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第5話 係長との上手なコミュニケーション方法、本気で募集中!(2)

 みなさんはただ車に乗っているだけなのに、息が出来ずに死にそうになった経験はありますか?

 作り話ではありません。

 話を盛ってもいません。

 むしろ控えめに言って、僕は車の中で危うく窒息して命を落とすところだったのです。


 きっかけはちょっとした僕の気遣いと向上心でした。


 相変わらず不機嫌な顔でハンドルを握る係長。

 もちろん話題を振ってくれることもなく、黙りこくったまま。


 重い!空気が重い!

 ニュートンはすべてのものは等しく引力を持つなんて言っていたけど、絶対ウソだ!

 係長だけがこの車内のすべての空気をひきつけて重くしてしまっているじゃないか。


 ああ苦しい。窒息しそうだ。

 でも、僕も伊達に社会人になったわけではないんだな。

 ちゃんとこういうときのために、「雑談力を磨く本」を立ち読みしておいたんだよね。


 空気を軽くするためには?

 そう、雑談。

 小粋なジョークを交えつつ、コミュニケーションが一番!


 話のネタに困ったときには、万人に通用する雑談用の話題「し・た・し・き・な・か・に」を思い出すといいんだよ。

 最初の「し」は仕事の話。これは係長も食いつきやすいはず!

 さっそく実践、実践っと。


「係長!最近仕事の調子はどうですか?」


 さわやかな笑顔と、軽やかな口調。

 これが楽しい雑談のコツだね。


「出来の悪い新人のせいで最悪なんだがどうしてくれる?」


 ギロッと僕を一睨み。

 蛇ににらまれたカエルとはまさにこのこと。


 エアコンも入れていないのに、冷たい風が二人の間を吹き抜けた。

 僕はカチコチに固まって、その場を動けなくなった。


 そういえば、その昔、目から光線を放ち、それにあたったものを石へと変えてしまう化け物がいたそうな。

 いや、その昔じゃない!ここにいるぞー!メデューサがここにいるぞ!


 危なかった。

 たっぷり3分は石のようにカチコチに固められてしまったぞ。

 あの視線の直撃を食らっていたら、本当に石にされてしまうところだった。


 いやいや、強敵だ。

 でもあきらめない。

 今回は仕事の話なんか振ったのが失敗だった。

 もっと楽しい話題にしなきゃね。


 次は「た」。旅の話。

 これなら係長も恐い顔してられないよね。


「係長、最近旅行とかしてませんか?してないなら、どこに行きたいですか?」


 完璧!

 これなら旅行していても、していなくても話がつながるぞ。


「ここ数年、休みなんて取ったことないし、これからも取るつもりもないんだが。そもそも警視庁刑事課の人間は、都民の平和を守るのが優先だ。休みだとしても遠くに旅に出るなんて論外に決まってるよな」


 ヒュゥゥゥゥゥ。

 ギャア!その冷たい視線はやめて!

 石になっちゃう。ホントに石になっちゃう。


 さすがの僕でもダメージは隠せない。

 本のウソつき。

 小粋なジョークどころか、コミュニケーションの「コ」の字すら出来ないじゃないか。


 会話のキャッチボールをしようとしたのに、致命傷になりかねない火の玉ストレートしか返ってこないぞ。

 それも必殺の急所ばかり目がけて。


読んでいただいてありがとうございます。


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