【黒side】
※注意
「ゆとり教育世代」をイジる描写があります❗️
絡み合った紅い糸。
私の小指に絡まった紅い糸は、複雑に絡んでて、解こうにも、解けない…。
私、黒子には、好きな人がいる。其の人物は、明るくて逞しくて、勉強は出来ないけど運動は出来る子で、ぶっきらぼうだけど実は結構なお人よしの女の子で、私の大の親友、赤那。
「ココ、お願い!! 宿題写さして! 」
毎朝恒例のようになってる会話。赤那はどう思ってるか分からないけど、私にとっては大切な時間だ。
普段、私は赤那に助けて貰っているから、こーゆう時にでも恩返ししたいし、何より、誰よりも赤那を直ぐ傍で感じられる。
ふと、鼻孔を擽る甘い匂い。
「あれ? 赤那ぁ、シャンプー変えたぁ? 」
「あ、うん! チャトの好みらしいから。ほらオレ、女らしくねーじゃん? だからさっ、少しでも女らしくして、アイツのハートをわしづかみにしてやろうと思ってさ」
チャトというのは、このクラスの担任で、茶十河って苗字で、通称チャト。赤那の想い人。私は、アイツが嫌いだ。
私がふて腐れて頬を膨らまし唇を尖らせると、赤那は冗談口調で「モテる女は辛ェぜ」と言った。
「モテるって、赤那が何時、モテたっていうのよ? 」
「あぁー言いやがったなぁ! コノヤロー」
片方の腕で私を逃がさないように抱きしめ、空いてるもう片方の手に拳を固め、私のこめかみ辺りをグリグリする赤那。
近い…。近いよ、赤那ッ!!
「そこのレズカップル! 他の生徒の目もあるから教室でイチャイチャしない! ってか、先生彼女居ねぇのに、テメェらみたいなの居たら、先生の彼女候補が減るじゃねーか!! 」
チッ…現れた。邪魔な存在が。
「黒子、何だァ? 其の、言いたげな面はァ」
「…別に。ってか、相手したくないんで、話し掛けないでもらえますぅ? 」
「ちょっ…ココ?! ……あ、ごめんなさい先生。ココも、悪気があって、言ったわけじゃないんで!! 」
ペコペコと頭を下げる赤那。何で? 何で、赤那が謝るわけ? 悪いのは、アイツじゃん。
黒子は、茶十河に対する怒りを抑える為、下唇を噛んだ。口内に、鉄の味が広がった。
「とにかく、皆、席着けー。朝のホームルームを始めんぞ」
茶十河がそう言ったのとほぼ同時に、チャイムが学校内に響いた。
*
「何だよ、あの態度? 」
5分休み。赤那は脇目も振らず、一直線で黒子の席の前に立ち、問い詰めてきた。
「だってさぁ、レズカップルなんて、公衆の面前で言う? もし、其れがきっかけで私達が虐められた場合、先生責任取ってくれるんだよねぇ? 」
黒子は顔を上げ、赤那と目を合わせると、答えた。
だが、まだ納得がいっていないのか、赤那は不満そうな表情で、黒子の顔をジーッと見ている。
「……まぁ、確かに、レズカップルなんて嫌だよな? オレ達、普通の恋して恋愛したいわけだしな」
赤那の言葉に、黒子は胸がチクリとした痛みが走った、気がした。
「…でしょ? だからさ、先生は悪気なくても、私達からしたら迷惑なわけよ! 」
「うんうん。や、悪ぃな、あんな言い方して…、まじゴメン! 」
手を合わせ詫びる赤那は、何時もの男勝りな雰囲気はなく、其れ処か、私よりも小さい女の子に思えた。
可愛い…
「赤那」
「ん?」
赤那は、私に目線を合わせる為、体を屈める。顔が段々近付いてきた。
後、50センチ…
後、30センチ…
後、10セン――
「なぁ。…俺、言わなかったっけ? レズ行為なら、教室でやんな、って」
『?!』
黒子と赤那は驚いた顔をして、声の主の方へと振り返った。声の主――茶十河はハァと溜息を吐き、二人の頭を乱暴に掴むと、無理矢理引き離した。
何で、こう好い時に邪魔をしにくるんだよ、この馬鹿教師。
空気読めよ!
ムスッとした顔で茶十河を睨みつけると、お返しにとばかりに微笑まれた。
うわっ! 気持ち悪っ!!
だから、私はコイツが嫌いなんだ。
小学生の頃からの付き合いの赤那の心を掻っ攫ってさ、挙げ句、仮にも生徒の前で、「彼女欲しーい!! 」とか言っちゃたりしてさ、まじサイッテーなんですけど!!
「黒子。そんなに、先生が嫌いなら、放課後、居残りな」
「はあぁぁぁあぁぁ?! 意味、分かんないんですけどっ」
「意味だァ? そんなの決まってらァ。お前が俺の授業にだけ出ないのは知っている。其のせいで、いっつも追試受けてんのが理由。以上。はい皆、席着けー。二時間目始めんぞ」
教卓へと向かう茶十河の背中を睨みつけ、黒子は教科書なんか出さずにそのまま机に突っ伏した。
「やってらんないわよ」
「其れ、こっちの台詞なんですけど」
「先…っ!? 」
「今、授業中だって事、知ってる? 黒子サン」
頭部に衝撃を受ける。直ぐに顔を上げ確認すると、茶十河が持っていた教科書を筒状に丸め込み、其れで殴ったようだ。
「先生ー。其の行為って、虐待だと思うんですけど」
「お前らゆとり教育世代っつーのは、そーゆう事で直ぐ、虐待とか、人が悪いとか言うよな」
「先生だって、ゆとり教育世代じゃん」
「ホント、人の揚げ足取りだけは上手くて、先生、参っちゃうわ」
「其の言葉、お前にそのまま返すわ」
ってな具合に、暫く其のやり取りが続き、とある一人の生徒が茶十河に、「真面目に授業してくださーい! 」という言葉で、二人のやり取りは終止符が打たれた。
はぁ…。何でアイツ、私に突っ掛かってくるわけ?
