請を送っていた。
フレンドになると、クラエスから話しかけられた。
「あのあのっ、お洋服見に行きませんか?」
上目遣いでこちらを見つめられた。
これは断れないやつだ。と思いながら返答する。
「クラエス様がお望みなら私は叶えるまでですよ。」
「で、では!クラエスはお望みなので行きましょう!」
RPをしている際のクラエスは印象が違うな…と思いながらクラエスに手を差し伸べる。
クラエスも、自然とその手をとった。
ロールプレイヤーと知らなければ住人の騎士と聖女である。
周りのプレイヤーもこの光景に少し目を奪われていた。
しかし、そんなことを気にしない2人は洋服を手に入れるため、歩き出していた。
「しかし、クラエス様は行きつけの店があったりするのですか?」
迷いのない足取りに疑問を持ったルキは尋ねた。
しかし、返ってきたのは思ってもない答えだった。
「いいえ、あっ、でも場所は分かるのよっ、教えてもらったから…。」
「そうだったのですね。もしかして、お知り合いが経営しているお店だったりするのですか?」
「あっ、はいそうですよ。良く分かりましたね」
「クラエス様の説明を聞いて考えただけですからあまり凄い訳では無いですよ。」
「そうなのですか?でも、凄いのは確かなので、やはりルキは凄いですね。」
そんな会話をしていると、不意にクラエスが立ち止まった。
立ち止まった場所は木造の少し古ぼけた感じの店だった。
蔦があったり、目の前には少し枯れた花の花壇があったりと、昔からここにあったような、そんな印象をこの店から感じた。
「ここがクラエス様の言っていた店で間違いありませんか?」
「はい、ここがその店です。」
その言葉を聞くと、クラエスが入る前にドアノブに手をかけ扉を開けた。
中は、外の雰囲気とは打って変わって、新しさを感じた。作ったばかりなのかもしれないが、木の匂いがふんわりと感じられ、壁には鎧が置いてあったり、皮の防具があったりした。
「紹介するわね、ここの店主のミーシャよ」
「初めましてミーシャ様」
「あら、丁寧ね。こちらこそよろしく頼むわ。」
そんな一通りの挨拶を済ませたあと、取り扱っている服や防具について、質問した。
「ミーシャ様、動きやすい騎士服のような物はあったりするのか?」
「様じゃなくてもいいわよ。それで騎士服ねぇ、作ってた気がするわ」
「了解した。ミーシャ殿。なるほどな、幾らぐらいになる?」
毎度、お金の話をしている気がするがまぁ、仕方ないだろう。
「そうね、まぁ、1番安くて4000ピア位は欲しいわね。プレイヤーメイドなんだから。」
「なるほど、金は素材を売れば足りそうだ。ありがとう。」
素直に感謝を伝えながら、どこかで集めていた素材を売ったり、依頼の完了報告をしないといけないなと思い出す。
「あ、あのっ。私のローブとかも取り扱ってますか?」
「もちろん、取り扱ってるわよ。まぁ、クラエスちゃんでもお金は取らせて貰うけど。」
「むむむっ、そうですね。お金集めてから出直して来ますっ!」
「そうね。また来なさい。お金があれば売るわよ」
そんなことを話しながら店を後にした。
騎士服が手に入ることに喜びを隠せず少し笑みが浮かんでいる気がするがまぁ、気にする事はない。
そんなことを考えていると、クラエスに話しかけられた。
「ルキ、私治癒士だから、一緒に討伐付き合ってくれない?」
自分であればまだ、倒せるだろうし回復がいるだけで安定する…。そんな考えからこう答えた。
「そうですね。付き合いましょうかね。」
と。
もう1話投稿と言っておりましたが、今日火曜なので投稿ないですね…。
《作者からのお願い》
面白いと思いましたら、感想、評価、レビュー、ブックマーク等よろしくお願いします!