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第3話

   

 隣近所の誰かが、俺のことを通報したのだろうか?

 そうも思ったけれど、どうやら違うらしい。

「あれ? この家の人って、年老いた女性のはず……」

 制服警官が、俺の顔を見た途端に呟いたからだ。俺のような者がいたのは予想外、という反応だった。

 三人の中で一番若いのが制服警官であり、隣のスーツ姿の男に小突かれていた。余計なことは喋るな、と怒られたようだ。

 最初に警官の制服に気を取られてしまったが、この様子では、残りの二人も警察の人間。私服の刑事たちに違いない。


「はい、ここは母の家です。私は遠方に住む息子で……」

 落ち着いて対応したつもりでも、そんな言葉が口から出てしまう。「息子」では近すぎるから、もっと縁遠い立場の方が良かっただろうに。

「ああ、息子さんでしたか。それで、お母さんの滝本さんは……?」

「母は出かけています。申し訳ありませんが、母に用事でしたら、後日改めて……」

「出かけている……? 遠くから息子さんが訪ねてきたのに……?」

 せっかくなので親子水入らずの時間を過ごすべきであり、そうするのが普通。刑事はそう思ったらしい。

 想定外の反応だったけれど、この程度ならば慌てる必要もなかった。

「私が悪かったんでしょうね。あらかじめ言っておかず、いきなり来ちゃったんですよ。だから母は私が来るとは思わず、出かけてしまったようで……。とりあえず合鍵で入って、母を待つことにしました」

「ああ、なるほど。では我々も一緒に、待たせてもらってよろしいですか?」


 この刑事は「せっかくなので親子水入らずの時間を」という考えではなかったのだろうか?

「いや、それは……。どんな用件か知りませんが、できれば日を改めて……」

 顔をしかめながら俺が口ごもると、もう一人の刑事が会話に参加してきた。

「だったら、代わりに息子さんにお願いしましょう。今日は私たち、この家のガーデニングを見せていただきたくて来たのです」

「は……? わざわざ警察が三人も、ガーデニングを見るために……?」

 息子の演技も忘れて、俺は素で聞き返してしまう。

「ええ、一応この家の人に立ち会っていただく必要もあるのでね。厳密には『この家の人』じゃないですけど、息子さんなら大丈夫でしょう」

「はあ。それくらいでしたら……」

 よくわからないが、その立ち会いとやらを早く済ませて、さっさとこの三人を追い返してしまおう。

 そう考えた俺に対して、刑事が驚きの言葉を投げかけてきた。

「実は『この家で麻薬栽培が行われている』と通報があったのです」

   

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