6話 お嬢様
「と、取れましたわ~」
「あ、当たりましたわ」
「あの人はずいぶんおっとりした人だな」
「盛田弥生先輩だね。私生活も野球もとても大らかなライトの先輩だよ」
飛鳥の説明とおりかなり大らか。身長は京里には負けいてるが、それでも165近くあり、それ以上に胸部が半端ではなく大きい。バッティングは大振りで胸が揺れる。走るのもそのせいで得意でないようで揺れて、守備練習も揺れる。
「あなたは? 男の子?」
「あ、はい。マネージャーで仮入部の野津友人です。はじめまして」
「うふふ? ここにもマネージャーができたらうれしいわ。私は盛田弥生。ぜひ弥生と呼んでくださいませ」
話し方は上品でとてもおっとりしている。守備練習もマイペースで動き、バッティングもかなりのフリースインガーで、なかなかバットに当たらない。
ゴキン。
「あら~」
たまに当たっても生粋や京里のように素人目に見ても完璧に捉えていないのがよく分かる。
「ホームラン!」
「やりましたわ」
「……なぁ飛鳥」
「何かな?」
「俺さ、野球そんなに詳しくないけど、さっきの弥生先輩のバッティングは明らかにうまく打てて無かったよな」
「うん、そうだね。バットの根っこに当たって鈍い音がしたね」
「それで、ボールはふらっと上がって、ライトの方向に飛んでったな」
「うん」
「でもそれそのままホームランになってんだけど。あれおかしくないか。物理法則とか無視してんだよ」
「あれが弥生先輩の魅力だからね。みんなの中で1番パワーがあるんだよ。お嬢様みたいな顔とゆるふわ銀髪ロングヘアーなのに、力はすごくあるんだよ」
きっといろいろな意味で怒らせたら大変なことになると友人は思って、ヒヤッとしてしまった。
「驚かれましたよね……?」
弥生は俯きがちに友人に尋ねる。
「いえいえ、野球をやられる上は必要でしょう。素敵だと思います」
「…………」
「弥生先輩?」
ぽーっと顔を見つめられて、友人は首をかしげる。
「いいえ、なんでもありませんわ。私、とある事情で男性の方にすごく興味がありますの。もしマネージャーになっていただいて、あなたのことをもっともっと知りたいですわ」
「へ? あ、はいよろしくお願いします」
弥生と友人は握手をした。
「弥生先輩は中学校までずっとお嬢様学校に通ってたから、男の子の友人がほとんどいないらしいんだ。うゆーじん君が仲良くしてくれると嬉しいな」
【盛田弥生に出会った】
盛田弥生
日比野高校2年生。打順は5番でポジションはライト。
当たれば飛ぶパワーヒッターで、基本的にプレーは大味。
女子野球部のメンバーの中で1番スタイルが良い。