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優しい瞳
その瞳は
刃のような言葉をも
水に溶かしてしまう
疲れ切った夜に
私が息を潜めても
何も尋ねず ただ
光のない空を映してくれる
やわらかな黒
深く沈んでも 底は見えず
そこには裁きも慰めもなく
ただ受け入れるという形の
残酷な優しさがあった
その奥に
私の知らない痛みが潜んでいるのを
知っていながら
触れることができなかった
触れた途端 その瞳が
優しさをやめてしまいそうで
もし世界が
あなたの瞳と同じ色をしていたなら
きっと私は
まだ生き延びていただろう
それでも今夜
夢の中であなたが振り返るとき
その瞳が私を映さなければ
私はもう
目を開ける理由を失うだろう




