ただまっすぐ
成長と共に人はまっすぐではいられなくなる。
プラスの感情ばかりが強いとは限らないと知ることになる。
1人になるのはすごく久しぶりだ。
電車の窓に頭を預けて、ふと思う。
この気持ちとともに遠くへ、遠くへと運ばれていく。
双子の妹の歩弓には、結局言えないまま家を出て来てしまった。
そのうち怒りの電話がかかってくるだろう。
大好きな兄は私がバレーをやめておばあちゃんと暮らすこと、とめてはくれなかった。
とめて欲しかったのかは私自身よくわからない。
お兄ちゃんがしたことはすべて正しいのだと思う。
2年しか住むことのなかった東京に別れを告げ、またこうして見慣れた町に帰ってきてしまった。
バレーをやめたからといって引っ越す必要は無いんじゃないかとお兄ちゃんには言われたが、バレーをやめた私はきっと家族の士気を下げてしまう。
そう思い、逃げるように飛び出してきた。
私はこの春から高校生になる。
バレー選手だった父の影響で、と言っても日本代表などではなく有名だった訳では無いが。
2つ年上の兄、明日馬が小学3年生になってバレーを始めた。それを追いかけるように、私と歩弓はバレーを始めた。
兄の真似で始めたバレーはいつしか私の人生の中心になって、家族のつながりになっていった。
小学生のうちはクラブも男女一緒で、お兄ちゃんと歩弓と、それからお兄ちゃんと同じ年の進介と、進介の妹で一個上の空と…もう毎日が楽しくて楽しくて。
中学に上がった兄はセッターに転向した。
それから兄はどんどん高く飛んでいった。
天才と呼ばれた兄は無名の学校を全国へ連れていった。もちろん、エースは進介だった。
私はただ、ただ、まっすぐに兄を追いかけていた。