逝ってよし
頑張ります。
俺は今、大自然の中に立っている。
俺に寄り添う様に白っぽい身体の神獣もいる。
俺はこれからこの世界で、この神獣と生きていくのだ...
どうしてこうなったのか思い返せば...
仕事をいつもより早く切り上げた。
そんな俺は魔法少女に貢いでいる。
何も見返りは無いのに貢いでいる。
「君の願いを言ってごらん」と仰られる思わせ振りなネコに振り回されながらも必死に貢いでいる。
俺の名前は松田進士、30代後半の冴えないサラリーマン。
毎日仕事に追われ、ほぼ最低賃金で違法な労働をさせる会社で働いている。
趣味は創作料理とラノベを読む事と、魔法の研究とその他色々。
世界はこれ(俺)を厨ニ病と呼ぶ。しかも重度の厨ニ病である。
30代後半の重度厨ニ病でも人間。人間、生きる為には働かなければならない。
しかし働けば働く程に赤字は増えていく。そんな会社で働いている。
低収入で若い女っ気の無い職場、そんな所で働いていたら魔法少女に貢ぎたくもなる。所謂現実逃避である。
だから俺は仕事を切り上げパチンコ屋に急いだ。
そして5人の魔法少女に翻弄された...財布の中身を全て貢いでしまったのだ...。
絶望感に支配され俺は店を出た。
そして毎度ながらこう思う。
「もう二度と行きません!」
後悔はしていない。反省もしていない。
そんな俺は帰宅する為に車に乗り込んだ。
筈だった...
車に乗り込んだ瞬間、全身が光と浮遊感に包まれた。
運転席に座った筈なのになんで身体が浮いているんだろう?
エンジンを掛けていないのになんでこんなに回りが明るいんだろう?
そんな事を考えていると光がだんだん収まり、運転席に座っていた筈なのに真っ白な空間に立っている事に気付いた。
「そうか...過労と貧困が故の不摂生が祟ってとうとうお迎えがきたか...」
一人言を言いながらそんな事を真剣に考えていた。意外と冷静な自分に少し驚く。
そして俺は迎えを待つ事にした。
暫く待っていると...
「お待た~!急にこんな所に呼んでごめんね~!」
現れたのだ!お迎えが!
現れたのだ!神様が!しかも超フランク!
ラノベで良く見るフランクな神様が来ちまったよ!
......少し落ち着こう。
お迎えが来たのだ。しかも神様が。
本当に神様かって?間違いなく神様だと思う。
神々しい雰囲気。神を名乗る事を許された方にしか出す事の出来ない神の気を凄く感じる。肌を突き刺す様な空気でもある。
そして漆黒のローブ。テルマエ・ロ○エみたいな白ではなく、周囲の光の存在すら打ち消す様な漆黒のフードの付いたローブ。
更にローブから覗く色々な意味での骨格。美白どころではない!純白とはこの方の為にある!と断言出来る程に白い骨。
極め付けは大きな鎌!自治会の草刈りで使うコンパクトサイズではない。雑草ではなく大木ですら刈り取れる様な大きな鎌。
お迎えに現れたのは......死神だった...。
いや待てよ...今呼んでって言われたよね...。
「今、呼んでって言われました?」
意を決して俺は神様に質問をした。
「呼んだ呼んだ!いやさ、君って死神崇拝者でしょ?なんでわかるかって?だって厨ニ病を拗らせたオッサンが普通の神様を崇拝する訳ないじゃん。だから死神崇拝者じゃないかなって思って呼んだのよ。」
なんて親切な神様なんだ...聞いても無いのに思い込みだけで俺をこの世界?に呼んだ理由まで教えてくれた。
しかも凄い事に死神崇拝者だという事をピタリと当てられたのである。
なんともフランクな死神だ。
「どうせ地球で生きててもロクな人生や死に方をしないって分かってたから君には私の元へ来てもらった。厨ニ病を拗らせて不治の病へと昇華させた君ならなんとなく分かるでしょ?だから君に地球とは次元の違う厨ニ世界へ行ってもらう。その世界を救えとか、発展させろとか面倒な事は言わない。ラノベのお約束で魔力も魔法も魔物も魔王も存在する厨ニ的世界だ。勿論生存する為に必要な能力を与えたり、当面生きていけるだけの物資は用意させてもらう。」
死神は俺の存在を否定するかの様な事とこれからの説明をしてきた。
「俺...いや私はその世界で何をしたらよろしいのですか?救わなくても発展させなくてもいいのなら、私は何をすればよろしいのですか?」
俺は死神へ質問をした。だって現状要らない子だし...
「頑張って天寿を全うして。厨ニ病が厨ニ世界で生きていく...それだけで白飯何杯もいけそうじゃないwまぁ私は骨だから食べられないんだけどねww余程の事をしない限り干渉しないから常識の範疇で好きにやってwそれと、見ず知らずの世界で一人で生きていくのは大変でしょ?神獣?使い魔的なのを付けてあげるから仲良くやってねwそうそう名前を付けてあげないとすぐに消えちゃうからね!それと君が行く世界の名前はアイランドルート。文明レベルは中世くらい。君の使っていた文明の利器はオーバーテクノロジーだから持ち込みは出来ないよ。その代わりにウィンドウって能力を付与してあげるから、詳しくはウィンドウのヘルプ画面で確認して。能力や物資の内容も載ってるから。一般人レベルで生き残れるだけの身体能力もあげるから安心して逝っておいで。」
死神は質問に答えてくれた...要約すると死神の楽しみ、娯楽の為に俺はアイランドルートへ送られるらしい。しかも色々と便利な能力も付けてくれるらしい。
そして一番大事なのは「逝っておいで。」おい!字がおかしいだろう!行くじゃなくて逝く。不吉な予感しかしません!
そして俺は一応元の世界へと戻れるのかを確認しようと思い死神に話しかけた。
「あの~すいません、元の世界にも「逝ってらっさ~い」」
俺は白い光に包まれ、質問が終わる前にアイランドルートへ送り出されたのであった。
「さぁ、地球で一番穢れた厨ニ病の魂は向こうでどれだけ笑わせてくれるのかな?楽しみだ。」
死神の呟きだけが白い空間に響いていた...。
そして冒頭に戻る。
俺は大自然の中、神獣と立っている。神獣の呼吸する音が時折耳に入ってくる。「ブ~、ブッブ~。」と...。
念のために言っておく。神獣であって豚ではない。見た目は白く短い体毛に所々黒い色が混ざっている。
体長は50センチくらいで体型はポッチャリ気味である。再度言っておくが神獣であって豚ではない。
「そういえば名前を付けろと言われたな...。」
俺は死神に言われた事を思い出し、神獣の見た目とインスピレーションだけで名前を付けた。『ウメ』と...。
因みにこの神獣様、見た目は犬である。犬種で言うとウメと名付けたのがピッタリな...
...
......
.........
............
.........パグなのだ...。
俺とウメの生活が始まった。
ありがとうございます!