4話 大きな人
ガキン!
「おー、すげぇ」
フリーバッティングを行っているメンバーは皆うまいことミートしているのだが、1人ひときわ快音を飛ばす女子がいた。
長いピンク色のストレートヘアーをなびかせ、飛距離を出していた。
「3番サードの牟田京里ちゃんだよ。生粋先輩が目をつけたパワーヒッターなんだ」
友人がメンバーに挨拶に行くときは、毎回飛鳥が付き添っている。別に友人はコミュ症ではないが、やはり女子だらけのメンバーにいきない男子が行くのは警戒されやすいので、飛鳥の付き添いは必要ではある。
「どうしてあなたがここに?」
友人に気づき練習をやめて目を合わせる。
「今仮入部させてもらってる野津友人と申します。先輩のバッティングすごいですね。あと大きいですね」
バコッ!
「痛っ!? え、なんでです」
いきなり殴られ(しかもグー)、友人は頭を抱えて首をかしげる。
「ゆーじん君失礼だよ。京里ちゃんは1年生で同い年だし、もっと言えばクラスメイトだよ」
「え?」
「しかも、大きいこと気にしてるんだよ。ゆーじん君3つくらい失礼してるよ」
「そ、そうか。すいません、デリカシーの無いことを言ってしまって」
友人は頭を下げる。冷静に考えれば、飛鳥は先輩をつけで呼んでいなかったし、女子に大きいは確かに失礼ではある。
失礼はクラスメイトなのに知らないという1つだけでよかったはずなのである。3つ失礼をしてしまったので平謝りするしかなかった。
「ううん、別に気にしてない……、気にしてないんだから……。やたらホームランが出て男子から怖がられても気にしてない……」
ものすごく気にしてる顔で気にしてないと言われては何の説得力もない。
「そ、そんなことないですよ。身長はありますけど、細身でスレンダーで見た目も可愛らしいんですから、気にしないでくださいよ」
なので、精いっぱいのフォローをした。この後野球部に関わるにしろ、関わらないにしろ、クラスメイトと気まずくなるのはさすがに問題があるからである。
身長は170を余裕で越えていて、友人とも変わらないが確かにスラッとはしているので嘘ではない。
「……、そ、そうかな? 友人くん、同級生なんだから、敬語は使わなくていいよ。私のことも京里でいいから」
「え? いいんで、いいのか?」
「ええ、牟田って苗字はあまり可愛くないから……。じゃあ練習に戻るから」
そして京里は練習に戻っていった。
【牟田京里と出会った】
牟田京里
日比野高校1年生。打順は3番でポジションはサード。右投左打。
パワーとアベレージを備える天才打者。
女子野球部のメンバーの中で1番たくさんご飯を食べる。