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第32話 白馬の騎士が現れてお姫様を救出!めでたく2人は恋に落ちるのって定番中の定番だよね(4)


 あれ?

 外に出てもてるみちゃんが見当たらないぞ。

 待ちくたびれて帰ってしまったかな。

 そんなはずはないと思うんだけれど。


 人通りの多い道路。

 てるみちゃんを探してキョロキョロしていたら、ようやく道の向こうに発見。


 ところが、てるみちゃんは柄の悪い男3人に囲まれていた。

 どうみても堅気には見えない大柄な男3人。

 え?

 てるみちゃんが彼らに無理やり連れ去られようとしている。


「てるみちゃーん!」


 思わず大きな声が出た。

 でも車がひっきりなしに行き交う大通りをはさんで、僕の声は届かない。


 その間にも、てるみちゃんは引きづられるように、男たちに連れ去られていく。

 すぐそばには真っ黒な大型バン。

 これは誘拐だ。

 てるみちゃんが連れ去られる。

 そう思った僕はとっさに銃を構えていた。


「てるみちゃんを放せ!」


 叫んでも僕の声は届かない。

 向こうは僕に気づいてさえいない。

 まずは気づかせて、威嚇する必要がある。

 僕は迷わずバンに向かって銃を撃っていた。


 響く銃声。

 割れるバンの窓ガラス。

 人々が悲鳴をあげて逃げ惑う。


 てるみちゃんを引きずっていた男たちが僕に気づいた。


「てるみちゃんを放せ!」


 再び叫ぶ。

 銃を構えた僕を見て、男たちは迷っているようだった。

 でもすぐに一人が銃を取り出して僕に向けた。


「もちろん銃なんて出来るだけ使わない方がいい。でも、自分が殺されるくらいなら、迷わず撃つ勇気も必要です」


 警察学校で習ったことが頭をよぎる。

 もともと迷いなんて一切ない。

 てるみちゃんを守るためなら、心一つ動かさずに悪人を撃てるぞ。


 銃声が2つ。

 ひとつは向こうから僕を撃った音で、もうひとつが僕の銃の音。


 向こうで男の一人が太ももを抑えて倒れた。

 警察学校でも射撃は得意だったもんね。


「てるみちゃんを放せ!」


 再び怒鳴りながら、僕は男たちに近づいてゆく。

 まだ男たちは迷っているようだった。

 それでも男たちはやがててるみちゃんをその場に放って逃げ出した。

 負傷した男を助け起こし、バンに乗って去っていった。


 街が静けさを取り戻す。

 道路には僕とてるみちゃんが取り残された。


「こわかった、紫音!」


 てるみちゃんが僕に抱きついて、泣いていた。


 これこれ。

 これこそ刑事の醍醐味だよね。

 ドンドンバーンって派手に悪人と対決して、ヒロインを助け出す。

 これこそ本物の刑事だ。事件だ。

 ドラマ「イケイケ刑事」はやっぱり正しかった。


 僕の胸で泣き崩れるてるみちゃん。

 あれ?

 これってリアルに「白馬の騎士作戦」成功じゃない?

 こうして赤ずきんちゃんは助けてもらった白馬の騎士に身も心も奪われてしまいました。

 めでたしめでたしと。

 悪人さん、ありがとう。


 さあ、この後はどうすればいいんだっけ?

 思い出せ。「イケイケ刑事」ではかっこいい刑事がどうやっておいしい思いをしていたかを思い出すんだ。

 潤んだ瞳で見つめるヒロイン。

 その髪をそっとかきあげて、刑事は静かに唇を重ねる…と。


 目の前に潤んだ瞳の僕のヒロイン、てるみちゃんがいた。

 視線が合う。

 泣き顔さえも美しすぎて、まっすぐに見つめ返すだけで心臓が高鳴った。

 だめだ…。破壊力ありすぎ。

 こんなの心臓が破裂してしまうぞ。


 てるみちゃんは潤んだ瞳でまっすぐに僕を見ていた。

 それ今だ!今しかないぞ!

 オオカミになるのは今だ!

 頭の中の天使(悪魔?)のささやき。


 そう、今が最大のチャンス!

 目をそらしてしまいそうになる衝動を押さえつけて、まっすぐに視線を見つめ返す。

 それから、てるみちゃんの髪をそっとかきあげた。

 てるみちゃんも見つめ返してくれて、それからうっすら瞳を閉じた。

 音をなくした2人だけの静かな世界。

 ドキドキ!

 自分の心臓の鼓動さえ大音量で聞こえる気がした。


 僕がようやく覚悟を決めて、ゆっくりとてるみちゃんを抱き寄せる。

 そして唇を重ねようとしたそのとき…


「お前だな!女の子から離れろ!女の子が襲われているという通報があったんだ」


 ロマンチックな2人だけの世界に、急に怒鳴り声が飛び込んできた。

 制服を着た警官。

 それも1人じゃない。

 何人もの刑事が猛然と僕に飛びかかってきたのだ。


「離れろ!その女の子から離れろ!誘拐犯、変態、変質者!」


「ちがーう!違うんだ。僕は女の子を助けた刑事で、ようやくこれからオオカミになって…」


 最後まで言う前に僕は果敢なタックルの連続に転がされ、四方八方から、いやというほど警棒で殴られていた。


「イタッ!イタイ、イタイ!ちがーう!違うんだ。誤解だ。僕はてるみちゃんを助けた白馬の騎士で、ようやくキスまでたどり着こうと…」


「なに?無理やりキスまでするつもりだったんだな。犯罪者、恥知らず…」


 ちがーう!よけいに誤解を生んでしまった…。


 さらに警官たちの包囲網は激しくなって、ボコボコにされる僕。

 薄れゆく記憶のなかで、僕は心配そうに僕を見ながら警官に引っ張っていかれるてるみちゃんを見たような気がした。


 ちがーう!「イケイケ刑事」の展開と全然ちがーう!

 どうしてこうなった???


 ……




 教訓:白馬の騎士作戦はバーチャルでは効果がありません。ぜひ本物の悪人を使って実行しましょう。


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