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第7話 正しい殺人事件の捜査方法。捜査の基本は「他力本願(?)」(1)

 ぷはっ!

 外の空気がこんなにおいしいなんて。

 ありがとう。こんなに新鮮な空気を作り出してくれる森の木々のみなさん、ありがとう。

 それから今まで感謝すらしなくてごめんよ。


 ようやく外に出て生き返った僕は、夢中で息をしていた。

 危なかった。

 まさか普通に生きていて、殺人以外で呼吸が出来ない状況が起こるなんて想像も出来なかったぞ。


「当たり前の毎日が幸せだったと思う」って誰かが言っていたことが、ようやく分かったよ。


「こら。とっとと行くぞ」


 低い係長の声が、僕の当たり前の幸せを切り裂いた。


 郊外のアパート。7階建て。

 それなりに立派な建物だった。


 所轄だろう。

 すでに何台かのパトカーがいて、現場はロープで守られている。


 一階の103号室。

 そこで女が一人、死んでいたらしい。


「ご苦労様です」


 現場の若い巡査が、僕たちに頭を下げた。

 表情が硬い。まだ入ったばかりで緊張しているのだろう。

 いかにもまじめで融通がきかなそうだ。


「うむ」


 えらそうに係長が胸を張って中に入ったので、僕もマネをしたら係長ににらまれた。

 なんで?


「なんだこれは?」


 奥で係長が首をかしげていた。


 103号室。

 ドアから入ると、すぐに長い廊下。

 その左側にキッチン。右側にユニットバスがあった。

 そして長い廊下の先には二つの洋室。

 どちらも六畳、床はフローリング。


 そのうち右の部屋には、ふかふかの厚めのじゅうたんがひかれて、その上に若い女が仰向けに倒れていた。

 首にはロープ。胸にはナイフ。

 おそらく心臓まで貫いたそのナイフの元から血が流れ、じゅうたんを真っ赤に染めている。

 首にはロープのあとがしっかり残っていた。


 ん?

 ロープで首を絞めて、ナイフで心臓を一突き。

 どちらが死因だろう?

 どちらにしても、二回も殺す必要あったのかな?


 部屋には他に小さなガラスのテーブルがあり、なぜだか鉄アレイまで転がっている。


 でも、係長が驚いていたのは左の部屋だった。

 テレビ、時計などがあるその部屋は、むき出しのフローリング。

 そのいたるところで粉々に割れた食器が散乱していたのだ。

 大小のお皿、コップ、茶碗などが無残な姿で散らばっていた。


 僕らは土足で部屋に入っているから平気だけれど、裸足なら文字通り足の踏み場もない状態だった。

 いたるところ割れた食器で、危なくて仕方ない。


読んでいただいてありがとうございます。


すこしでもいいなと思っていただけましたら、ブックマーク、高評価などしていただけますと、作者が喜びます。

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