第24話 事件解決?!いやだね、そんなことしたら、てるみちゃんとあーんなことやこんなこと…(以下略)…(5)
どうしても罪を認めない矢崎のために、僕はちゃんと言い逃れのできない証拠を用意していたんだね。
「ところで1年ほど前。あなたは近くのアウトドアグッズのお店でナイフとロープを購入していますね」
「え?」
急に鳩が豆鉄砲食らった顔になったぞ。
「ええ、去年の12月です。あなたは今回の事件で使われていたのとまったく同じ型のナイフを購入。そのとき一緒にロープも買っています」
矢崎のクレジットカードの履歴から判明した証拠。
これこそ動かぬ証拠というやつだ。
「どうしたんですか?何か言ったらどうですか?」
「……。知らない。覚えてない」
ん?ここは殴って記憶をよみがえらせるお手伝いをしてあげる場面かな。
一瞬、手が出かかったけど、ぐっとこらえて、クレジットカードの明細を見せる。
「ほら、ここにあなたが自分のカードでナイフとロープを買った記録があります。どうです?思い出しましたよね。忘れたなら、思い出させてあげましょうか?」
机の下で拳を握り締める僕。
でも、意外にあっさり矢崎は答えた。
「ああ、買ったよ。登山か何かのときに使えるかもしれないと思ったんだよ」
「なるほど。あなたは今回の事件で使われたのとまったく同じタイプのナイフとロープを買った」
「その言い方は悪意があるぞ。いや、最初から最後までずっと悪意しか感じないけど。でも、俺は殺してない!」
「はいはい。では、半年前。あなたはやはり近所のスポーツ用品店で、鉄アレイを購入していますね。これはどうです?」
「……。ああ、買った」
「なるほど、事件で使われたのとまったく同じ型の鉄アレイも買った」
「それでも俺は殺したりしていないんだ。なあ、信じてくれ!」
だんだん哀願するような口調になってきたぞ。
それなら素直に自白してくれたほうが、情状酌量の余地あり。
僕も早く事件が片付いてみんなハッピーなんだけれどな。
「うーん。ここまで往生際が悪いと、見苦しいだけかなあ。素直に『私がやりました』がベストな解答」
「それでも俺はやってない!信じてくれ!」
「それなら、買ったナイフ、ロープ、鉄アレイはどこにあります?」
「……。なくした(小声)」
「え?声が小さくて聞こえない」
「なくした…」
「全部なくした?あなたは偶然、事件に使われたものとまったく同じナイフ、ロープ。鉄アレイを買った。で、全部なくしたと。そうしたら、偶然同じナイフとロープと鉄アレイを使った事件が起きたと。しかもあなたのまわりで。いや、すごい偶然だなあ、ははは…」
「本当。いや、偶然ってあるものですね。ははは…」
むなしい愛想笑いが殺風景な部屋に響く。
シュールな光景だ。
「ふざけるな!そんな奇跡みたいな偶然があるか!お前がみさきを殺したんだ!誰が考えてもそうなるだろ!」
さすがの僕も、ここでもう一度恐い刑事に変身。
机をバーンとたたいて、自白を迫る。
「違う!俺は殺していない!信じてくれ!」
あくまでも矢崎は殺していないと言い張った。
「だったら、事件の日の午前1時ごろ、お前はどこにいたんだ?」
アリバイというやつだね。
もちろん、矢崎にアリバイなんてあるはずがない。
「その時間はある人と新宿の焼肉屋さんにいた」
え?それが本当なら、アリバイ成立するぞ。
「本当か?一緒にいた相手は誰だ?」
「それは言えない」
なんだ?
焼肉屋にいたというアリバイがあるけど、誰と一緒にいたのかは言えない?
「それじゃあ、アリバイにならないだろう。一緒にいた相手の証言があって、初めてアリバイ成立、そしてお前の無実が証明されるんだぞ」
「相手に迷惑をかけるわけにはいかないので、それは言えない」
「自分の立場が分かってるのか?殺人事件の犯人になるところなんだよ。それなのに、一緒にいた人物を言えないと」
「……」
ダメだ。お話にならない。
犯人確定!
結局、僕がどれだけムチとムチと少しだけのアメを使ってみても、矢崎は自分は殺していないと頑固に言い張るのだった。
アリバイの証人についても口を閉ざしたまま。
まあ、これだけ証拠があれば、このまま裁判に持ち込んでも有罪確定!
別に自白しなくてもかまわないんだけれど。
でも、「私がやりました」と泣き崩れる犯人。
満足げにその肩をたたいてキメ台詞ひとつ放つ僕。今日も東京の平和は守られたのだ…のイメージトレーニングバッチリだったのに、ちょっと不満が残るな。
まあいいや。じゃあこのまま矢崎を逮捕して、送検、送検。
これで事件は解決!
早くてるみちゃんのところに行って、事情聴取の続きだ。
あれ?
何か大事なことを忘れている気がするぞ。なんだろう?
しまった!てるみちゃんだ。
事件がめでたく解決してしまったら、てるみちゃんとの楽しい事情聴取の日々が終わってしまうじゃないか。
捜査のためと言い張って、毎日てるみちゃんのところに行くつもりだったのに。
てるみちゃんとの楽しい日々が終わる。
そんなことは許されない。
僕たちの愛は絶対なのだ。
誰にも邪魔できないのだ。
どうしよう?
よーく考えよう。
よく考えたら、ここにいる矢崎は無実に思えてきたよね。
これだけ取り調べても「殺していない」と言い張るのだから、きっと無罪だ。冤罪だ。
よし、僕が彼の無実を証明してやるぞ。
これで事件はまだ終わっていないな。
真犯人を見つけるまで、いつまでも事件は続くのだ。
これでてるみちゃんとの事情聴取の日々は続いて2人はハッピー!
真犯人が見つかってめでたく無実が判明するかもしれない矢崎もハッピー!
これこそウィンーウィンの関係というやつだね。
「なあ矢崎。お前がそこまで言うのなら、本当に無実なんだろう。僕の刑事のカンがそう告げてるんだよ」
「恐い!恐い!どうして急にものわかりよくなった?」
「僕だって冤罪は作りたくない。そうだな、警察は公平に真実を見つけるところだ。正義っていうやつが僕を導くんだ」
「絶対ウソだ!さっきまで正義とは程遠い取調べをやっていたくせに!」
「うるさい!せっかく人が捜査を続ける気になっているのに。それともお前を犯人として死刑台まで最速で送り込んだほうがいいの?」
「そんなことありません。俺は殺していない。無実です」
「だったら、お願いします。真犯人を探してくださいと頭を下げる一択だろう?」
「……。お願いします。真犯人を探してください」
「心がこもっていないな。やっぱり君が犯人で決定しようかな」
「心からお願いします。真犯人を探してください!」
こうして捜査は継続されることとなった。
冤罪なんて許されない。
僕の正義感がそうさせたのだ。
そうと決まれば矢崎はとりあえず釈放。
もう一度事件を検証するために、さっそく事情聴取だ。
てるみちゃん。待っててね。
今すぐ飛んでいくからね。
でも、残念ながらすぐに事情聴取とはいかなかった。
さすがに矢崎の供述調書を作って、係長には見せておかなければならない。
どうしようかな?
まあ、なんとかなるよね。
係長、会議でいないといいな。
いや、いっそのこと交通事故かなにかで入院していたりしないかな?
まだまだ読み続けて、ここまでついてきてくださった方、ありがとうございます。




