第20話 事件解決?!いやだね、そんなことしたら、てるみちゃんとあーんなことやこんなこと…(以下略)…(1)
ただ今午前7時59分。
僕は警視庁の自分の机に座っていた。
時間を間違えているわけじゃないよ。
本当にチャイムの鳴る1時間前。
僕はちゃんと到着していた。
毎日毎日ギリギリの時間に走りこんでくるとか思われるのは心外だよ。
僕だってたまには「殊勝な心がけ」とかいうやつを見せるんだからね。
ホントは眠れなくて、ほとんど徹夜に近い状態。
もう寝たら絶対起きれないってなってしまったから仕方なく職場にやってきただけだというのはナイショ。
あれからずっとてるみちゃんの顔が頭にちらついていて、離れない。
なぜだか胸がずっと痛い。
これは病気か?ぐわぁ…。
机にうつ伏していると、係長到着。
なにか物珍しいものを見るような目で僕をチラッと見て席に着いた。
僕はパンダかなにかか?
昨日の別れ際のてるみちゃんの微笑み。
かわいいかった。
ああ、何も考えられない。胸が痛いよー。
うわのそらのまま立ち上がった僕。そのときのことは正直、よく覚えていない。
たぶん、「殊勝な心がけ」というやつをみせようとしたんだろう。
気づいたら、なみなみと熱湯を注いだきゅうすと警棒、雑巾を持って係長の前に立っていた。
なぜに警棒と雑巾?
きっと「お茶」を入れようとして、その最中に係長→嫌い→死ねとか考えてしまったんじゃないかな。
僕はうわのそらのまま、きゅうすのお茶を係長の頭からザーッ!
「アチッ!あついっ!」
その場で飛び上がる係長。
え?僕は何をしているんだ?
「違うんです、係長!昨日から僕はおかしくて…。ぼーっとしていたらなぜだかこんなことを…。そうだ、きっと病気です。だからついつい嫌いな係長に頭から熱湯を浴びせるなんてマネを…」
「ほう、そんなに俺のことが嫌いか。しかも自分から警棒を差し出して、いい覚悟だ」
僕の警棒を取り上げた係長。
瞳の奥が残虐に光った。
ギャー!助けて!
こうして世にもまれなる虐殺劇は朝っぱらの警視庁で引き起こされたのだった。
「痛い。死ぬ、死んじゃう」
誰だよ、早起きは三文の得とか言い始めたやつは。
三文の得どころか、まっすぐ歩けなくなるほどの大ケガを負ってしまったじゃないか。
頭も腕も足も痛い…。
おかげで胸の痛みはちょっと薄らいだぞ。
うれしくないー。
それでも頭の中のてるみちゃんの笑顔は消えない。
はあ。
「おはようございます…わあっ!珍しい」
次にやってきたのは高橋かすみさん。
リアクションは違えど、やはり僕がパンダ扱いなのは変わらない。
「何が珍しいのかな。エリート刑事が一番に来て、事件をバシバシ片付ける。刑事ドラマなんかでは王道だろう」
自分で『エリート刑事』って言ってしまったよ。
さすがにちょっと恥ずかしい。
はあ…。
またため息で机に突っ伏していると、かすみさんがやってきた。
「どうしたんですか?オーラが暗いですよ」
「いや。いろいろと考えることがあるのさ」
「いつもいつも能天気で、悩み事ひとつ抱えていなさそうなところが係長代理のいいところなのに。何があったんですか?」
微妙にけなされているような気がするのは、気のせいかな?
まあいいや。
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