第45話 それでも警視庁には、いつもと同じように時は流れる…(2)
一方で、警視庁でも、何の気遣いもなく、僕のもとへと飛び込んできたのが1人。
「ああっ!如月係長代理!ねえねえ、どうなったの?ロミオとジュリエットの美しい物語の結末はどうなったのかなぁ?お姉さんに話してごらん。大丈夫、こう見えてもお姉さんは普段から『ハマグリのかすみさん』って呼ばれているくらい口の堅いことで有名だからね。なんでも相談してごらん」
やっぱりこの人、かすみさんだ。
ハマグリ?口が堅い?
この人は自分のキャラクター、これっぽっちも理解していないじゃないか。
だいたい「ハマグリのかすみさん」なんて聞いたことないぞ。
多分「口が堅い」という言葉の意味が、分かっていないよね。
無視、無視。
この人に関わったら、あっというまに僕の美しい純愛が、警視庁中に拡散されちゃう。
「ねえねえ。教えてよう。ああっ!教えてくれないと、あることないことでっち上げて、みんなにしゃべってしまうかも」
「今までさんざんでっち上げて、警視庁中に拡散してきたくせに。ちなみにそれ、世間では脅迫って言うらしいですよ」
「脅迫だなんていやだなあ。お姉さんは如月係長代理の心の傷を少しでも共有して、軽くしてあげようと一生懸命なだけなのに」
「だったらそっとしておいていただけるのが、一番だと思います。知っています?ケガをしたときには、無理に引っかいたり触ったりせずに、そっとおいておくのが一番いいらしいですよ」
「ダメダメ!自分1人で判断すると、致命傷なのに気づかないこともありえるからね。さあ、ちゃんとお姉さんにぜーんぶ話すのよ…。で、どうなったのかな?ああ、ここではみんなの目もあってやりにくいよね。ちょっと取調室まで行こうか」
かすみさんに取調室まで引きずられていく僕。
バキッ!ズドーン!バーン!イテッ!
どうやらみんなの目が気になってやりにくかったのは、かすみさんの方らしい。
「さあ、全部白状するのよ。事件の結末。恋の行方。大丈夫、お姉さんがなんでも親身に相談にのってあげるからね」
「イタイ!イタイ!やめて、やめてー!これ、全然相談にのる態度でも状況でもないから。どうして相談にのるのに、人の手をそんなにねじり上げる必要があるのかな」
「係長代理はシャイで、自分の気持ちを正直に言えないかもしれないからね。精神的にも肉体的にも極限状態に追い込んで、そこで洗いざらい白状する言葉こそ、信じられるのよね」
「ギャー!やめて!たすけてー!ギブアップ!ギブアップ!話す、話す!なんでもしゃべりますからー!」
3分28秒。
決まり技は腕ひしぎ十字固め。
かすみさんの鮮やかなギブアップ勝利。
僕は甘かった。
本当の取調べってこうやってやるんだね。
お話や誘導で自白させようとしていた、自分の若さが憎らしい。
人の目のない取調室で、心置きなく暴力に訴えたかすみさんは、結局僕から洗いざらいの自白を勝ち取ったのだった。
ひどい…。
ああ、早速ルンルンで駆け出していくかすみさん。
僕の美しい純愛物語が、警視庁中に広まることは確定したな。
こうしてエリート刑事(?)である僕の日常がまた始まった。
さあ、バリバリ犯人を捕まえて、偉くなるぞー!
そうしたら、てるみちゃんを早く迎えにいける制度を作ってやるんだ。
本気かって?本気だよ。
だって、もう二度と後悔はしたくないんだ。
すれ違い続けた日々。
もう二度と繰り返したくないんだ。
二人いちゃいちゃしながらいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
それが正解。
恋愛はハッピーエンドで終わるのが鉄則だからね。
終わり!終わり!
おしまい!
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
僕の中では結構好きな作品です。




