【赤side】
好きな奴が居る事ぐらい知ってる。だって、ずっとアンタの事を見てたんだから。
其の相手が黒子だって事、知ってる。
だって、ずっとアンタの視線を追っていたから…。
だから、諦めきれなかった。
生徒と教師という境界線を、アンタが取り払ってくれたせいで。
「せ……赤那っっ!? 」
驚きで、目を見開いてるチャトの瞳に、自分じゃない女の子が映る。
其の女の子は、焦っているのがモロ分かりで、今にも泣き出しそうで…。
あれ? 視界が歪む。何で?
チャトが心配そうな顔でオレを見てるし。病気かな? あるか無いかの胸は、さっきからズキズキと痛むし。呼吸も荒いときた。
「……せんせ…っ」
「…なぁ。赤那が俺を嫌いなのを知ってはいたけどさぁ、嫌がらせするにも、限度ってもんがあるでしょ? 」
嫌い、だってぇ? 違う! 逆だ! 逆!!
「オレは、先生の事――」
「止めろッ!! 」
抱き着いていた体を無理矢理剥がされ、一気に温もりが消える。先生の、温もりが…。
なぁチャト先生。本当は、オレの気持ち、知っているんだろ? 知らなきゃ、オレの次の言葉、言わせてくれるもんな…。
周りの奴らが何だ何だと野次馬よろしく群がってきやがるし。何か、泣きそう…。あー、もう、泣いてる、かぁ。
「テメェは、やっぱり、ズリぃや」
「……知ってる」
「一発殴らせてくんない? 」
「其れはヤダ」
「おいテメェ…そこは、嘘でも『はい』って答えんのが普通だろぉーがっっ!! 」
やっぱり、其れ以上の関係は、望めないんだな…。
だったら、茶十河に迷惑掛けた分、返さなきゃ、な…。
「はいッ! 此処までー! 」
『!』
「オレからの、先生への熱烈な告白は終了でーす」
「赤……っ」
「ってなわけだからさ、教頭! さっきの、オレと先生とのチューは、オレが無理矢理やった事で、先生には関係ない事なんだわ。だからさ、先生は許してくんね? 」
教頭は呆気にとられていた。他の野次馬達は、なんだ面白くねぇといった感じで、四方八方へと散らばっていく。
チャトは……。チャトは、オレを見詰めていた。なんだよぉ。照れるじゃねぇーか…。
「赤…」
「頑張れよ、先生。オレ、応援すっから」
これ以上、チャトの傍に居たくなかった。…いや、居れなかった。
*
気付いたら、中庭に来ていた。太陽がジリジリと、オレの肌を焼くように射す。
「…っあちぃな、くそぉ…」
空は、こんなにも晴れてるのに、オレの心ん中は土砂降りで、雨は暫く止みそうにない。
自分が思った以上に、チャトが好きだったんだと、今更になって気付く。知りたくなかった。
(ヘヘッ…未練がましいや)
オレにも、こんな風に女臭い処があったんだなぁ…。
『赤那ぁ…!! 』
そういえば今頃、あの二人(黒子と茶十河)、どうしてるんだろう?
チャト、ココにもう、告ったかなぁ。
『赤那! 』
――ココは、何って返事、したんだろう…。
『…ねぇ! 』
ココの事だから、多分、断るんだろうけど…でも、あの二人見た感じお似合いだしなぁ。
『ねぇってば! 』
やっぱり、応援側に回ろう…。だって、ココもチャトも、オレにとっては、スッゲェ大事な奴らだもんな。
「赤那ッ!! 」
「え? ……あー…ココ……居たの」
「さっきから、ずっと呼んでたじゃん! 」
「……ごめん」
「………………」
頬をプクッと膨らませ唇を尖らせるココは、怒ってる事を主張してるのだろうが、何とも女の子らしくて、可愛らしい…。
(……オレには、全くねェーや…)
チャトが惚れるのも、納得出来る。ってか、オレが男だったら、確実にココに惚れるだろう。
「ホント、に? 」
「…ん…? 」
「もし赤那が、男…なら、私に惚れてた? 」
「…! え……何? ココ…、オレの考えてる事が分かるなんて、エスパー? 」
「チャトが惚れるのも……辺りから、赤那、心の声駄々漏れだったよ。…其れより、さっき言った事、ホント? 」
凄まじいぐらい恐い表情でオレに詰め寄って来るココは、今まで見たことがない。
…ってか、え? 何? この展開?
「好き、な、の…」
「……チャト、が…? 」
「今の状況見て、私が、茶十河に対する恋愛感情が、あると思える? 」
「…いや……じゃあ…、ダレ? 」
「赤那よッ!! 」
透き通った声が、オレの耳を通過して、脳みそに届くのに、暫く時間が掛かった。
あー…ココが、オレをねぇ……。
………ん? ちょっと待て。ココの口から爆弾発言が聞こえた気がするんだけど。
「だから、赤那の事を好きっ、なんだってば!! 」
「……あー…ココ…。あのさぁ……」
「冗談じゃなくて本気なんだからッ!! 」
「……」
うん。一旦、頭ん中を、生理しよう。…あ…。“生理”、じゃなくて“整理”だった…。
ってか、何、ノリツッコミしてんだよオレェェェ!?
しかも、整理と生理の間違いって……ハァ…。オレ…マジで、女なんだよな?
