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第19話 僕だけの女神、みつけた!運命の赤い糸を上手に手繰り寄せる方法(5)

 終電前のプラットホーム。

 人のいない駅までの夜道をポツリ、ポツリと話しながら歩いた。


 何を話したかまったく覚えていないのは、てるみちゃんが僕の腕をつかんでたせいでその感触ばかり気になっていたこととは何の関係もないからね。


「でも、紫音にまた会えて、本当にうれしかったんだよ」


 てるみちゃんは昔と比べて、確実に積極的になっていた。

 あの頃の引っ込み思案で地味なてるみちゃんはどこへ?


 一方、社会の荒波に心を削られた僕は…。


 今回はどんな壷を買わされるんだろう?

 それとも絵画かな?

 安く済むといいな(なぜ買うこと前提?)。

 どこかでアラーム鳴りっぱなしだ。

 ああ、社会の荒波は人の心も削り取っていくんだね。


「ありがとう。また、会えるかな」

「会える、会える!明日も明後日も、なんなら365日。毎日でも捜査に来るからね」


 飛びつくような僕の返事に、てるみちゃんが笑った。


「笑うところじゃないよ。本当に毎日来るからね」

「じゃあ、毎日待ってる」


 少し沈黙が続いて。

 それから遠くで踏切の音が鳴っていて。


「ありがとう、紫音。好きだった…大好きだった。ううん、大好き」


 てるみちゃんの声は、はっきり聞こえた。

 はにかんだ表情。横から街灯の当たった彼女の美しい顔。


 ガオー!

 また僕の中のオオカミが顔を出して、僕の頭で天使と悪魔が会議を始める。


天使:ほら、好きだってよ。お前もちゃんと言わなきゃ。

悪魔:こんなチャンスなかなかないぞ!ほら、イケイケ!


(選択肢)

①僕も好き!大好きだー!

②僕も好き!大好きだー!

③僕も好き!大好きだー!


 天使と悪魔もバトルすることなく満場一致。

 そりゃそうだよね。

 でもこれって選択肢の概念おかしくなってない?


 僕もてるみちゃんの目を見つめ返した。

 もう迷う必要ない。

 難しい言葉より直球が一番だね。


「てるみちゃん。僕もす…す…」


 あれ?言葉が出てこない?

 どうしたんだろう?

 胸が痛い。


 二人を引き離す電車がやって来る。

 ああ、どうしよう?


「てるみちゃん。僕もす…す…」


 だめだ!

 なぜだか胸がしめつけられて、これ以上言葉が出てこない。


 てるみちゃんが電車に乗る。


「僕もす…す…。またすぐに会いに行くからね!」


 彼女が一瞬寂しそうな顔をしたように見えた。

 でもその表情を吹き飛ばして、すぐに笑顔で手を振ってくれた。

 僕も手を振り返した。


 電車が遠ざかっていく。

 僕の胸はどんどん苦しくなる。

 なんだこれは?


 電車が見えなくなってからもしばらく、僕はその場に胸を押さえて立ちつくしていた。

 

 ……


 

 教訓:恋愛で大事なのはオオカミになる勇気です。よし、僕も明日からステーキばかり食べて立派な肉食系オオカミになるぞ!ガオー!




読んでいただいてありがとうございます。


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