第15話 僕だけの女神、みつけた!運命の赤い糸を上手に手繰り寄せる方法(1)
プハー!
やっぱり外の空気はおいしいな。
警視庁、あそこはダメだ。
空気がよどんでいる。
色で言うなら限りなく黒に近いグレー!
どうりで最近、捜査の透明性向上がいたるところで叫ばれるわけだね。
ということで、僕は外にて一人で捜査中。
僕の中で犯人確定した矢崎の裏付け捜査だ。
別に係長から逃げ回るために外に出てきたわけじゃないからね。
言おうとしたのに、偶然係長に出くわさなかっただけだからね。
ということで、警察特権を利用していくつかの店にて二、三軒聞き込み。
そのあとで矢崎がオーナーになっているという飲食店に来ていた。
もちろん、矢崎が犯人である証拠を集めるためだ。
「いらしゃいませ…。あっ」
そこにいたのは安藤直人。
取調べで泣いて土下座した気の弱すぎる容疑者第1号だね。
「どうして君がここに?」
「どうしてって。僕のバイト先ですよ。僕もみさきさんもここでバイトしていたんです」
なるほど。
殺された瀬戸みさきも矢崎の店でバイトしていたのか。
「ちょうどいいや。この店のオーナーである矢崎がみさきを殺したストーリーが出来上がっているんだけど、証拠と証言が欲しい。矢崎がみさきさんを殺した動機はなんだろう?」
「そんなこと、僕に聞かないでくださいよ。その前にオーナーがみさきさんを殺したって本当ですか?」
「うん。本人は否定しているけどね」
「だったら、なんでオーナーが殺したって分かるんですか?ものすごい先入観で捜査してませんか?」
「うるさい。矢崎が犯人なのはもう決定なの。それとも君が犯人になるかね。どうしても犯人志願したいのなら、僕も仕方がないから協力するよ」
「やめて、やめて!僕は殺してませんから」
「だったら素直に捜査に協力しようね。まずは矢崎と瀬戸みさきの関係は?」
「知りませんよ」
「まだ君は自分の立場が分かって分かっていないみたいだね。矢崎が犯人じゃないとなれば、もうあとは君以外に犯人はいなくなってしまうんだけれどな。君が犯人?」
「違います、違います!やめてください」
「だったら、矢崎が犯人のはずだよね。さあ、どうして矢崎はみさきを殺したんだろう?」
「どうしてって言われても…」
考え込んでしまう安藤。
だめだなあ。
これぐらいの証言スラスラと作り出して欲しいものだ。
仕方ない、ヒントをあげよう。
「例えば、矢崎はみさきのことが好きだった。オーナーの特権を利用して、みさきを自分の思い通りにしようとしたとしたら…。さあ、どうなるかな?」
全部を言わないで、安藤に考えさせるところがカギだね。
あくまで証人が自分で思ったことを証言してほしいのだから。
「それはないと思います。僕から見ていて、どちらかといえばみさきさんのほうからオーナーに近づいていたように見えましたから…イタイ!」
空気の読めない奴だ。
今欲しいのは矢崎がみさきを殺した理由!
ちょっとイライラしてスキップしたら、偶然ヒザが安藤のみぞおちに当たってしまった。
テヘペロ!(誰だ、膝蹴り(スキップ)とか言っているのは。ちょっとテンションあがってスキップしたくなっただけだい)
でも、矢崎もみさきがストーカーだったとか、たわごとをほざいていたな。
「だったら百歩譲ってそれでもいいぞ。それで矢崎がみさきを殺した理由は?」
「そんなこと知りませんよ…。いえ、愛情関係のもつれ…でいいですか?」
もう一度スキップしようとしたら、ようやく安藤も考え直して協力的になってくれたようだ。
まだ僕の顔色を伺いながら話しているのが気に入らないけれど。
「どうして関係がもつれたんだろう?」
「それはオーナーには他に気になる人ができたからじゃないですか?ほら、うわさをしていたらその張本人だ」
安藤の視線の先、店の奥からかわいい女の子が店の制服を着て一人出てきた。
その姿を見た瞬間、僕の頭の先からつま先まで、一気に電撃が走った。
比喩じゃない。
いや、比喩だけど比喩じゃない。
まるで雷に打たれたように、本当に僕の頭は真っ白になったのだ。
天使だ。本物の天使がいた。
いや、この表現はどこかで使ったような気がするな。そんなありふれたものじゃない!
この世のものとは思えないかわいらしさ。素敵な笑顔。
そう!十億光年に一人。
全宇宙にたった一人の奇跡の女神だ。
宇宙をやさしく見守っている伝説の女神、銀河の美の象徴、フェリシアだ(この世のものとは思えないかわいらしさと美しさを表現するために、今僕が勝手に作った言葉だからね。ウィキで調べても出てこないよ)。
読んでいただいてありがとうございます。
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