「正真正銘の女の子だよ、赤那は! …だって…、もし、赤那が女の子じゃなかったら私、多分、赤那の事、好きにならなかったもん!! 」
「……あれ…? ココさん、ココさん。フツー、女の子は男を、好きになると思うんですが」
「好きになる事に、男も女も関係あるの? 」
「…いや、関係はないと思うんだけど…でもさっき、ココの口からさぁ、オレがもし男だったら、多分好きになる事はなかったって、言ってる様に聞こえたんだけど」
「……き…気のせい…だ、よ……」
いやいや気のせいじゃないよね? だって、明らかに動揺してるし!!
――ってか、…え? ココって、ソッチ系だったの?
「……ソッチ系って、…あのさ赤那、私が謂いたいのは……ッ」
「ごめん…」
「…え……」
「オレ…ココとは、そーゆう関係にはなれない。…ってか、そーゆう事は、同じ道を進む――」
「赤那の馬鹿ッッ!!!! 」
「…!? え? あ…オイッ! ……チッ…何だってんだよ」
逃げる様に、…いや、実際逃げていたのかもしれないが、全速力だと思われる走行で立ち去っていったココに、オレは引き止めようと伸ばしかけた手を、力を抜き、腕をダラーンと垂らした。
(ココの気持ちが、解らない…)
なぁ、ココ。オレ達の付き合いは、所謂幼なじみっていう間柄だよな?
言いたい事も好き勝手言って、で、どっちかが困ってる時は、もう片方は自分が出来る範囲でフォローする。そんな、関係だった筈だよな?
なのに…何だよ、これ…。
「オレは一体、お前に何したってんだよッ!? 」
「否定された事だろ」
「! ……チャ、ト…」
「先生、な」
「…ってか、何で、アンタが此処に……其れに…っ」
「俺はアレだよ、アレ、昼休み中。…まぁ、其れより、さァ。どうすんの? 」
「…? 」
「黒子との事。付き合うの? 振るの? 」
「……どーするって…そんなの、決まってる」
「じゃあ、其れを正直、アイツに伝えりゃあ好いじゃん」
「伝えりゃあ好いって…、簡単に言うなよッ!! 」
つい、怒鳴ってしまった。…でも、其れは、茶十河が、そう急かす感じでいうから。
……あれ?
何でコイツは、ココの告白の返事を早く伝えろって、言ってんだ?
「先生」
「何? 」
「ココに、フラれたんですかー? 」
「言っとくが、俺は負け戦に行くほど馬鹿じゃない」
つまり、まだ告ってないわけだ。良かったぁ……じゃ、ないない!!
ってか、まだ告って無かったのかよ!
まぁ…、確かに教師が生徒に恋したから告白、なんて世間が許してくれるわけないし、告白された生徒だって、将来の事とかあるから、嫌でも断る事なんて出来ない。
「おーい。心の声、駄々漏れだぞ。ってか、そんな理由で、告白してないわけじゃねーよ。…ちょっと、知りたい事があって、な」
「…知りたい事ぉ?」
「お前さ、兄貴と仲、良いー?」
「……はぃ?何で?」
「あー、ちょっとなぁ…で、どーよ?」
「……アイツ…、ココに、なんかしたんですか?」
「…っ!あ…、あぁ…」
何って奴だ。兄貴がココに惚れてた事は薄々気付いちゃいたが、当の本人達で解決するだろうと思っていたから、何も知らないフリをしていた。
―でも…、其れはあくまでも兄貴がココを告白する過程であって、無理矢理性行為を強行する事ではない。
「あんにゃろー!」
「おい、待て。大丈夫だ。未遂だから」
「そーゆう問題じゃねぇーよ!ココが……親友のココが、もしかしたら、一生心に傷を抱えるかもしれない事なのに、オレのせいで…っ」
「……アイツは、そんな、柔な奴なんかじゃないよ。お前が、一番知ってる事だろ?」
「チャト…」
「先生な。まぁ、そんなわけだからさ、俺は、アイツに告白はしない」
「………本気で、ココの事、好きなんだな…」
「……………」
「……ココが、羨ましいや…」
オレは、ココに返事をする為、チャトに軽く頭を下げ挨拶すると、其の場を後にした。
◆◇◆
赤那は知らなかった。何で、茶十河が黒子に告白しなかったのか、という本当の理由が。
「…今更、『お前の事、意識しました』なんて、言えないよな……」
そんな茶十河の呟きが、届いてほしい相手に届く筈もなく、空気中へと溶けていった。
それぞれの想いは、重なりそうで重ならない。
そんな、とある三角関係の話――。
end
後書き
ラスト、結局グダグダ…
しかも最初に考えてたラストと違うし!
――まぁ、ってなわけで、長々と書いていた『黒と茶と赤と』ですが、之にて完結です!
最後まで読んでくださった方、誠に有難うございます!!
初出【2012年6月3日】を読み直して……
実は最初、ココとチャトがくっ付く予定だったけど、赤那に情が湧くぐらい好みなタイプになってしまって、、
気付いたら、赤那は漸くチャトから想われる様になったケド、彼女はそれに気付かず、それ処かココの気持ちには応えられないけど、ココとは友人関係を続けたくて彼女を追い駆ける……一方通行が逆回りした感じになりました。
改めて、最後まで読んでくださり有難う御座います!!!!(//∇//)❤️❤️❤️