二時間目も終り、再び訪れた5分休み。
私は、さっきまでバンバンにストレスを抱えた体の力を抜き、机に突っ伏した。
「お疲れー」
そう言われ、頭に手を乗せられ、撫でられる。顔を見なくても、誰がそんなことしてるのかは、分かった。
「赤那ぁ、もっと、優しく…ッ」
さっきあの馬鹿教師に殴られた処が、ズキズキして痛む。其れに追い打ちを掛けるように、赤那の手は無造作に私の頭を撫でている。しかも、特に今敏感な処に、赤那の手が触れている。
何でかなぁ…。今の赤那、何時もみたいじゃない。ってか、近寄りがたいオーラが出てるような…。
「どしたココ? 」
「う、ん…。何でもな、いよ……」
「具合悪ぃならさ、保健室、行けば? 」
「え? 具合なんて、悪くな――」
「好いから行っとけって。先生には言っとくからさ」
手を引かれ、教室を出ていく。何時もなら、こんなこと赤那にしてもらったら嬉しい筈なのに、何故か今は、恐くてしょうがなかった。
*
「ゆっくりしとけよ」
「うん…」
赤那は保健室の戸を開け、こちらに見向きもせず戸を閉めた。足音が遠ざかっていく。
赤那が居なくなった事に対する悲しい気持ちの反面、ホッとしてる自分がいた。
「どうしたんだろ、私…」
思いに耽てると、戸が開く音がして、ハッと現実に引き戻された。
「ココちゃん」
「あ、先輩。お久しぶりです…」
保健室に入って来た見覚えのある相手は、ついさっきまで私の傍に居た赤那の兄。一つ上の先輩だ。
「先輩、大丈夫ですか? 」
「え? 何で? 」
「だって、此処保健室ですよ。何処か具合が悪いから来たんでしょ? 」
「いやー…さっき、赤那とココちゃんの二人が保健室に入っていく処を見掛けて、心配になって、其れで―…」
流石、兄弟ってヤツかな。素直じゃなくて、ぶっきらぼうで、隠れた優しさを持っている赤那の面影が、先輩と重なる。
「御心配掛けてすみません! でも私、大丈夫なので、先輩はそろそろ教室に戻ってください」
そう言った直後だった。
視界が反転して、私の体は再び真っ白なベッドに沈む。瞳に映るのは、今まで見たことのない顔で私を見詰める先輩と、其の背景に天井。肩はガッシリと、先輩の太くもなく、かと言って細くもない手によって掴まれてる。
「先輩……何の、冗談ですか? 全っ然、笑えないんですけど…」
「…なぁ? この状況でさ、冗談って、笑わすなよ」
「え…?! 」
顔が近付いてくる。愛しい顔をした、別人の、顔が。
「や…先輩、ヤダ! 止めてッ! 」
「ココちゃん…、黙れ! 」
「…!」
ドスの利いた声で、私は恐怖に脅える余り、思考回路は上手く回らなくなった。
顔が、段々、近付いてきた。
後、30センチ…
後、15センチ…
後、7セン――
「保健室は、ラブホじゃねぇーぞ」
『!?』
大っ嫌いで、同じ空気さえも吸いたくない野郎の、気の抜けたような声。私と先輩は、ほぼ同時に声がした方へと振り返った。
「先生…」
「ちょっ、チャトさぁ、空気読もうぜ? 今、好いところじゃん」
馬鹿教師は、私と先輩の顔を交互に見ると、こちらに歩み寄ってきて、先輩の頭にチョップを繰り出した。
「……っうぅ…何しやがんだ?! 茶十河!! 」
「用もねぇ奴が、保健室を訪れてんじゃねーよ。其れから、お前今年三年だろ? 好いのかァ? 先生に、縦突いちゃってぇ? 」
ニヤニヤと、厭らしく笑う馬鹿教師に先輩の顔は、一気に引き攣った。
さっきまでの、強気な態度は何処へやら…。そそくさと、保健室を出ていった先輩の背中を見送ると、視線を馬鹿教師の方へと向けた。
「御礼なんて、言わないから」
「誰も、お前の貧相な身体に、御礼なんか求めてねぇーよ」
「んだとコラァ!? 知ってんのかァ私の身体を?! 凄いんだぞ!! 脱いだら! 」
「へぇ……だから? 」
「死ね! 変態教師! 」
固めた拳に渾身の力を溜めて、馬鹿教師の鳩尾に一発決め込む。
「ウッ…」と唸り声を上げ、その場にひざまずく馬鹿教師を見て満足した私は、こちらの顔が見れてないと確認すると、蚊が鳴くぐらいの小さな声で、御礼を言って保健室を飛び出した。
馬鹿か、私は…。何、あんな奴に照れてんのよ!
黒子が居なくなった保健室では、一人の男性教師の顔が、仄かに赤みを帯びていた。
「…ったく。何、一人のガキに振り回されてんだろーな、俺は…」
to be contnued・・・
後書き
これにて、黒Sideは終りです(^O^)
こーゆう三角関係というのは書いたことが無かったので…あれ?あるかな…どっちだっけ?((今、そんなメンドーな話を出すな!後にしろ!
黒子の初期設定では、赤那みたいな男前みたいな設定だったんですが、気付いたら女のドロドロとしたタイプになってました…あれ?何でだろう?((知るかっ!!
初出【2012年3月9日】




